第7話 撫ですぎです
水をおかわりしてから、お皿に残っていた骨付きチキンを食べきった。
だって、遠慮してたら逆に悪いもんね。
「ありがとうございました。お陰様でお腹一杯になりました。とっても美味しかったです。」
伝わらないかもしれないけど、前足を揃えて座りながら、大男さんの目を見て精一杯お礼を告げる。
すると、大男さんは恐る恐る私の頭を撫でた。
いいですよ。存分にお撫でなさい。
うまうま骨付きチキンのお礼です。
人の手で頭を撫でられるなんて、何年ぶりだろう?
前世は大人だったんだから、十数年ぶりかぁ~。
何だか、少し照れ臭いですね。
大男さんは私の頭を撫でながら、もう片方の手で顎の下も擽ってくる。
うひひ!
ちょっと、擽ったいです。
身を捩っても、大男さんの手は止まりません。
うわあ、いっぱい撫でるんですね。
「…あの、そろそろ止めてもらえますか?」
やんわり、拒否してみる。
それでも大男さんの撫でる手は止まりません。
うーん、何かムズムズするー!
「…長いっ!」
ぺしっ!ぺしっ!ぺしっ!
撫でる手を避けながら、その手に肉球パンチを連続でお見舞いする。ちゃんと、爪は引っ込めてありますよ。
「あぁ、悪い悪い。つい、可愛くてな。」
名残惜しそうに、私の頭を撫でて、最後に耳を擽ってから手を放した。
えへへ。そんなに可愛いですか?
わかります。猫ですもんね、私。
自分の姿はまだちゃんと見たことないけど、猫ですから。恐らく、多分、きっと可愛い筈です。
えへえへ照れ笑いする私と、優しい表情でそれを見ている大男さん、という構図がしばらく続く。
コンコン、ガチャ
「おーい、もうすぐ休憩終わるぞ。」
大男さんが返事をする前に誰かが部屋に入ってくる。
大男さんより少し背の低い金色に近い茶髪の男性だ。
私は、いきなりの知らない人の登場にびっくりして、慌てて大男さんの足元に駆け寄る。
その様子を見た大男さんは、不機嫌そうに今入ってきたばかりの男性に返事をする。
「おい。もう少し静かに入れないのか?こいつが怖がってるじゃないか。」
「ええ?こいつって…」
男性の視線がさまよい、大男さんの足元にいる私で止まる。
「わっ!?何だそれ!」
「それじゃない。猫だ。」
「え、猫かこれ?」
男性が猫らしき私をまじまじと見ながら言う。
「猫にしては、何か鈍臭そうだな。それに、初めて見る種類だ。」
ありがとうございました。