第2話 腹ぺこです
「や、やっと撒けたか。」
後ろを振り返りつつ、ぜえはあと息を整える。
後方の安全を確認し終えて、さて次は前方だ!と前を向くと、そこは見渡す限り野原だった。
「って、えーーーーーー!?な、何故、草だらけなの?木は?森は?」
と後ろ見れば、森。
あ、ここが森の終わりか。と1人納得する。
ん?森の終わり?
もりのおわり?
ということは、ここから先は森の外…
ワクワク
いやいや、駄目だ。駄目だよ。うん、駄目だよね。
…ワクワク
いやいや、約束、約束。かあさまとの約束。
でもなぁ、戻ったらまたツルツルに追いかけられるかもだし。
それに、森に居たってかあさまいないもんな。
ひとりぼっちだもんな。
…ぐすっ
「うう。涙じゃありません。目から鼻水が出ているだけです。」
なんとなく言い訳をして、前足で鼻水を拭く。
かあさまに会いたい。でも、もう会えないから、だから友達を作りに行く!寂しいの嫌だし。
それに、お腹も空いたし、安全な寝床だって欲しいし。
ごめんね、かあさま。約束を破ることになって。
でもね、私行ってみたいの。誰かと仲良くお話もしたい。
ごめんね。私、行きます!
女は度胸!
「うおおおおおおお」
5分後。
はぁはぁ。
疲れた。そういえば、全然走る必要なかった。
ゆっくり行こう。取り敢えず、この草だらけの場所を抜けるぞ!
えいえいおー!
…3日目の昼。
あ、あ、よ、ようやく草だらけの終わりだ。
お月様に2回も挨拶しちまったよ。へへっ。
ぐう~
「お腹減ったよう。ひもじいよう。うう。」
よろよろになりながらも辿り着いた野原の終わりには、端が見えないほどに大きな茶色い壁が聳え立っていた。
なんなら、二本足の生き物も立っていた。
「え、あれって、人間?ん、ニンゲンって何?」
疲労に霞む目を見開いた後、空腹が限界を迎えたのか、二本足の生き物を見たショックかは分からないが、ぱたりと倒れ意識を失った。
ありがとうございました。