第46話 他の精霊さん
「ほう、これが妖精なのか。はじめて見たぜ!」
「うん。ムールさんは大きな猫だから特別だって!」
ムールさんはきょとんとした後、大笑いする。
「ぐわははは。俺が猫かー!まさか猫精霊様が生まれた土地で妖精にそう言われるなんてな!光栄だぜ!それにしても、この土地の猫はスゲェんだな~。妖精と話せる猫なんてはじめて会うぜ!」
「いや~、それほどでも。」
ややこしくなりそうだから精霊なのは内緒にしておこう。でもムールさんが猫って言われて、嫌な気分にならなくてよかった。
「それにしてもムールさんは何でここにいるの?もうすぐサーカス始まっちゃうよ?」
ムールさんがいるということは、動物も芸をするタイプのサーカスなんだろう、と思って聞いてみる。
するとムールさんは少し気まずげに話し出した。
「あー、この街は精霊様が生まれた土地だから、人間達の信仰もあついだろ?そういう場所では、動物達はショーに出ないんだ。」
「何で?」
「人間達が嫌がるからな。動物が火の輪くぐったりするのが可哀想で見てられないっつてな。見られなかったらショーの意味ねぇーな!ぐわははは。それ以外の場所では俺達もでるんだぜ!」
「そうだったんだ。」
「俺はここの暮らしを気に入ってるぜ!ちゃちゃっとショーに出るだけで、豪華な飯が食えるしよ。色々な場所に行けるのも好きだからな!」
ぐわははは、と笑いながらムールさんが寝そべる。
「ああ、でも猿のテディは今日もでるんじゃねえかな。猿の場合は、精霊様がお許しになってるからよ。猿本人の意思に任せるってな。」
「ええ!お猿の精霊様?」
教会でちゃんと話を聞いてなかったので、猫とドラゴン以外の精霊を知らなかった。
ムールさんは不思議そうな顔をしている。
「精霊様が猿だけが暮らす都市を森に作って、そこの神殿にいらっしゃるってのは、結構有名な話だぜ?」
「そうなの!?知らなかったよー。だけど森って危ないんじゃなかったの?」
「精霊様が生まれた土地だから安全なんだろ。それはここだってそうだろ?だから精霊様が生まれた土地はどこも神殿か教会が建てられて、街として栄えてるんじゃねぇか。」
「そうだね。」
知らなかった!精霊誕生の地にそんな特典までついていたとは!
「ムールさんはお猿さんの街に行ったことあるの?」
「ぐわははは。あるわけねぇよ。あそこに入れるのは猿か教会関係者だけだ。テディがそこの出身だから、話を聞いたことがあるだけだぜ。」
「いつか行ってみたいなー。」
「いいな!オヴィくらい小さけりゃ、こっそり入れるかもだぜ!」
「だよね、だよね!」
「それはそうと、オヴィはサーカスを観に来たんじゃなかったのか?そろそろ始まる時間だろ?」
「わっ、もうそんな時間?ムールさんありがとう!またねー!」
「おお!公演は明日までだぜ。テントを片付けたりするのに2、3日かかるが、それが終わればまた別の街へ出発するからな!来るならその間に来るんだぞー?」
「わかったー!」
私は急いで会場へと向かう。
「オヴィはやくー」
「いそげいそげー」
妖精さん達は私の脇腹に掴まりながら、ケラケラと楽しそうにしている。
「ずるいよー!ただ乗りじゃんかー!」
「ただのりー」
「いけいけーオヴィー」
もういいや、かまってらんないよ!
テント内に急いで駆け込むと、すでに会場は満員だった。
アラン達は、端の方の席にかたまって座っている。
少し迷ったが、私はステージがよく見える正面の席に座ることにした。
階段状に組まれたベンチの裏側をつたって、一番上の座席の下に陣取ったところで会場が薄暗くなる。
ステージの中央にパッとスポットライトが当たる。そこには黒いシルクハットに燕尾服を着て、昔の音楽家みたいな髪型をした小太りのおじさんがおり、恭しく頭を下げた後、挨拶をはじめた。
「紳士、淑女の皆様本日はご来場ありがとうございます。私、団長のボボッドと申します。今宵も皆様に驚きと興奮に満ちたショーをご覧にいれましょう。ぜひともお楽しみください!」
そう告げ、暗転するとステージ上に上半身裸の男性達が数人現れる。その男性達の頭には動物の耳らしきものが生えていて、ズボンからは尻尾が出ている。
「え、え?この世界って獣人が存在するの?」
「いるいる」
「獣人いるよー」
そばにいた妖精さん達が私の疑問に答える。
「ええ!ちょっとー!もっと早く教えてよー!あぷっ。」
慌てて口もとに前足を当てる。
おおっと。興奮して大きな声を出しちゃった。こっそり観てるのがバレちゃう。まあいいや、とりあえず今はサーカスだ!
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