怪奇事変 ゴミ箱
いい加減…ネタ切れの予兆が。
第二十七怪 ゴミ箱
ある地区で起きている事件、カラスが飛び交うここでは1つの問題を抱えていた。
「またか」
そこで老人はため息をつく、群がっているのはゴミ出しの場所で、ゴミ袋ではなく弁当容器なのだ。
既に防犯カメラの設置はしてあり、誰が犯人か目星もついており注意喚起をしているにも限らず終わらない。
……なにより、その人物は――気味悪がられているほど、有名な嫌われ者だ。
最も、この話はあくまで周囲の評価であり本人の耳には届いていないが。
「管理人として注意しに行く身にもなってほしいものだ」
アパートを管理するこの老人はこのアパートの管理人でもあり、大家でもある。
ある晩号室、202号室のインターホンを押すと、物音が聞こえたあとに鍵を開ける音が聞こえてくる。
しばらくしてゆっくりと扉が開かれるが……扉から覗き込むような男の視線は、不気味だった。
「井上さん!何度も言ってるだろ!燃えるゴミの日に出す以前に、関係ない日にもゴミを出さないでくれ!しかも袋にも入れず、そのまま容器を出しっぱなしにし!!」
「……はい、すみません」
大家に一言、井上と呼ばれた男は静かに謝罪を行いドアを閉めようとした所で、大家の手が入る。
「あと!食うつもりがないのに新品の弁当の容器を開けたまま放置するのは止めてくれ!カラスや猫らやら群がって対応に大変なんだ!!」
「……気を付けます」
「気を付けますじゃなく止めてくれ!!」
それだけ言うと手を離し、向こうも扉を静かに閉める。
鍵をかける音だけが聞こえるも大家の怒りは収まらなかった。
彼が此処に越して来た時は、明るい青年でこの様なことをするような人間ではなかった。
変わったのはつい最近、数年間此処を借りているものの、最初の報告は無関係の日にゴミ出しをされていた所を住民にたまたま見ていたことだ。
「井上さんが?」
「ええ、関係ない日に弁当を…しかも容器の蓋を外してそのまま」
「なんだ、それは……」
「注意しようと思ったんですが、なんだか様子もおかしくて異様な雰囲気だったので、あとで片づけましたが驚いたのはそのゴミですよ」
「ゴミ?」
「ええ、多分今日買ったばかりで賞味期限も明日まで持つ弁当をそのまま手をつけずに容器だけ開けて放置していたんです」
「なんだ、それは…悪戯か?」
「いや、私は正直悪戯にしはやりすぎって思いましたね、それに弁当を開けるとき、まるで誰かに渡すような感じで…気味が悪かったです」
「わかった、私から井上さんには注意をしておく」
「宜しくお願いします」
それから大家は言われた通り、確認とその内容が事実が確認したのち、本人からも証言を得られたことで注意にとどめていたが、それで止まることはなかった。
まるで毎日、神棚にお供えをするごとくそれは日課のように行われた。
監視カメラも購入し、確認したところ全て井上がやっている仕業であった。
おかげで野生のカラスや猫も「此処に餌がある」と覚えてしまった。
大変なのはカラスの糞などによる二次被害だった、それでも井上は全く気に留めた様子もなく毎日それを続けて、一度は堪忍袋の緒が切れ、こっ酷く叱責をしたのを覚えている。
「次は被害届!最悪の場合出て行ってもらいますからね!」
「……はい、わかりました」
それでも止まらない井上の被害は、スケールが違う嫌がらせのように感じられた。
既に警察には被害届を出し、強制退去へと事を運ぶつもりでいたが、何故だかあの生気を失った視線を見ていると、渡しづらくて躊躇していたが。
翌日も結局同じことの繰り返しをされ、大家も意を固めて井上にその紙を突き出した。
「もう再三注意をしてきたにも関わらずに辞めず迷惑している、出て行ってくれ」
「……どうしても、ですか?」
「どうしても?だと…アレを見てそう言えるのか!?」
つい感情的になってしまい指を指した場所に視線を誘導させる。
そこにはカラスの群れ、餌を待ち電柱で糞を落とし辺りは白く悪臭が漂う環境になっており、更に猫までも待機していた。
「私だけではない、他の者達からのクレームもきている!」
「……クレーム」
「ああそうだ!自転車に糞が付けられた、野良猫に餌を貰えると思われ襲われた者さえ出たと聞く、原因はアレだ」
「……そう、ですか」
「まるで他人事だな!君がやったのだよ!そもそも賞味期限が切れてない弁当の容器を何故なの場所に置く!」
「……あの場所じゃなきゃダメですからです」
「……はぁ、すまないな、場所とは言ったが、正直もう、場所の問題ではない、問題なのは君がどうしてそのような行為をするかだ」
「……行動に、理由が…必要、ですか?」
「少なくとも今回の場合は必要だ、君は他人に迷惑をかけてるという自覚をあるのか?」
「……大家さんに聞いて、迷惑だとは感じ出ます、でも――あそこには」
「でもではない!大人だろ、君は!世間一般の常識で、0から100を説明してやらんと分からんのか!」
「……大家さん、あそこには置かないとダメなんです」
「弁当をか?」
「いえ――墓石です」
何を言い出すかと思えば、弁当ではなく墓石…だと?
