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森の異形

翌日の朝、村にはまだ昨夜の空気が薄く残っていた。


見張りの段取りや交代の話が決まり、場は一応落ち着いたことになっていたが、誰も完全には気を抜いていない。


(もう、ああいうのは起きないでほしいな)


ユウは荷を背負いながら、昨日の夜のことを思い出していた。


ガルドは不在だったが、森での“狩り”はいつも通り始まる。


「今日も行くぞ~」


誰かの短い号令に、ダンたちが軽く頷く。


ダンは村の中でも目立つ男だった。


独り身で、やたらと食い意地が張っているくせに、危ないと分かっていても先に動くタイプだ。考えるより先に手が出る行動力があり、その分だけ失敗も多いが、不思議と憎まれない。


「今日は昨日以上に取って帰るぜ。見てろよ!」


ダンが得意げに胸を張る。


その様子を横で見ていたレインが、小さくため息をついた。


「お前はまず、変な草に触る前にユウに聞け」


ダンは一瞬だけ固まってから、すぐに言い返す。


「聞いてから触ったら遅いだろ。いいもんは先に取られるんだよ」


レインは横目でダンを見る。


「そのうち手どころか全部なくなるぞ」


一拍置いて、ダンが顔をしかめる。


「笑えねぇ冗談やめろ」


即答に近い返しに、周囲から小さく笑いが漏れる。


ダンは気にせず肩を回しながら前を向いた。


「まぁ見てろって。今日こそ一番持って帰るからな」


「また言ってるよ」


誰かが小さく呟き、さらに笑いが重なる。


レインは短く息を吐く。


「はいはい、まずは生きて帰ってからな」


軽いやり取りをしながら、森へ向かう列が動き出す。




――森へ向かう道中。


朝の準備を終え、村を出てしばらく歩いた頃、ダンがふと思い出したようにユウへ声をかけてきた。


「なあ、ユウ」


「……なに?」


ユウは荷を確認しながら短く返す。


ダンは周囲をちらっと見てから、少し声を落とした。


「今日ガルドいなかったけど、どうしたんだ?」


ユウは前を見たまま答えた。


「変なもの食べて、具合悪くなったから家で休んでるよ」


レインが素で間抜けな声を漏らした。


「え、ガルドが?」


思わず聞き返す声に、信じられないという困惑がそのまま滲んでいる。


ダンも同じ顔をしていた。


「あのガルドが……? 食い物で倒れるって何食ったんだよ」


「そこだよな……」


レインは頭を押さえながら小さくため息をつく。


「体だけは妙に頑丈なあいつが、食い物でやられるとか逆に怖いんだけど」


「昨日の白いキノコ、あいつめちゃくちゃ食ってたろ。絶対あれじゃねぇのか?」


ユウはそこで、昨日のことを思い出す。


森での採取中、ガルドがやけに上機嫌で草むらにしゃがみ込み、何の確認もせずに、手に取った何かをそのまま口に運ぼうとしていたあの瞬間。


「父さん、ちょっと待って」


ユウが即座に手を伸ばして止めると、ガルドは不満そうに眉をひそめたまま、摘んだ草をひらひらと揺らしていた。


その葉の裏から、妙に甘ったるい匂いがふわりと漂ってくる。


(……なんか嫌な匂いだな)


ユウはすぐに違和感を覚え、採取した記憶と照合する。


そして出てきた名称は――


誘惑香草ゆうわくこうそう


・食用:可(非推奨)

・栄養価:低

・毒性:弱

・効果:強い甘い香りを放ち、嗅いだ者の食欲と判断力を鈍らせる。摂取すると腹痛と軽いめまいを起こす。


「……それ、普通に食べちゃダメなやつだよ」


ユウがそう言うと、ガルドは真顔で「いい匂いだったから」と返した。


(全然理由になってない)


