一日目
真夏の燃えるような暑さの中、俺は家でネットサーフィンをしていた。
海に近い家だから、ほんとにサーフィンするのも悪くないが、あいにく道具がない。
汗を流しながらぼーっと携帯を見ていると、突然電話がかかってきて、俺は携帯を顔面に落とした。
「っ......もしもし。」
「よ、暑いし暇だからさ、海釣りいかね?」
かけてきたのは友達だった。
そいつとはは中学からの仲だが、俺の中では親友と呼ぶほどでもない。
そしてこの暑さの中で動きたくないが、次のそいつの一言で動こうと思った。
「金は俺が出すからさ、頼むよ~拓弥」
挨拶が遅れたが俺の名前は伊佐美 拓弥だ。
そして電話をかけてきた友達は田中 夏、いかにも真夏を生きるような男だ。
一言、了承の言葉を発した後、俺は電話を切って海釣りに行く準備を始めた。
家から出て家の中と気温が変わらないことにうんざりしながら、俺は夏との待ち合わせ場所である船着き場に向かって歩き始めた。
俺の住んでるところは歩いてすぐのところが海なので、泳ごうと思えばすぐに泳ぐことができる。
が、しかし......この暑さで動くことにためらっていた。
歩き始めて十分ほどで、船着き場に到着したが、まだ夏の姿は見えない。
「自分で呼んだくせに、なんだよ......」
呼び出した俺よりも遅い夏にイライラしながら、俺は再び携帯をいじり始める。
様々なSNSを行ったり来たりして時間をつぶしてさらに十分たったころ、ようやく夏が船着き場に到着した。
「ごめん!準備してたら遅れた!」
「準備しとけよ、暑いわ。」
いかにも走ってきたように息を切らし、肩に大きなバッグを背負ってきた夏は、肌が茶色に焼けていた。
――俺よりも重装備じゃねぇか。
海釣りに必要な最低限の荷物しか持ってきてない俺と比べたら、やる気ががぜん違った。
「まぁいいや、早速行こうぜ。」
俺たちは手続きを済ませ、海釣りを始めた。
「いや~海は涼しいな~!」
お互い釣り糸を垂らしてしばらくたったころ、夏が話しかけてきた。
確かに家にいた時よりも涼しいが、直射日光がまぶしかった。
「まぁ、眩しいけど。」
「今日は大物が釣れたりしてな、ごちそうだぜ~!」
期待大で挑んでいるのはいいことだが、まだお互いの釣り糸に変化はない。
眠くなってうとうとしてきたころ、ようやく俺の釣り糸が引っ張られた。
「来た!強い!」
思っていたよりも強い引きに驚いたが、うまく魚を釣り上げることができた。
釣れた魚は......
「カンパチじゃねえか!いいなぁ。」
なかなか大きいカンパチだった。
俺は持ってきた折り畳みナイフでカンパチをさばき始める。
「おいおい、せっかちだな。」
「今日は朝から何も食ってないんだよ。」
慣れた手つきで刺身にして、俺はそのまま口に運んだ。
釣れたての新鮮な味が口に広がり、今日海釣りに来てよかったと思わせてくれた。
そしてまた釣り糸を垂らそうとしたとき、夏の釣り糸が揺れた――
いや、船が揺れた。
「なんだ!?」
近くの柱につかまろうとするも、俺はつかむことができず、床に頭を強く打ち付けて気を失ってしまった。
「拓弥!」
意識が切れる直前、夏の声が聞こえたが、反応はできなかった。
「ん......ここは......?」
目を覚ました時、俺は砂浜の上でうつぶせになっていた。
辺りは真っ暗になっていて、よく見えない。
「そうだ、夏......でも、こんなくらいと見つからないか。」
夏を探すこと、ここがどこか確認するのは明日にして、俺は砂浜に身を預けた。
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