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9 生真面目な公爵令嬢、やらかす




テーブルに並べられたケーキは

フルーツや生クリームやチョコなど、色鮮やかにきらめいていて、宝石のようだった。

どれから食べようか迷ったが、

私はタルトタタンを選ぼうと手を伸ばそうとした。すると先に、

「ライナはこれでしょ?」

とエリウスがタルトタタンを私に渡した。

「…なんでわかったの?」

「だって、ライナのお気に入りのケーキって、メールパイ、タルトタタン、ショコラーヌの三つでしょ?ここのケーキは新しいものばかりで、伝統的なケーキはこのタルトタタンしかないし、これかなあって?」

と笑っていった。

「よく…覚えてるのね。」

「ライナのことならなんでも覚えてるよ。」

と真顔でエリウスが言う。

それら三つのケーキは、

この国伝統の家庭的なケーキだ。

母が小さい頃よく作ってくれたもので

私は母が作るケーキが大好きだった。

私はよくおぼえてるなあと思いながら

わたしはタルトタタンを

一口に切って口に運ぶ。

「ん〜〜おいしい〜〜」

一口で感じる濃厚なキャラメルの甘さと、

じっくり焼かれたリンゴのとろけるような食感。キャラメリゼされたリンゴの自然な甘みと酸味が、バターの風味が豊かなサクサクの生地と絶妙に調和し、食べるごとに深い満足感があった。







私があまりの美味しさに悶絶していると

「僕も僕も。」

とエリウスがちょうだいと顔を近づけてきた。

昔もこんな感じでよく一口ちょうだい

と言ってきたことを思い出す。

小さい子供みたい。

もう大人なんだから自分で頼めばいいのに。

と思ったが、

そんなことは言えないので、

一口切って、エリウスの口に運ぶ

エリウスがニコニコしてもぐもぐし

「ん〜おいしい〜」

と私と全く同じ反応をしたので

思わず私は笑ってしまった。

「もう一口。」

と言って顔を近づけてくる。

「えー、もうダメ!」

というと

「えーケチ。」

と言って、ケーキを見渡すと今度は

ルルの実タルトをエリウスはとり、

自分で一口たべた。

「んーーーーーこれもおいしい!!

はい、ライナも。」

とフォークを近づけてくる。

自分で食べるのに。

なんでこんなこと。

と思いながらも私はケーキの引力逆らえず

パクッと一口。

「んーーーーこれもおいしい!!」

それからラニウスは

「これは?」

「これは?」

と言って次から次に

私の好きそうなケーキを的確に選び

私の口に運んできた。

どのケーキも本当に美味しくて

どれも甲乙つけがたかった。

そろそろお腹が限界だなと思えてきて、

テーブルをみると、たくさんあったケーキの皿

がほとんどなくなっていた。

「あれ……もうほとんどない?」

というと、エリウスが

「まだ食べられそう?」

と聞いてきたので

「あともう2,3口で限界かも」

と言った。

もう一つ胃袋があれば……

と私は切実にそう思った。

「オッケー!」

とエリウスはいうと残りのケーキを

いつもの一口よりさらに小さくして

「はいっ」

と渡してきた。

「………」

「これってもしかして…

私が全部食べられるように?

エリウスが食べるついでかと。」

「ん?」

とエリウスはとぼけてにこにこしている。

やっとここで、私がエリウスが私に全てのケーキを1番美味しい部分を2,3口ずつたべさせくれて、残りを食べてくれていたことに気がついた。

まったく……。無理して……。

小さい頃は私と同じくらいの食事量だったーーー

いやそうか、

今の彼は私の倍くらいの体格のある男性なのかーーー

私はそう気がつくと、

なんだか胸がドキッとしたした気がした。 








「どれが美味しかった?」

「んータルトタタンは本当に美味しかったわ!あとレーヌの実のタルトとショコラミール、ムースクレメ、あと小さい色々なフルーツが綺麗にデコレーションしてあったクリームケーキも美味しかったわ。それに薄いチョコレートの層になってる、なんだったかしら?チョコメールみたいなもの……あとは……」

と言ってる私をふんふんとラニウスは聞いていた。

私が言い終わると

「じゃあ今の全部2つずつ持ち帰りで。」

と近くに潜んでいたお付きの人にいった。

「え?!?」

というと

「1つは公爵家用。ライナは2,3口ずつしか食べてないでしょ?だから家に帰ってからちゃんと食べたいかと思って。1つは王宮用。王宮で1番性能のいい冷蔵施設に入れておくから、明日僕とまた一緒に食べよう。」

そう言って笑った。

エリウスはいつからこんなに頭の回転がはやくなったんだろう?

というかもしやこれが女慣れ?

私と話していない期間に女の子と遊んでた?

私の脳裏はいろんな思考がよぎったが、

今はまあ、そんなこと考えても仕方ない。

そう思って、

「ありがとう。」

と素直にエリウスの好意をうけとった。






お土産を包んでもらうまで、

私たちはガラスから見渡せる

街中を眺めていた。

こんなところから街を一望できるなんて。

私は行き交う人に見るのに夢中になった。

ふと、広場で人だかりができているのが見えた。

「あれ何かな?」

「何かイベントをやってるのかもしれないね。

行ってみよう!!」

そういうとエリウスは立ち上がり、

私の手をとった。



広場に行ってみると、

そこでは、白い塊が何個も

ポールから吊り下がっていた。

「これはなんですか?」

エリウスがそばにいた人に尋ねる。

「これは生クリーム食べ競争だね。

生クリームを食べ切りながら走ってゴール。

そして優勝者にはあれ。」

その人が指差した先には、大きなウサギのぬいぐるみが置かれていた。

ふわふわでとってもかわいい。

私の目は釘付けになった。

この歳になってもぬいぐるみには目がない。

特にウサギのぬいぐるみは大好きだ。

エリウスは私をみつめたあと、

「まだ参加できます?」

とその人にきいた。

「まだエントリー受け付けているよ。

でもあと10分くらいで始まるから早い方がいい。

あの受付にいけばいいよ。」

と教えてくれた。

「ありがとう。」

とエリウスは微笑むと、

「ちょっと待っててね!」

と言って、受付の方に走っていった。

え、本当にこれに参加するの?