ユウは無言で取り上げ、捨てていた。


現実に戻ると、レインがまだ納得いっていない顔で唸る。


「いやでもさ、ガルドだぞ? あいつ飯だけは慎重なタイプじゃなかったか?」


「慎重じゃなくて、雑なだけだろ」


ダンが即答する。


レインはそこで、ふとダンを見る。


「お前も変なもん拾い食いすんなよ?」


「なんで俺なんだよ!?」


ダンの声が一段上がる。


「いや、お前が一番やる顔してるからな」


レインは即答だった。間も置かず、ほとんど反射みたいな言い方で、目だけはしっかりダンの手元――さっきまで握っていた草とか、拾った枝とかを一応チェックしている。


「は!? 偏見がひどすぎるだろ!」


ダンが食い気味に返すと、レインは肩をすくめたまま続ける。


「いや、分かるだろ。お前さ、いつも落ちてるもん見たら一回“これ食えるかな”って顔してるだろ」


「してねぇよ!!」


「今もちょっと考えただろ」


「考えてねぇ!!」


横で見ていたユウは、特に口には出さないまま視線だけ外す。


(……否定しきれてないのが一番やばいな)


軽い口論になりかけたそのやり取りに、ほんの少しだけ空気が緩む。


そんなやり取りのまま森へ入り―― 


「……なんか、静かじゃねぇか?」


誰かが低く言うが、返事はない。ただ全員がわずかに足を緩め、無意識に周囲へ意識を広げていた。


そのときだった。


「……動いた」


先頭のレインが短く言い、右前方の茂みへ視線を固定する。背丈ほどの草が、風とは違う“内側から押し出される動き”でわずかに揺れていた。


ユウの背中に、じわりと冷たいものが走る。


(……何かいる。人型のなにかか?)


一歩だけ距離を詰めた、その瞬間だった。


草が割れ、影が飛び出す。


小さい。だが人に近い輪郭。腕は長く、関節は歪み、くすんだ緑の皮膚と白く濁った目が、こちらをまっすぐに捉えている。手には削っただけの棍棒。


「……な、なんだあれ……」


誰かの声が震える。


ユウの頭の中に、言葉が浮かぶ。


(……まさかゴブリンってやつか?)


小さい。だが、人に近い輪郭。

くすんだ緑の皮膚と、濁った目。


知識としては知っていた。

けれど実物は、想像していたよりずっと“生き物”だった。


(……こんなのが、本当にいるのか)


「うわ……ゴ、ゴブリンかよ……!」


誰かが思わず声を上げた、その瞬間、さらに草が揺れ、二体、三体、そして四体と、左右から囲むように現れる。


「ギギッ……」

「ギャッ……ギギギッ!!」


低く潰れたような声が、草むらの奥から重なるように響く。人の言葉とは違う、喉の奥で引き裂いたような不快な音だった。


「……くそっ、囲まれてるな」


レインの声が一段低く落ち、空気の温度まで変わったような重さが場に広がる。


「下がれ――いや、散れ! 一箇所に固まるな、囲まれるぞ!」


言い終わるより先に、地面を蹴る音が弾けた。


一体目のゴブリンが、獣みたいに低く身を沈める。

次の瞬間、地面を蹴った。

一気に間合いを潰してくる踏み込みは、人間の反応より明らかに速い。


「来るぞ!!」


「ギィッ!!」


突っ込んできた個体の甲高い叫びと同時に空気が裂けるように張り詰め、最前の男が反射で棍棒を振るが軌道も呼吸もわずかに遅れていて、ゴブリンはそれを読んだかのように体を沈めて低く滑り込み、空振りした勢いで崩れかけた体勢のまま一気に横へ抜けると、その隙間に別の個体がすでに入り込んでくる。


「っ、危ねぇ!」


レインが即座に腕を伸ばして仲間の襟首を掴み、半ば引きずるようにして引き寄せた瞬間、振り下ろされた棍棒がさっきまでその頭があった場所を叩きつけ、乾いた破裂音とともに地面が抉れて土と石粒が弾け飛ぶ。


一瞬で隊列という概念が消え、誰が前衛で誰が後衛かも分からず、ただ“目の前の敵に反応するだけ”の散乱した戦いになっていく。


(……まずい。このままじゃ押し切られる)


ユウの視界の左側で、一体が一直線に踏み込んでくるのが見える。


(来る)


