三日目
葉っぱの上で俺は目を覚ました。
隣には昨日倒した蛇が残っていて、そろそろ空腹の限界を迎えてきている俺を刺激してきている。
「そろそろ、火を起こさないとな......」
俺は火を起こすための道具を探すため、砂浜を散策し始めた。
もしかしたら漂流してきたプラスチックや、電子機械などがあるかもしれないからだ。
うろ覚えで経験もないが、確か火を起こすには様々な方法がある。
まず、木と木を擦った摩擦で火を起こす方法だ。
もっとも単純な作業で火を起こすことができるが、その反面粘り強く擦り続ける必要がある。
もう一つは、電子機器を使ったショートで火を起こす方法だが......
浜辺に乾電池でも落ちていない限り、それで火を起こすのは難しいだろう。
砂浜には全くと言っていいほどゴミがなかった。
一つや二つはゴミが流れてくると思っていたが、ゴミが流れてこないほどこの周囲は手がついていないのだろう。
俺は浜辺の散策を切り上げ、森の中に入った。
火を起こすために必要な棒や火口、薪を調達するためだ。
やはり森の中は薄暗かった。
真昼とはいえ木の葉が遮っているため、日の光を感じるのはわずかだ。
さくさくと枯葉を踏みながら歩き続けて、火を起こせそうな木の棒を二本見つけることができた。
「あとは火口と薪か......」
リュックにその二本の木の棒を突っ込み、森の散策を続けた。
あの後三十分ほど歩き、ようやく火を起こせそうな材料を集めることができた。
まだ火を起こせる確証があるわけではないが、挑戦してみることにした。
「まずは削るか......」
俺は最初に拾った木の棒をナイフで削り、片方をとがらせ、もう片方は表面のみを削った。
本当にこれでできるのかわからないけれど、俺は座り込み、棒同士をこすり始めた。
擦り続けて一時間が経過した。
俺のやり方が間違っているのか、一向に火が起きそうな予感がしない。
棒は削れていく一方で、俺の体力もなくなりそうになっていた。
「これでだめだったら、別の方法を試そう......」
しばらく何も食べていないからか、目の前はくらくらとしていた。
俺は再び棒を削り、こすり始めた。
そしてに十分ほどたったころ、ついに削っていたところから赤い光が見えた。
――付いた!――
俺は感動することもほどほどに、火種を火口に移して持ち上げる。
空気が入り込みやすいように少し広げたのち、俺は火口に向かって息を吹きかけた。
一回、二回、三回と息を吹きかけてようやく、その火口から大きな炎が出てきた。
「できた、ってあっつ!!」
手が焼け落ちてしまいそうなほどのその炎は、俺に生きる希望と達成感を与えてくれた。
俺は火口を木の葉の上に置き、薪を置いていく。
小さいものからだんだん大きいものをよく見る形に置いていくと、炎はどんどんと大きくなっていった。
「ようやく、飯にありつける......」
俺は燃え上がっているその焚火に、昨日手に入れた蛇を入れた。
そして焼きあがるまで、砂の上に寝転がった。
東から吹き付けてくる風が、俺の体をひんやりと冷ましてくれたような気がした。
だんだんと肉の焼けるいい匂いがしてきたので、俺は起き上がって焚火を見てみた。
蛇は食べごろくらいの焼き加減になっていて、煙とともに食欲をそそるにおいを俺の鼻に通らせていた。
近くにあった棒で蛇を取り出し、熱々のまま手でつかむ。
焼きたての熱さなど、空腹を前にしてどうでもよくなった。
「いただきます。」
大きく口を開け、蛇にかじりつく。
「うまい......!!」
さっぱりとしたたんぱくな味だが、コリコリとした食感が楽しく、俺は続けて二口食べた。
途中で硬い骨に当たったが、それを気にしないほどには蛇の肉がおいしかった。
気づけば夢中で食べ続け、完食してしまった。
「ごちそうさまでした。」
骨のみが残った蛇の前で手を合わせて、俺は感謝した。
これでまた、一歩先に進むことができる。
夜になっても、火の勢いはそのままだった。
俺はそれをぼーっと眺めながら、明日は何をしようか考えていた。
「今日は、星が見えないな......」
真っ黒な空を見てさみしくなったが、景色を見るのも早々に、俺は疲れた体を休ませるために眠りについた。
東向きの風は、まだ止んでいなかった。