Side M : 告られるかもしれない
哀れな中年男性が悩んでいた頃、海華は反省していた。
(……流石に、あの発言はやばかったかな?)
彼女が振り返っているのは、直前に先輩と行っていた会話である。
この心の声が本人に聞こえたならば「あの発言ってどれだ。全部やばかったぞ?」と首を傾げそうなところだが、彼女が気にしている発言は、ひとつだけである。
『今日一回で決めないとー、今後は、ずっと、私を養うために働くことになるかもですよ? ……私はそれでもいいですけど』
(……こんなのもうプロポーズじゃん!)
違う。
(……流石の先輩でも気付くよね?)
気付いていない。
(……私のバカ! まだ付き合ってもいないのに「一生養って」とか……そこに至るまでの過程をスキップするなんて勿体ないよ! まずは二人で下の名前を呼ぶところから始めて──)
割愛。
(……そういえば先輩、私なしの生活なんて考えられないって言ってたよね?)
審議。
『(前略)もう貴女なし(中略)なんて考えられない(後略)』
結論、言ってないこともない。
(……勢いで食事に誘わせちゃったけど……どうしよう! 私今日告られるかも!?)
それはない。
(……あーもー! まだ貯金足りないよ! 子供十人くらい欲しいのに!)
──こんな具合に、彼女は先輩のことが大好きなのである。
外見を変えたのも、漫画の中にしか存在しないような口調で話しているのも、先輩の好みを調査して、それに合わせた結果である。ひとつ残念だったのは、調査に大きな誤りがあったことだ。
一応、友人から指摘を受けたことがある。
「そのキャラで落ちる人って、それはどうなの?」
至極まっとうな質問。これに対する海華の回答は、こうである。
「三十年以上も生きて一度も彼女できない人が、普通の恋愛できるわけないじゃん」
この言葉に妙な説得力を感じてしまった友人は、それ以上は何も言わなかった。
その結果、海華は茨の道を進むことになったのである。
(……今日の夜、楽しみだな)
彼女の想いが伝わるのが先か。
それとも先輩が我慢の限界を迎えるのが先か。
それはまだ、誰にも分からない。
(……作戦を考えよう)
ただひとつ明らかなのは、彼女の気持ちである。
きっかけはまた別の機会に語るとして、彼女は今、初恋をしている。
それが最初で最後の恋になるのか。
それとも苦くて酸っぱい過去に変わるのか。
これはきっと、その行く末を見守る物語である。
こういうの好き!
続きも読みたい!
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