エリウスが?

まって、バレない?

私はそんな言葉が喉まで出たが

発する前にエリウスは消えていた。

「まったく……」

私は吊り下がった生クリームを見ていた。

「うーん、それでも美味しそう。

お腹が空いてれば私も……。」

と思った。



少しすると、スタートラインにエリウスが見えた。

こちらをむいて手を振っている。

他に並んでいるのも男性ばかりだ。

観客は女の子が多いので、

女の子のために男性が参加している。

という感じなのだろう。

エリウスはバレないように、髪を帽子にさっきよりもきっちりと隠し、メガネをしていた。

これなら大丈夫か、私はすこしほっとした。





「位置についてよーい!」

みんなが構えた。

「ドン」

みんな一斉に走り出した。

エリウスは足が速い。

1番速く最初の生クリームにたどりついた。

「ぱくぱくぱくっ」

エリウスは思いっきり生クリームを食べ、

そのまま勢いをたもって走る。

2番目の生クリーム。

「ぱくぱくぱくっ」

これも余裕でクリア。

そのまま3番目のクリーム。

これは少し辛そうだったが、

なんとか食べ切った。

そのままエリウスがぶっちぎりのトップでゴール。



他の男性はやはり甘い生クリームに

苦戦しているようだった。

エリウスのゴールの後、

青い顔をした男性たちがゴールしている。

エリウスはすごい歓声を浴びていて、

なぜか私も少し誇らしかった。

「すごいな兄ちゃん」

「メガネのお兄さんおめでとう〜」

「お兄ちゃんおめでとう〜!!」

「すごいな〜すごく速いじゃないか」



エリウスがこっちに走ってきて、

「はいっ」

私に渡してきたのウサギのぬいぐるみ。

「ライナのために頑張ったよ。」

と顔を上げると、

エリウス顔は生クリームまみれで真っ白。

私は思わず

「エリウス……顔!!!」

と思わず吹き出して、大爆笑してしまった。

エリウスはキョトンとして、

それから自分の顔を触った。

「あ!!!」

エリウスも大笑い。

2人でしばらく笑い続けた。

笑いが収まり私は

「ありがとうエリウス!すごかった!

ぬいぐるみもうれしいわ。」

とお礼を伝え、

エリウスのメガネを取り、エリウスの顔を

ハンカチでそっとふいた。

「ありがとう、こんなことライナにしてもえるなら、毎日でも参加したいな〜」

とうきうきでいっていた。

「ハンカチで顔を拭くくらいしてあげるわよ」

と言うと

「ほんと?言質とったからねー」

とさらに顔を綻ばせた。




その時、ビル風が吹いた。

エリウスの帽子がとび、

綺麗な金髪があらわになった。

メガネもなく、王族特有のエメラルドとゴールドの綺麗な目もみえる。

広場の観客の目が一斉にエリウスに注がれる。

「もしかして王子様??エリウス様??」

と口々にいったあと、皆が目をキラキラさせてこちらに向かってくる。

「エリウス様!!!握手を」

「エリウス様万歳〜」

広場がすごい騒ぎになりかけていた。




エリウスはまずいっという顔をし

「レイナ!!!走るよっ!!!」

というと私をお姫様抱っこした。

「きゃっ」

エリウスは持ち前の脚力で

あっという間に走り出した。

「もしかしてあれは婚約者のライナ様?!」

という声も後ろから聞こえる。

エリウスは

「人違いです〜」

といい、そのまま走る。

走り続け、細い裏路地に差し掛かると、

そこに入り、段ボール箱がつまれたの

陰に隠れた。





「ごめんね、ライナ。」

エリウスがしゅんとしている。

「あれはしょうがないわ、メガネを外した私もわるかったし。おあいこよ。」

といった。

そもそもエリウスは私のために

あんな目立つイベントにでてくれたのだ。

私もお咎めを受けるべきだろう。

「ふふふ」

エリウスは笑う。

「昔も僕がやらかした時、

必ずライナも一緒に怒られてくれたよね。

そんなライナが僕は大好きだ。」

と言った。

私はその言葉にドキッとし、

そして今エリウスとかなり

密着していることに気がついた。

「ちょ、まって……

そんなことより顔近いわよ……」

と言って私はエリウスから少し身を離した。

「あ、気がつかれちゃったか。」

とエリウスはてへっとする。





そのあとはもうデート続行は無理だと思い、

私たちは馬車に迎えにきてもらった。

いろんなことがあったからか

馬車にがくるとほっとして

私は座るなり眠りに落ちてしまった。











ブクマ増えていてるんるんしていますʕ•ᴥ•ʔ

してくださった方ありがとうございます♡

3日に1回更新にしようと思ってましたが、

おかげさまで今日も更新がんばれました!



読んでくだった全ての方に感謝申し上げます!

ぜひお時間あればブクマと評価もお願いします〜⭐︎




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