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男子は根性 〜 根性があればなんでもできてしまう男の恋物語 〜  作者: しいな ここみ
素直になれない二人! の巻

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根性とプライド (柏木陽翔視点)

 根性部の部員が増えた。


「いやぁ……根性って、いいものですよね」


 なっしーくんこと今生梨くんが、椅子に座るコンジョーの肩を後ろから揉む。


 なっしーくんに後ろから抱きつくように掴まりながら、高嶺白百合くんが聞く。


「私も根性、頑張ったらつきますか?」


「つ……つくんじゃないかな」

 コンジョーが持ち前の人見知りを発揮して、高嶺さんの質問に答えた。

「とりあえず俺……、偉い人じゃないから、わかんないです」


 なっしーくんは憧れだった高嶺さんと付き合いはじめた。彼について彼女も根性部に入部した。

 遠慮なく言わせてもらえば美女と野獣──いや美少女と草食動物みたいな感じだが、本人たちが楽しければ、まぁ、いいだろう。


 はっきり言って、オレはなっしーくんに負けた気がしている。


 なっしーくんのほうが、オレよりも根性がある。相変わらず根性部で一番根性がないのは、オレのようだ。


「いいなぁ……」

 オレの隣で、ポテトチップスを小さく齧りながら、イチャつく後輩カップルを眺めながら、神崎梓が呟いた。

「私も彼氏、欲しくなっちゃったな……」


 オレなんてどう?


 そんなことはオレは言わない。頭が空っぽのチャラ男だったらすかさずそんなアピールをするんだろうけど、オレはそんなキャラじゃない。


 オレは神崎のことが気になっている。それは確かだ。

 しかし彼女に告白なんてする気はない。自分でもよくはわからないが、イケメンとしてのプライドみたいなものだろうか。


 何より……怖い。


 今、現時点では、神崎は間違いなくオレのことを嫌っている。

 朝日奈ちゃんに聞いた話だと、過去にイケメンに酷い目に遭わされたらしく、それでイケメンに対して拒絶反応を示すようになってしまったそうだ。


 オレはそんな、君を酷い目に遭わせるようなタイプのイケメンじゃないのに──


 少なくともそれをわかってもらえるまでは、動けない。

 ……いや、わかってもらえたとしても、動けるかどうか──

 今まで一方的に言い寄られる側だったオレが、言い寄る側になんて、なれるのか?

 

 よし──


 何が何でも神崎梓を、オレに惚れさせてみせよう。

 彼女のほうからオレに「付き合ってください」と言わせるんだ。そしてオレはそれができるヤツだ。それまで……待つんだ。


 怖いからじゃない、怖いからじゃないぞ。


 よし、まずはイケメンに対する彼女の印象を変えることから始めよう。

 彼氏欲しくなっちゃった神崎の、彼氏として選ぶ候補の中から今はイケメンが除外されている。イケメンに対する警戒を解かなくては。


「なぁ、神崎」

 オレは聞いた。

「君に釣り合う男なんて、この世にいるのか?」


 神崎がオレを横目で睨んだ。


「何? そのキモい言い方……。何を腹の内で企んでんの?」


 まずい。警戒させてしまったか。

 確かに今の言い方はキモかったかもしれない。

 取り繕うため、オレは言葉を継いだ。


「神崎に彼氏がいないなんて、おかしいよな、確かに」


「私はみんなのものなのよ」

 アイドルらしい答えが返ってきた。

「ファンみんなのための私さまなの。あんただってそうでしょ?」


「そ……、そんな国民的アイドルみたいなこと、思ってないよ!」

 つい口答えしてしまった。


「ハァ? つまり私が自分のことを国民的アイドルみたいに思ってるとでも?」


「いや……その……」


「思ってるけどね」


「えっ?」


「国民は大袈裟だけど、私は全校生徒のアイドル。神崎梓Death!」


「クッ……!」

 BABYMETALみたいなポーズを決める神崎をイカスと思った。目が眩むかと思った。

 こんな女王をオレに惚れさせるなんて、できるのか? いや無理だ。


 その時、神崎の向こう側から、朝日奈ちゃんがひょこっと顔を覗かせ、発言した。


「でも梓ちゃん、最近いつも柏木くんの隣に座るよね? 正直お似合いだと思うんだけどなー、柏木くんと梓ちゃん……」


「ハァ!?」

 神崎がゴリラのように暴れだした。

「な、何言ってんのよ、笑! たまたま座ったところにコイツがいるだけなんだからねっ!」


 そういえば最近、思ってはいた。


 以前はできるだけオレから離れたところにいつもいた神崎が、話しかけることのできる範囲にいつもいる。


 期待してもいいのか?


 神崎が、オレのことを嫌ってはいないと、そう思ってもいいのか?


「ほら、柏木くんも」

 朝日奈ちゃんがオレにチャンスをくれた。

「お似合いだよ? 付き合っちゃいなよ、梓ちゃんとっ!」


「ば……」

 オレの口が、勝手に笑いだした。

「ばかだな! ばっかじゃねーの、朝日奈ちゃん! こんなツンツン狐と付き合える男は不死身のデッドプールぐらいだよ! 冗談はやめてくれよな、ハハハ!」


「好きなくせに」

 神崎が横目でバカにするようにオレを見ながら、ニヤリと笑った。

「気づいてるわよ。あんた、しょっちゅう私のことコソコソ見てるでしょ」


「ばっ……!」

 頭に血が昇った。

 それでつい、心にもない言葉を返してしまった。

「ばか言っちゃいけない! 何を言ってるんだ? このオレが……? 君なんかを……? うぬぼれちゃいけない!」


「あぁ、よかった」

 神崎が深呼吸をした。

「あんたみたいな糞イケメンにつき纏われたら拳がいくつあっても足りないところだわ」


 なぜ……オレは……


 なっしーくんのように、素直に「好きだ」と言えないのだろう……





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