第5話 転生してた
注意事項には、転生先はランダムで決まり、指定出来ないことや、転生後の能力については転生前の手続きは不要(というか不可能)で先程管理人さんがしてくれた、願い事についての説明と同じことが書かれていた。
ここは本当に子供を助けて亡くなった人の願い事を叶えるためだけの部署みたい。
というか、それ以外の亡くなった人は本人確認と転生の同意書くらいで、すぐに転生するみたいだ。
ま、要約すると、転生する者には願い事という例外を除くと何も権利はないみたい。
変な話、不幸中の幸いっていうか、ラッキーだったのかな。いや、死んでラッキーも何もないんだけどね。
「大丈夫です。読み終わりました!」
書類を管理人さんに返す。
「はい。それでは、あちらにお進みください。」
管理人さんが部屋の端にある、「転生」と書かれたプレートが付いた扉に掌を向ける。
転生、ってまんまですやん。
「はい。ありがとうございました。」
無駄を省いた管理人さんの対応に、ますますお役所を感じながら、笑顔でその扉の方へと歩み出す。
「いってきます。」
思わず管理人さんにそう言う。
「いってらっしゃいませ。」
これまた管理人さんも、思わずといった風にそう返事をしてくれた。
そうこうしていると、あっという間に扉の前に辿り着く。
なんだかワクワクしてきた。
そういえば、転生したら記憶はなくなるんだよね。
だって、今世は前世の記憶とか無かったし。
ぐっ、とドアノブを掴んで気合いをいれる。
「頑張れよー!猫になった私!」
いざ行かん!
扉を開けて、一歩足を踏み出した。
ところで記憶が終わってるんですよね。前世の私の記憶。
ありがとうございました。
次のお話から、今世に戻ります。