第26話 神様の子供
男の子は私をじっと見詰めている気がするが、構わず妖精達との話を続ける。
「昔ここに祠あったー」
「人間たちそれどこかに持っていったー」
むっとした顔をしながら、妖精たちが答える。
「何で持っていったんだろう?」
「知らなーい」
「中に飾ってあったの気に入ってたのにー」
「祠の中に何かあったの?」
「うん、精霊の人形ー」
「お気に入りー」
「精霊様の人形?私も見てみたかったな。どんなだったの?」
「こんなー」
「こんなー」
精霊の人形の見た目を尋ねただけなのに、妖精達から顔や体をつつかれる。
「ぐぅぅ、やめてよー。」
くすぐったさに身をよじる。
尚もつつき続けられ、だんだんとムッとしてくる。
「ちょっと、いい加減にしてっ!」
頭をブルブルと振って妖精達を弾き飛ばした。
「わー」
「わー」
「もうっ!」
ふんっと鼻息荒く地面に転がる妖精達を睥睨する。
「ひとをつつき回しちゃ駄目っ!わかった?」
「ごめんなさーい」
「ごめんなさーい」
しょんぼりする妖精達に、ちょっとキツく言い過ぎちゃったかな、とほんの少しだけ申し訳ない気持ちになる。
「そうだ!さっきのって、人形は猫の姿をしてたって意味なの?」
「ううん、君だよー」
「君と同じー」
「きみ?あ、まだ名前を言ってなかったよね。私、オヴィっていうの!」
「オヴィと同じー」
「ちっちゃい精霊と同じー」
いやいやまさかまさか。そんな訳がないのだけれど、一回ちゃんと聞いておこうかな。
「あのさ、もしかして私って精霊なの?」
くぅー、違ったらめちゃくちゃ恥ずかしいぞ?周りに誰もいなくてよかったー。
「えっ!?」
ガシャンっと物を落としたような音がする。
「そうだよ、オヴィは精霊ー」
「ちっちゃい精霊ー」
楽しそうに笑いながら、ふたりがくるくると宙を舞う。
ん?
音のした方を振り返るといつの間にか男の子が、すぐそばまで近寄って来ていた。男の子の背中の向こう側には、祭壇に寄り掛かって寝ている女の子が見える。
バッチリと男の子と目が合う。
ん?
「聞いてた?」
いやー、そんなこと在るわけないか、と思いつつもそばに立つ男の子を見上げる。
じっと男の子の様子を窺っていると、男の子はそっと目を逸らした。
うーん。あやしい。
掃除が済んだのだろう男の子は、寝ている女の子をおんぶしてから、掃除道具を持ってそそくさと孤児院の方へ走って帰っていった。
物凄くあやしい。
だが、今はこちらが重要だ!
妖精達に向き直る。
「どうしてふたりは私が精霊だと思うの?」
「妖精にはわかるのー」
「オヴィは神様の子供ー」
「違うよ。オヴィはかあさまの子供ですよ。」
「オヴィのかあさまも神様の子供ー」
「かあさまのかあさまも神様の子供ー」
むむむ。かあさまは神様の子供でオヴィはかあさまの子供。だけどかあさまは、かあさまのかあさまの子供でオヴィは神様の子供でもある。
……ぷしゅーー。
「へへ。よく分からないけど、オヴィは猫っぽい精霊ってことでオッケー?」
「おっけーおっけー」
「ちっちゃい精霊オヴィ、ここで寝ていくのー」
妖精達が祭壇の上で飛び回る。
「オッケーオッケー!おやすみなさーい!」
オヴィは深く考えることを放棄して、言われるがまま寝ることにした!
テッテレー!
オヴィはアホの子が1レベルアップした!
ってそんなスキル、あってたまるかー!
管理人さんめー!これって運が良いの?悪いの?もうっ!私はご飯と寝床のことだけ考えて生きていきたいんだからね!
お願いだから、平和な野良猫人生送らせてよね。
このとおり。
ごめん寝の体勢のまま祭壇の上で祈りながら、心地の良い光の中、眠りについた。
オヴィ、子猫だからって寝過ぎですな。
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