理由はない。けれど“確実に当たる軌道”だけが異様にはっきり見えていて、身体は思考より先に地面を踏み抜くように前へ出ると、そのまま勢いを乗せて棍棒を振り抜く。


当たった――そう思った瞬間、返ってきた手応えは軽く、骨を砕く感触がないまま芯を外したことだけが嫌なほどはっきり伝わってきた。


「ギィッ!」


ゴブリンは弾かれながらもその勢いを殺さず、空中で姿勢を捻って別方向へ跳ねるように着地し、そのまま次の標的へと滑るように視線を向ける。


「くそっ、どけ!」


誰かの叫びが飛ぶが、その声に合わせて動ける者はいない。


その瞬間、後方で一人が足を取られて転び、土を掴むように倒れ込む。


「やばっ――!」


その崩れた一点に向かって、四体目が迷いなく向きを変え、獲物を確実に仕留める動きで一気に間合いを詰める。


(……確実に仕留められるやつを選んでるのか)


その瞬間、頭の奥で“何か”が切り替わるような感覚が走った。


《スキル獲得:加速》


《身体能力(速度)を一時的に強化する》


考えるより先に口が動く。


「……加速」


その瞬間、足裏が地面を噛み込む感触と同時に身体が前へ弾かれるように加速し、増しすぎた勢いで狙いはわずかに外れたものの、それでも振り抜いた棍棒は横殴りにゴブリンの肩口へ叩き込まれ、「ギャッ……!?」と短い悲鳴を上げさせながら体勢を崩させる。


「今だ、ユウ! そのまま押さえろ!」


レインの声が飛んだ瞬間にはもう地面を蹴っていて、踏み込みの勢いをそのまま乗せた一撃が迷いなく振り下ろされ、「ギィッ……!」と潰れた叫びとともに骨が軋む鈍い音が響き、衝撃に押し潰されるようにしてゴブリンの体が地面へ叩きつけられ、土が弾けて乾いた音が遅れて広がる。


「はぁ……っ、まだ三体いる!」


息が荒く、肺が焼けるように熱い、視界の端がわずかに揺れるがそれでも目を逸らす余裕はなく、顔を上げた瞬間に正面の草が同時に揺れ、「ギギッ!」「ギャギッ!」と濁った鳴き声を重ねながら二体のゴブリンが左右から弾けるように飛び出し、地面を蹴る足音もほとんど響かせないまま一直線に距離を詰めてくる。


「無理だろこれ……! 速すぎんだろ、こいつら!」


一人が声を裏返らせながら後ずさり、そのまま完全に腰が引けて逃げに入った瞬間、かろうじて保っていた間合いと向きが一気に崩れ、誰が前で誰が支えるのかも曖昧なまま全体のバランスが瓦解していくのがはっきりと分かる。


(このままじゃ一人ずつやられる)


そう思った直後、視界の端で一体が低く身を沈めたまま滑り込むように懐へ潜り込んできて、ユウは反射的に体をひねって距離を外そうとするがわずかに遅れ、振り抜かれた棍棒が脇腹をかすめて「ギャッ!」という甲高い鳴き声と同時に鈍い衝撃が走り、息が一瞬詰まる。


(……くっそ、避けても間に合わない)


だが、痛みとは裏腹に視界だけは妙に静かで、周囲の動きが一段遅く見える感覚のまま、今どこに踏み込めば崩せるかだけが浮かび上がる。


(……今しかない)


踏み込む。地面を強く蹴り、無理やり距離を詰める。相手の腕が上がりきる前、その内側へねじ込むように身体を滑り込ませ、そのまま押し込む形で棍棒を振り抜く。


(今度は、確実に入った)


鈍い手応え。骨に当たる重さ。


「ギィッ……!?」


短く潰れた悲鳴とともにゴブリンの体がぐらりと傾き、そのまま糸が切れたように崩れ落ちる。


残り一体。


一番小さい。だが、明らかに一番速い。左右に細かく揺れながら、間合いを測るようにじりじりと詰めてくる。


「ギギギッ……!」


低く擦れるような唸り声が喉の奥から漏れ、その動きには明確な“狙い”がある。


「くそっ、こっちにくんなー……!」


誰かが叫ぶが、誰も前に出ない。足が止まっている。恐怖で踏み込みが消えている。


その中で、ユウの視界だけが再び研ぎ澄まされる。


(あるはずだ……踏み込む直前の“間”が)