大家はますます怒りが抑えられなくなった。
「それを管理費から捻出しろとでもいうのか!?良いか、管理費はインターネット、他にも別の用途で使っている、何故わざわざあの場所に墓石など置かんといけないのだ!」
「……だって」
「そんなに起きたければ、その金額は君が負担してくれるのか?」
「……でき、ません。だから――」
「変わりに弁当を置いていると?ますます意味が分からんな、誰か死んだ訳でもあるまい」
「大家さん、亀田さんって方、ご存じ…ですよね」
「亀田?」
唐突に出た苗字に思い当たる節がないか頭を巡らせるが、はぐらかされていると考え頭を振るう。
「いい加減にしろ!その亀田と言う者が何なのかは知らんが、君がやってる行為を止めないなら出て行ってくれ!」
強く言い放ちその場を後にする。
亀田…何処にでもある苗字、別に珍しくはない。
過去にこのアパートを利用していた人物の名前だろうか?
気にはなるが、その場をあとに今後についてを大家は考えていた。
翌日も同じ様に弁当が置いてあった。
だがそれも今日が見納めだろ、何故なら今日直ぐにでも強制退去してもらう約束なのだから。
引っ越し業者の車が来て荷物を運び出している中、井上はずっと弁当を備えていた場所で手を添えていた。
まるでそこで誰かが亡くなったことを労わるように…不気味な行動だった。
ある程度引っ越しの作業が終わると井上はこちらに向かってきて、一礼をしきた。
「……色々、ご迷惑、おかけしました」
「……」
正直言葉をどうかければ良いか分からないが、このまま無視をしてあまりいい気分にはなれなかった。
なのにせめて、次に住む場所では、迷惑のかからないように人生の先輩としてアドバイスをしておこうと考えた。
「次のところでは普通に暮らしさない、身体には気を付けて」
「……大丈夫です、次は、ない…ですから」
「……どういう意味だ?」
「……亀田さん、ちゃんと調べて…くれました?」
亀田…あの時言われた苗字だ。
何かこの一連の行動と関係があるのだろうか?
「いや、調べてない」
「……調べて、下さい。きっとその方が、此処に住んでる人も安心できると思うから」
「……分かった」
正直何もわかってはいないが、そう納得したフリをして井上を見送った。
その後はしばらくカラスや猫などが滞在していたが、此処に来れない処置を施して幾分かマシになったのは数カ月後となっていた。
だがその間にまた別の問題が起きたのだ。
「カラスの糞だろ、消臭するにも時間がかかる」
「こんな臭いなんですかね?まるで腐臭のような臭いがするんですが……」
アパートに住む住民から苦情が来ていたのだ。
問題はあのゴミ捨て場からだ、特に井上が引っ越してからは何も不思議なことはおきていない。
それどころか前にもまして綺麗になった…いや、この場合は元通りになったと言った方が良いのかもしれないが、比較的に綺麗だ。
問題は状態の話よりもそこに漂う臭いの話であった。
「うッ……!」
確かに臭う、腐臭のような臭いとは確かに良く言ったものだっと。
消臭剤で一通り散布したは良いが、それで臭いが取れるかどうかは疑問だった。
そしてしばらくして新しい入居者がこのアパートにやってきた。
名前は水篠、井上が住んで居た場所を借りることになった。
元気な子というよりも大人しいが、人当たりが良い子と言うのが特徴的だった。
だが、そんな特徴的な子も数カ月後から異常とも呼べる行為をしだしたのだ。
井上と同様に、弁当を買い、容器の蓋を外してゴミ捨て場に置き始めたのだ。
それは数日も続けばまたカラスや猫が集まってきていた。
数週間、数カ月間、井上同様に注意を行ったが改善される兆しはなかった。
「水篠さん、何を…してるのかね?」
「……こうしてお供えをすると良いんですよ」
「それは…井上と言う人物から言われたのか?」
「いえ、違います」
「では誰に」
「……大家さんはあの部屋で寝たことありますか?」
「202号室か?」
「ああ、貸してるんだから寝たことなんてないですよね?でもあの部屋で寝ると毎日枕元で聞こえるんですよ」
「……何を?」
「痛い、苦しい、憎い、恨んでやる、供えろって」
「……すまんが怪談類は信じない性質でな」
「そうですか…でも実感はしてるじゃないですか?」
「?」
「腐臭…消えたでしょ?」
確かに、此処まで部屋まで臭った腐臭は完全に消えた、まるで嘘のように。
だがそれがこのお供えと関係があるのだろうか?
いや、水篠が言う通りならば…関係あるのだろうか?
