女は◯◯!
「女は優しさだっ!」
まずはコンジョーくんが答えた。
「そして……かわいさ! 包容力! 愛嬌! 謙虚さ! それから……」
へこんだ。
ぜんぶあたしにはないものだ。
そうか──。
コンジョーくんはきっと、あたしにそういったものを求めてるんだ。なんとか頑張って、彼の期待に応えないと……うぅ……でも、難しいよ……
「それから……猫っぽさかな。あと背の低さ!」
最後にコンジョーくんがフォローするように、そう言ってくれた。うん。それならあたし、持ってる。
「ははは。最初から最後まですべてそれ、朝日奈ちゃんのことだな」
柏木くんもあたしを気遣って言ってくれた。
みんな優しいな。
あたし、コンジョーくんが言うような女の子になれるよう、根性で頑張らなくちゃ!
「朝日奈副部長は?」
今生梨くんが質問をあたしに振った。
男は根性、女は◯◯──。
あたしは答えた。◯◯に入るのは、もちろん──
「女は……カオ!」
梓ちゃんのことを立ててそう言ったつもりだった。
でもあたしがそう答えた途端、みんなが「はあっ!?」って言った。
梓ちゃんが呆れた顔で言った。
「まさか笑がナルシストだとは思わんかったー。確かにあんた、顔はかわいいけどね、でもそれだけじゃないから」
コンジョーくんが励ますように言った。
「いや! 朝日奈笑、おまえは顔だけの女ではないぞっ! むしろ中身のほうが──」
柏木くんが首を横に振った。
「女だけ? 男の顔は重要じゃないの?」
なんかみんなに誤解されてしまったみたいだ。自分のことなわけないじゃん……。梓ちゃんのことなのに。
へこんだ。
やっぱりあたし、ずれてるのかな。早くコンジョーくんが言うようなひとにならないと……
「では、柏木先輩はどう答えます?」
床に手をついてうなだれるあたしの頭上で、今生梨くんがアンケートを続けた。
柏木くんがあっさり答えるのが聞こえた。
「女も根性だよ」
「あら」
梓ちゃんの声が聞こえた。
「奇遇ね。あたしもそう言おうと思ってた」
「ふふ……。気が合うね」
「あんたに気が合うなんて言われたくないわ、この糞イケメン」
「そうだ!」
あたしは勢いよく立ち上がった。好奇心があたしを立ち上がらせたのだ。
「今生梨くんはどう思うの? 男は根性、女は……何?」
きっと彼が好きな女の子は、彼がこれから答えるようなひとなんだ。
どんなひとなんだろう? 今生梨くんは何て答えるんだろう? わくわくした。思わず瞳孔が開いてしまった。
「女は……」
照れくさそうに、今生梨くんが答えた。
「しっとり感です」
しっとり感……
うん。確かに潤い大事だよね、とあたしが思ってると、今生梨くんが言い直した。
「ごめんなさい。今のなしで」
「うん」
「わかった」
「で、本当は?」
あたしたちが急かすと、今生梨くんが自分の世界に入り込んだ。空を見るように天井を見上げて、うっとりと口にした。
「男は根性、女は太陽です。男は太陽に憧れ、手を伸ばし、いつか届くと信じながら、根性で背伸びして、飛べる日を夢見るんです」
「ポエムだ……」
「ポエムだ」
「ポエムね」
「つまり……」
あたしは身を乗り出した。
「今生梨くんが好きなのは太陽みたいな女の子なのね? 写真とかある?」
「そんなの……眩しすぎて撮れません」
「よし!」
コンジョーくんが拳を握りしめた。
「今生梨! おまえは根性でその太陽に向かって飛ぶんだ!」
「どうすれば根性が身につきますか!?」
泣きそうな顔で今生梨くんがコンジョーくんにすがりつく。
「段田先輩は朝日奈先輩に、どんな根性で告白をしたんですか!?」
「ヤケクソだ」
「ヤケクソ……」
「何も難しいことは考えず、ただ前へ向かって突っ込んだだけだ」
「そ……、それを朝日奈先輩は、なぜ受け入れたんですか!?」
今生梨くんに質問を振られて、あたしはうーんと考え込むまでもなく、即答した。
「必死なその目がかわいかったから」
「そうだ、必死になるのだ今生梨はじめよ!」
コンジョーくんが両手の拳を握る力をさらに強くした。
「根性があれば何でもできると信じるんだ! ただし無理はするな! 天使猫が心配するからな!」
「根性があれば……」
自分に言い聞かせるように今生梨くんが復唱する。
「何でも……できる……」
「よし! 今から行くぞっ! 告白しに行くんだっ!」
「ちょ……ちょっと待ってよ、コンジョーくん」
なぜかあたしがオロオロしてしまった。
「もう放課後になってしばらく経つよ? その子、もう帰っちゃってるんじゃ……」
「彼女はテニス部です」
今生梨くんが覚悟を決めたような顔で言った。
「まだたぶん、練習中です。テニスコートにいます」
「よし! 行くぞ!」
「はい!」
コンジョーくんに乗せられて、今生梨くんの目が燃えてる。
梓ちゃんも柏木くんも笑顔で応援してる。
あたし一人がオロオロしてた。
こんな……コンジョーくんの言いなりになって、大切な告白なんかしちゃっていいの!?
もし玉砕しちゃったら、今生梨くんから恨まれることになっちゃわない!?
そう思いながら、あたしは自分の好奇心も止めることができなかった。