左右の揺れ、足の置き方、重心の偏り――そのわずかな癖の中に、一瞬だけ“踏み込む前の間”が浮かぶ。


「……集中しろ。一瞬の隙を逃がすな」


短く息を吐き、半歩、さらに半歩と距離を詰める。近づくほどに危険は増すが、それでも止まらない。


そして、相手の足が地面を蹴る“直前”、ほんの一瞬だけ動きが固まるそのタイミングに合わせて、全身の力を乗せて振り抜く。


一瞬だけ、周囲の音が遠のく。


「ギッ——!?」


引き裂くような短い悲鳴が空気を裂いた瞬間、打ち抜かれた衝撃に体がその場で止まり、次の瞬間には力が抜けたように崩れ落ちる。


最後の一体が、動かなくなる。


――静寂。


誰もすぐには動けない。荒い呼吸だけが重なり、膝に手をついて体を支える。


「……はぁ……っ……今の、何とか倒せたのか……?」


誰かがかすれた声で呟くが、言葉は途中で切れて、それ以上続かない。


「勝った……のか? いや、まだ周りにいないよな……?」


問いだけが空中に落ちる。けれど返事はない。誰も“勝った”という実感を口にする余裕すらなく、ただ生きていることだけを確認するように呼吸を繰り返していた。


しばらくの間、森の気配だけが戻ってくるのを待つような沈黙が続く。


やがて葉の揺れや風の音がいつもの森へ戻っていることに気づいた頃、ようやく全員の肩から少しずつ力が抜けていった。


互いに顔を見合わせても、まだ誰も笑えない。


それでも、“助かった”という実感だけは、遅れて少しずつ広がり始めていた。


そのタイミングで――


「……おい、お前さ、最初ゴブリン見た瞬間、普通に腰抜けて座り込んでただろ」


「は!? 誰がだよ!」


即座に声を上げたのはダンだったが、言い返すより先に息が切れていて、説得力がまるでない。


レインは横目で見ながら、わざと淡々と続ける。


「あれだけビビっといて今さら強がるなって」


「なってねぇよ!! あれは一瞬しゃがんだだけだって!」


「しゃがんだまま固まるなよ」


レインが即座に返すと、ダンは言葉に詰まって一瞬黙る。


「……いや、それはタイミングが悪かっただけでだな……!」


その一言で、周囲の空気が一瞬だけふっと軽くなる。


「やめろやめろ、もうその話やめろって……!」


ダンが必死に否定するほど周りの笑いが増えていき、最初は息を整えるだけだった面々からも、小さな笑い声がぽつぽつと漏れ始める。


だがその笑いも、どこか軽い勝利のものではない。


ただ“生き残ったことを確認するための息抜き”に近い。


誰かがその場へ座り込み、別の誰かは震える手のまま武器を握り直している。


まだ足は笑っているのに、それでも全員どこか“生きて帰れた”ことに安堵していた。


ユウはその光景を黙って見ている。


(……なんとかギリギリ倒せたな)


手の中の感覚がまだ残っている。刃が当たった重さも、踏み込みのズレも、全部そのままだ。


勝ったというより、“崩れる前に押し切っただけ”。


森の奥は、まだ静かだった。


その静けさが逆に、ここが終わりではなく、ただの通過点であることを、はっきりと示していた。


――そしてユウは、ふと昨日のことを思い出す。





~~昨日のガルド~~


ガルドは――

森の少し外れでしゃがみ込み、白く淡く光るキノコを指先でつまみ上げていた。湿った土の匂いの中で、それだけがやけに浮いて見える。傘は薄く、月明かりみたいにぼんやりと光を帯びている。