「こうして食材を供えると、彼らの怒りが収まるんですよ」
「だが、これでは――」
上空を見ると無数のカラス、傍らを見れば餌を狙ってる猫。
正直悪影響しかない。
「そうですね…そう言えば、大家さんは亀田って方はご存じですか?」
「また亀田か、知らんな」
「知った方が良い、知ればもしかしたらこんな事を続けなくても済むかもしれない」
それだけ言うと一礼をして自室に戻っていく水篠の後ろ姿を見送る。
確か井上も同じようなことを言っていたことを思い出す。
その“亀田”と言う人物が何か関係があると思い、過去の資料として入居者一覧の名簿を調べていくと…確かにあった。
「40年も前じゃないか…それ以降も亀田と名の付く苗字はない」
つまりこのアパートを借りた亀田と言う人物は1人だけ…その亀田がなんだというのだ。
40年前の記事を掘り返しても何も答えは見つからない。
だが――1つだけ覚えていたことがあった。
「腐臭……」
何故忘れていたのだろうか?
そう言えば亀田と言う人物は、体臭がとても臭かったのを覚えている。
汗の臭いではない、今回かいでる臭いと同様の腐臭の臭いだ。
「まさか……」
嫌な構想が湧いてくる。
だがそのような記事も見つからない、しかし今日水篠の言っていた言葉と行動、その前から行っている井上の行動が一貫している以上、これは異常事態である。
急いで水篠の家をノックすると、水篠が出た。
井上同様、あの生気を失った瞳がこちらを見つめている。
「……なんですか?」
「部屋に…居れてもらえるか?」
「……亀田、知ったんですね?」
「40年前に此処を借りてた者だ、部屋の番号も此処であってる」
「……ならアナタは入らない方が良い」
「なに?」
「真相を知って欲しいと思ったのは事実、でももし知っている人物が此処に入ったら、アナタが危険に晒される」
「……何を知っている」
「40年前、亀田は此処で、この部屋であることをしていた」
「それは――」
結びつかないはずがない、だが想像もしたくないという考えと、真相を知り解決したいという考えがぶつかる。
「もう答えは出てますよね、ならきっとその考え答えです」
「……」
「僕にはどうしよもない、ただああして宥めることしかできません」
「しかし、それでは入居者のクレームが」
「それは、管理人でもあり大家でもあるアナタにも責任があるんじゃないんですか?」
「は?」
「少なくとも数十年…放置し続けた、それが答え――きっと次は、アナタの番ですよ」
そう言うと静かに部屋の扉を閉める水篠。
大家は全てを悟っていた、だがそれでも証拠は何処にもない。
“亀田”と呼ばれる男がした行為、その行為が記事にない以上対処のしようもない、彼がいまどこで何をしているのかさえ、こちらには分からないのだ。
だが歳は自分と同じ70代の爺、もしかしたら既に他界してしまってる可能性もある。
数週間、水篠の行為で腐臭は完全に消えたが代わりにカラスと猫が沢山現れるようになった。
当然、住民からは苦情が入り一刻も早く止めるように催促がきた。
そして井上同様に彼を強制退去させる形となった。
だが井上の時と違うのは、この現状の真意を、ある程度まで知っているからこそ怒りに任せた退去ではない。
「これからどうすれば良い」
水篠に大家が聞くと水篠は静かに一言だけ言う。
「止めればまた腐臭が起きるでしょうね、あと202号室には近づかない方が良い、もしどうしよもないなら…僕と同じようにお供えするのが一番です」
「……それしか、方法はないのか?」
「これを」
「これは?」
「過去、40年前に行方不明になった人達のリストです、詳しく調べればもしかしたら亀田と繋がりがある人達かもしれません」
「……まさか」
「多分、全員死んでる、いや表現が違いますね」
――殺されてる――
それが水篠の答えだった。
つまり亀田と関りがあった人物は…殺されたのかもしれない、この亀田と言う人物に。
そして此処からは推測だが、その行為を行った場所が――あの202号室なのかもしれない。
では遺体はそこに埋葬されているのか?否、恐らくだが――今も埋葬されているとすればこの“ゴミ箱”の下に処理されたのではないのだろうか?
「……何故そのような事を」
「失礼します、気を付けて」
一礼をして去って行く水篠の後ろ姿は暗いものだった。
だが残された大家とそこに住む住居者はそうも行かない。
案の定、腐臭は起きた。
そう、予想でしかないが、そうではないっと否定するように臭うコレは嘘ではない。
止める方法は2つ、亀田に深い謝罪と処罰を下すか、井上と水篠のようにこれまでと変わらずに備えるかの二択であった。
それから数週間後、今度は大家が毎週弁当を供えるという奇妙な行為をしだしたのを住居者は確認している。
大家がそんなことをして良いのか?そう言うクレームを受けたが、彼はこれが最善と言わんばかりに無視を続けて続けた。
腐臭は徐々に和らいでいったものの、一気に消えることはなかった。
それは井上と水篠が毎日備えていたことと関係しているのかもしれない。
あの後、亀田を調べたが既に他界しており、これ以上はどうしようもない。
霊媒師に頼んで除霊をしてもらったものの、深い怨念から直ぐにどうこうできる問題ではないと言われ、この習慣をつけた。
結局、過去に起きた事件がきっかけが現代でも脈々と怨念となって繋がってる。
これは――一瞬の罰なのかもしれない。
第二十七怪 埋葬されたゴミ箱下の墓地
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