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1  マイペース王子、強硬手段にでる

「おっはよ〜ライナ!」

とドアをノックもなしに入ってくるのは

この国の王子、エリウス。私の婚約者だ。

いつから婚約者かって?

そんなこと聞いて欲しくない。

貴族の習慣からわかるよね⭐︎

そう!う・ま・れ・た・と・き!

この運命を私は受け入れざるを得ないのだ。




「おはようございます。皇太子様。」

と私は幼い頃からの妃教育で習った通りに

卒なく綺麗に挨拶をする。

「その挨拶やめてよ〜」

エリウスは不貞腐れている。

「エリウス様、どこで妃教育担当の教師が

入ってくるか分からないので、

そのようなわがままはやめてください。」

エリウスのテンションに合わせて、

あとから先生に怒られるのだけは勘弁だ。

めんどくさい。なるべく早く終わらせて帰って家でのんびりしたい。





「わかったよ〜あとでお茶の時間に待ってるから」

と言ってエリウスは去っていった。

はあ。こんな調子で婚約発表式から始まった妃教育ももう6年が経つ。

私はもうすぐ16歳。

正直王妃とか勘弁してほしい。

普通の16歳の女の子と同じように

恋バナとか舞踏会とか夜会とか

新しい男性との出会いにドキドキとかしたいのだ。

私は生まれ時から皇太子の婚約者候補だったから、

男の人はお父様と2人のお兄様と皇太子と家の執事や庭師、

王宮の執事くらいしかしらない。

同じ年代の男性と出会う機会をことごとくつぶらされているのだ。





次は適切な間隔、丁寧な音でのノック。

妃教育のメイン教師のローズだ。

あーまた退屈な1日のはじまりだ。



作法、ダンス、貴族史はもちろん

帝王学から簡単な医学まで

さまざまな分野を妃教育では教えられてきた。

もう貴族史なんて最悪だ。

名前名前名前。しかもだいたい伝統を重んじた似たような名前。(うちもそうだけど☆)

公爵家侯爵家に関してはその歴史も頭に入れなければならない。もう本当に地獄の時間だ。

ダンスもセンスがないのでよく足を踏んで講師ににらまれていた。

私は何をするにもセンスがないのだ。



そんなこんなで午前中がおわり、昼休憩。

この時間は半ば無理やり皇太子様が私と会えるようにと2人の時間としている。

やめてほしい。1人でゆっくりしたい。

でもたたが一介の公爵家の令嬢が皇太子様の指示に逆らえるはずはないのだ。



「ライナー!!」

皇太子がかけよってくる。ブロンドのちょっと毛先のウェーブした髪に、エメラルド色のキラキラした目、色白で透明感のある肌。クリッとした目はわんちゃんみたいでかわいい。なんかうちで飼ってるゴールデンレトリバーのラックによく似ているなあと思っているが、本人に言ったことはない。



「ごきげんよう、エリウス様」

私は表情を崩さない。めんどくさいからだ。

「ちょっとライナ、こっちにきて!」

と袖を引っ張られる。

「ちょ、ついていくので、やめてください」

と言うと

「あ、ごめんごめん」

と言って笑ってはなしてくれる。



「はい、ついたー!」

とエリウスが案内してくれたのは、王宮の最奥、国王の親族しか入れない場所だった。

「さすがにここは、私は踏み入れられませんわ。」

「え、なんで?もうすぐ結婚するんだから

ライナはもう家族でしょ?

お父様の許可は取ってあるし大丈夫だよ。」

家族って……。勝手に先に結婚しないでほしい。

横についてきてる執事とメイドの様子をうかがうが、彼らも止める様子がない。

きっと国王様に許可を取ったのは本当なのだろう。

仕方なく私は彼に従ってついていが、

執事とメイドは王宮所属なので、最奥部に繋がる廊下の前で止まって待つようだった。

「ここが僕専用のサロン〜」

と言って連れられたのはものすごく広く、

とても緻密で綺麗な彫刻が

あらゆる柱という柱にほどこされ、

質の高い大理石が敷き詰められた部屋だった。

公爵家のメインサロンと同じか

それ以上の豪華さじゃないだろうか。

「ね、ここだったら、気軽に親しく話せるでしょ?」

と言ってエリウスはにこにことわらった。



この笑顔には逆らえない。

私は抵抗するのをやめた。

「エリウス、どういうつもりなの?」

「どういうつもりって?」

「私とあなたは小さい頃から知り合いでしょ?

それにここ数年まともに話してないじゃない?

それで結婚とか想像できるの?」

「え、できるよ?」

「????」

こんなふうに何も周りを気にせず、身分を気にせずに話したのは5歳ぶりだった。

妃教育が始まってからはエリウスと会うには常に誰か付き添いがいて、

私の発言はすべてつつぬけになっていた。一度それでお父様に大目玉をくらったこともある。

それ以来、私は必要なことや社交辞令以外、エリウスと話さなくなっていた。



「やっと普通に話してくれたね。」

「ここ数年、ライナは僕と話したくなさそうだったから。」

「話したくないというか、話せない状況だったのわかるでしょ。」

「わかるよ〜わかるけど寂しかった僕の気持ちもわかってよ」

とエリウスは拗ねている。

「いや寂しいって、なにがよ」

「そりゃさびしいよ!小さい頃からずっと結婚相手と思って仲良くしてた女の子が、

ここ数年はずっとツンケンして他人みたいな話し方してるんだから」

「…」

「これからは昼休憩は1時間長くして、ここで過ごしていいって言われてるから。

お父様にここ数年ずっと掛け合ってこの時間をもらったんだ。お願い!

これまでの分夫婦になるために仲良くしよ!僕、ライナのいい夫になるように頑張りたいんだ。」

「…」



これはあれだ。

たぶん疲れすぎて起きながら夢を見ているのだ。この能天気マイペース王子様と私は本当に結婚するのだろうか。今にも頭が痛くて倒れそうなのを耐え、私はサロンから飛び出して、もといた部屋に駆け戻っていた。


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