月白茸げっぱくたけ


・食用:可

・栄養価:低

・毒性:弱

・効果:淡白で上品な味。食べ過ぎると腹部不調と軽い眩暈。

    ごく軽い中毒性があり、連続して食べると満腹感を感じにくくなる。


「ユウ、これ、食えるか?」


ガルドが差し出すと、ユウは一瞬だけ目を落とし、すぐに判断してため息をついた。


「……食べられるけど、あんまりは食べないでね?」


「食えるなら問題ねぇな」


その時点で、もう半分くらい結論は出ていた。


――その日の夕方。


焚き火の横で、ガルドは異様な勢いでキノコを焼いていた。

じゅっと水気が弾けるたびに待ちきれないように手を伸ばし、焼けきる前のものまでひったくるように口へ放り込んでいく。


「うまい! これ普通にうまいぞ!」


口いっぱいに頬張ったまま叫び、飲み込む前に次へ手を伸ばす。


「ユウがなんか言ってなかったか?食べすぎるなって」


ダンが苦笑混じりに言うが、ガルドは聞いていない。


「うまいもんはうまいだろ!」


即答だった。迷いも躊躇もない。


「お前、さすがにペースおかしいぞ」


レインが呆れた声を挟むが、それでも止まらない。

焼いて、取って、食って、また焼く。ほとんど作業みたいな動きで、気づけば手元のキノコが目に見えて減っていく。


「……これ、俺らの分もあったよな?」


誰かがぽつりと言う頃には、もう遅い。


ガルドは平然と最後の一つをひっくり返し、焼き上がる前にそのまま口へ入れた。


「ほんと、食いもんだけは躊躇ねぇな……」


呆れた声すら流しながら、ガルドは満足げに息を吐く。


「これ、いくらでもいけるやつだろ!」


――その場にあったキノコは、ほとんど残っていなかった。


――そして翌日。


ガルドは家の前で、完全に沈んでいた。壁にもたれるように座り込み、顔色は悪く、さっきまでの勢いが嘘みたいにぐったりしている。


「……腹、終わった……」


その前でユウは足を止め、しばらく無言で見下ろしてから、小さく息を吐いた。


「だからあんまり食べるなって言ったのに……」


ガルドは遠い目のまま、どこか満足げにぼそりと呟く。


「……でも、あれな……焼くと、ちょっと甘くなるんだよな」


ユウは一瞬だけ黙り込み、わずかに視線を外してから、短く返す。


「そこじゃないだろ……」


ガルドは真顔のまま一度だけうなずく。


「うまかった」


ユウはもう何も言わず、静かにため息をつく。


(治らないな、これは)






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




<現在のステータス>


――――――――


【ステータス】


名前:ユウ

年齢:8歳


HP:31/31 → 28/32

MP:10/10 → 8/11


筋力:5

耐久:3

敏捷:5 → 6

知力:7


所持スキル


・採取 Lv1 → Lv2

→ 森林環境での素材・食料・薬草の識別能力。毒草と有用植物の判別も可能。


・格闘 Lv1 → Lv2

→ 素手戦闘の基礎。押す・掴む・倒すなどの初歩的戦闘動作補助。


・即時回復 Lv1

→ MPを約50%消費し、HPを約50%回復する緊急回復スキル。一日一回のみ使用可能で、MPが不足している場合は発動できない。


・解体 Lv1 → Lv2

→ 動物・魔物・物体の構造理解と効率的な分解技術。素材ロスを抑える。


・罠設置 Lv1 → Lv2

→ 簡易トラップ・捕獲罠の設置技術。


・気配察知 Lv1(NEW)

→ 生物の位置・視線・敵意を感知する。


・加速Lv1(NEW)

→ 身体能力(速度を1.1倍)を一時的に強化する。


固有能力


・窮地適応

→ 生命の危機、または極度の環境ストレス下において、生存に必要なスキルを獲得する。




■森


森はこの世界でもっとも身近で、そして最も危険な場所だった。


グレイウッド村のすぐ外に広がるその森は、一見すればただの自然に見える。

木々は高く、草は生い茂り、季節ごとに実をつける植物も多い。食料や薬草の元になる恵みも多く、生活だけを見ればむしろ豊かにすら思える場所だった。


だがその裏には、確かな危険が潜んでいる。


森の奥には、時折“異形”が現れる。


ゴブリンと呼ばれる小型の魔物だ。


人型に近い体を持ちながら知性は低く、常に群れで行動する。

基本的な行動原理は「生存」ではなく「捕食」であり、視界に入った生物を敵・獲物として区別なく襲う。


特に人間に対して強い捕食性を持ち、一度遭遇すれば逃走や交渉といった選択肢は成立しない。

小規模な群れであっても油断すれば一方的に被害が出るため、村単位での対処が前提となる存在だった。


通常は森の奥に潜んでいるが、稀に浅い場所へ出てくることもある。

その場合、数匹であっても武器のない者はまず生きて帰れない。


また、単独行動はほとんど見られず、2〜10体ほどの小群を形成し、獲物を囲むように動く。

知能は低いが、戦闘経験によっては側面からの突撃や逃走判断といった単純な動きを見せる個体も確認されている。


そのため、森へ入る者は村でも限られていた。


必要に迫られた者だけが、命を削る覚悟で足を踏み入れる領域。

それがこの森だった。


ユウが今立っている場所は、まさにその境界の中だった。



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