窓
3丁目の角に赤い屋根の家がある
その西側の2階にある窓はもう10年は開いていない
10年前に窓としての役割を終えてしまった…
10年前、その部屋に住む彼は受験勉強で家にこもり
一日の殆どを部屋で過ごした
その日も変わらず机に向かい、同じ事をいつも通りにしていただけ。
他には何もない。
ただ、睨み付けるように教科書を見ているだけ。
風の僅かな音でさえ雑音に感じながら
ただ一日が流れた…
どのぐらい時間が経っただろうか
小学生の下校の群れが見え始めた頃、不意に窓を開けた
開けると同時に目が合った
ただ、気がつくまでに多の時間がかかった
他の誰でもない、確実に自分を見ている
声も出さず、瞬きさえしていないように見えた
まるで電信柱のように、地面に固定されているかのように動かない
ただジッとこちらを見ている
よく見ると、もう1人見えた
並ぶように立っているこの人の手はガッチリと相手を掴んでいる
気がついてからは2つの視線が襲ってきた
鋭い尖ったような冷たい目とただ一点だけを見つめた何ともいえない目
視線に耐えられなくなった彼は窓を閉めた。
窓が完全に閉まる寸前、1センチ程度の隙間から最後に見た目から
涙が流れるのを見ながら、窓はピシャッと音を立てて閉まった…
翌日、いつも見ているニュースが流れ出した頃に目が覚めた。
昨日と変わらず晴天で、何も変わらなかった。
下に行くと外が騒がしい
両親も着替えもせずに、玄関先に立っている
「どうしたの?」と迷わず聞くと
物陰から警官が出てきて尋ねる
「昨日、何か聞こえませんでしたか?」
「いえ、何も…」
即答した。
風の音が聞こえました。とは流石に言えない。
「昨日、すぐ先の路上で人が殺されましてね…」
すぐに体が反応したのが自分でも分かる
何も情報を聞いていない
もしかしたら他人かもしれない
そういう可能性もありえるのに、頭の中には既に画像としてよみがえってきた
「犯人は捕まえましたが、どうもこの家の前を通ったらしいのですよ。
供述によると、おそらく午後3…」
彼は逃げるように部屋に走った彼は
窓枠をガムテープで貼り、カーテンを閉めた
窓が窓でなくなり、壁となった日である




