【麦のお題】「王道」「家族」「ノートパソコン」
タイトル:家族は王道のノートパソコンを買う。
・・・タイトルだけでお題を消化するのは反則です。
そんなわけで、タイトルとは全く関係ない本編をどうぞ。
その日、ノートパソコンを買おうと思った。
何せこのご時勢だ。情報化社会の「化」の字もとっくに消えうせた昨今に、パソコンの無い家なんて未だに黒電話を使っているような田舎だけじゃないだろうか・・・?
・・・失礼。俺もまだパソコンを持っていないのだった・・・。
とはいえ、新品を買うようなお金は無い。
しかたなく、高架下にある中古PCの店に行く。
「最近のパソコンはいろんな形があるなぁ・・・」
パソコンが一気に進化してから、もう十年近く経ったのだ。型もサイズも、性別や種族も色々である。
髪の長いパソコン、短いパソコン。エルフみたいな耳のパソコンや、イヌミミのパソコンまである。
体系や身長も色々だ。俺よりも背の高いものから、100㎝にも満たないモバイルPC・・・とにかく何でもある店だ。
店頭に飾られているパソコンたちを眺めて、俺はいいのが無いかなと吟味する。
その中で、見覚えがあるのを発見した。
「うわ・・・リセーナシリーズX-17a・・・・」
このタイプのパソコンが一般に浸透したとき、一番最初に発売されたパソコンが、このリセーナシリーズだ。いうなれば、現代パソコンの王道機種である・・・が、いってしまえば旧型のマイナーチェンジである。X-17aはリセーナシリーズの中でも唯一のノートタイプで、軽くて持ち運びに便利だが、頭も軽いのが難点だと聞いたことがある。
つまり、値段はお手ごろだが、性能もその程度のヤツだ。規制前の製品なのか頬のラインも無く、見た目は人間とまるで相違ない。
・・・余裕で買える値段だ。そりゃあそうだろう。六年以上前のマシンだ。
ふと、隣にあるパソコンに目が行く。
「ヤクモシリーズもいいなぁ・・・」
リセーナとは打って変わっての最新機種。国内のメーカーが作ったものなので、デザインも和風で美しい。しかし、値段も高く、どうにも手が出ない。
「・・・ローンで、ヤクモか・・・一括でリセーナか・・・・」
非常に悩む。
だが、そこは貧乏学生の性。
結局安さに惹かれてリセーナを購入。
それが、俺のパソコンユーザー人生の始まりだった・・・。
+ + +
「あー・・・・お前、USBはどこに差すんだ?」
「USBってなんですか?」
「・・・取説だと、口にくわえさせる・・・ってあるな」
「えー。やだなぁ。不衛生で」
「機械が衛生面を心配するなっ」
+ + +
パソコンとの共同生活は、困難を極めた。
+ + +
「こんなに配線ばっかり差したらダメですってば」
「うるさいなぁ・・・ディスプレイとキーボードだけだぞ?」
「線が絡まって私がえらいことになってます」
「・・・どう動いたら亀甲縛りになるんだよ!?」
+ + +
なにせ、型落ちの旧式。しかも特別頭も悪いしどんくさい。自分で充電も出来ないしディスプレイもキーボードも、マウスに至るまで、全部有線接続だ。
道でヤクモシリーズとすれ違うと、なんか恥ずかしい気分になる。
それでも、パソコンを買い換えようとは一度も思わなかった。
そうこうして、気づけばもう三年も、コイツと一緒にいるのである。
+ + +
「そういえば、ヤクモシリーズがお安くなるって聞きましたよ?」
「そうなのか?」
「・・・買い換えます?」
「・・・・いや、まだいいかな」
「そんなこと、もう三年も言ってますね」
「もうそんなになったか?」
「・・・私を捨てないでくれて、ありがとうございます」
「まあ、家族みたいなもんだからな」
+ + +
とりあえず、これからも彼女との生活が続くのだろう。
まだまだ、コイツとの縁は切れそうにないな。
ウチがかつて書いてた小説のスピンオフな世界観で書いてみた。ロボット型のパソコンが一般に浸透している世界です。
まあ、「ちょびっつ」みたいな世界だと思えばいいよ。
インパクトが大事だと思ってこんな展開にした割には、話が伸びない感じだね。
短編じゃなかったら、もう少しマシになるかもしれない。
やっぱスランプなのかもしれないなぁ・・・。
では、これからも精進しますぜ。