94話 ピィナの卵
コッケコッコォォォーーーーーー!!!!!
「うわぁぁぁぁぁぁ!! うっせぇぇーー!!」
今日も今日とてピィナの鳴き声で目を覚ます僕。
ていうか、今日はなんだかすごくうるさかったような……
「あ! やっとおきた! レンお兄ちゃん!」
僕を呼ぶ声がして横を見ると、ピィナがニワトリ状態で立っていた。
「揺らしても揺らしても起きないから耳もとでないたんだよ!」
まじか……どうりで頭がキンキンするわけだ……大丈夫だよね? 鼓膜破れてたりしないよね?
「それで、どうしてこんなところでないてたんだよー……まじ耳痛い」
「ん? レンお兄ちゃんを起こしにだよ?」
「いや、だからなんで僕を起こしに来たの?」
「んーー、なんでだっけ? 忘れちゃった! でも、なんか大変なことが起きたの!!」
そうだった、このニワトリ馬鹿だった、3歩歩くと忘れるんだ。
「大変なこと? どこで??」
「えーと、えーと、ピィナが寝てるところ!」
ふむ、ピィナの言ってることはよく分からないな……あぁ、でもとにかくピィナの寝てるところで何かがあって慌てているということはわかった。
だって、羽をパタパタすごい慌てようだし。
「んー、わかったよー、ピィナの部屋行くね」
僕は着替えてピィナの部屋に向かおうとする。
「あ、まって! 今日ピィナ、自分の部屋で寝てなかったかも」
「かもって要領得ないなー、まぁじゃあ天空庭園から見てみるか」
ピィナは擬人化状態の時は宛てがわれた部屋で寝ているが、ほとんどはニワトリ状態で空中庭園で寝ていることが多い。
だから、普段ピィナの声が早朝に響くんだよね。
僕は行き先をピィナの部屋から空中庭園に変更、エレベーターに乗っかる。
そして、やってきた空中庭園で僕は絶句してしまった。
「あ、そうだった! レン! 朝産んじゃったの!」
「な、な、な……なんじゃこりゃぁぁぁーー!!!」
僕の前には今、一軒家にちょうどピッタリ入るくらいの超超超ビッグ卵がある。
もう、ダチョウの卵何個分くらいなのかも分からない……
というか、そっかー……ピィナ、こんな成りしてるけど飛んだり喋ったりしても根本的なところはニワトリだもんね、卵くらい産むかー。
まぁ、それにしても大きすぎる気がするけど……
とりあえず、みんなを呼ぼう。
僕ひとりじゃ処理できる範囲を超えているよー。
僕は華憐に電話をしてすぐにみんなを連れて空中庭園に来るように伝えた。
何気に異世界にきて初電話!! まさかそれがこんなことを報告するために使うことになるとは……
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「れ、蓮くん……なにこれ?」
「卵です」
「こ、こんな大きいのに?」
「卵です」
「さすがピィナさんです……」
「こんな大きな卵初めて見るわね……」
「ドラゴンでもこんな大きな卵産まないよ……」
みんなは予想どうりお口を大きく開けて卵の大きさに恐れおののいていた。
ドラゴンの卵も大きそうだなぁー。
「それで、この卵一体どうしようと思って、さすがに捨てるとかは出来ないし」
「確かに、でも食べるとしても何にするの?」
「マヨネーズを作りましょう!」
「その前にどうやって割るのよ」
あー、確かに。
クルアの言う通り割るのも一苦労だな……
これでマヨネーズ作ったら湖埋めるくらいのマヨネーズ量になっちゃうよ。
料理の天才ならなにかできるかな?
「オリアはなにか活用法ある?」
「ふむ………全部食べきることは難しいと思うので保存出来るマヨネーズは結構現実的だと思います」
「オリアさん……マヨラーの心得が分かってきましたね!」
「いえ、私はマヨラーではないです」
んー、確かに思いつく限りの卵料理を作っても食べきれなくなるか使い切れないってことになるかもなぁー。
そもそも、まずどうやって割ろうかな……料理するにしても調理器具がない。
「レンお兄ちゃん、なにか食べ物作るならピィナ、この前辛いの沢山食べたから甘いの食べたい!」
ふむ、ピィナは甘いものが食べたいと……ピィナが食べるなら残ることはなさそうだな。
甘いもの……甘いものねぇ。
「蓮くん、なにか思いついたの?」
「まぁ、一応……プリン作ってみようかなって」
甘いものと聞いて思い浮かんだのがプリンだった、バケツプリンとかもあるし多少大きくなってもできるんじゃないかな?
「プリン?! いいじゃん!! 私も久しぶりに食べたい!!」
「レンお兄ちゃん、それ甘いの?」
「そりゃー、甘いぞー、砂糖をたくさん使うからね!」
そういうとピィナの顔はパァって明るくなって
「ピィナ、それたべたい!」
まぁ、ピィナの卵だからなー、ピィナの意見を通すか。
「いいぞー、その代わり手伝ってね! 目先の問題としてはまず入れ物だ、とりあえずシロ様よんででーーーっかい土鍋を作ってもらおう」
シロ様もでっかい土鍋ならご飯炊くのにも活用できるし作ってくれるだろう。
「プリン、可愛い名前ですね!」
「美味しそうね」
「ふっ、未知の領域へ挑む試練……受けて立とう」
みんなも賛成かな? ルカはたぶん、あたらしい料理を食べるのは楽しみ! って言ってるんだろうな。
「よし! じゃあ、今日はプリンパーティーだー!」
「「「「「おおーーー!!!」」」」」
なんだか、毎日パーティーしてる気がするけど、まぁ楽しいからいいよね!
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プリンを作ることにした僕達はとりあえず、卵を下に下ろすことにした。
卵を空が飛べる人達で協力して運んでもらう。
これだけでかなり一苦労だ。
次にオリアに大量の砂糖を持ってくるように頼んで、シロ様に土鍋を作ってもらった。
超でっかいのをって頼んだら、地獄の釜みたいな大きさの土鍋を四個作ってくれた。
一つをカラメル作り、一つを卵を溶くよう、二つをプリンを作るようにする。
カラメル作りは華憐とオリアとルカに任せることにした。
いくら不器用の華憐でもオリアと一緒なら焦がしたりはしないでしょ。
僕は卵を溶く係、だからまず卵を割らなきゃならないのだがここで問題発生。
卵の殻が硬すぎて割れない。
「くそー、なんなんだこの卵、叩いても殴っても割れないなんて……」
「うぅ……手がジンジンします……」
「本当に頭が痛くなるような卵ね」
本当だな、割ることにこんなに苦労するとわ。
「レン兄ちゃーーん、いくぞぉーーー!!」
「おーー! やっちまぇーーー!」
僕はどう割ろうか考えた結果、コロッケたちに攻城槌で突撃してもらうことにした。
え? ぐしゃぐしゃにならないかって? ならないよたぶん。
「「「おぉぉぉおおおおーー!!!」」」
コロッケ達が丸太を持って突っ込んでくる……攻城〇ー〇リアンを思い出すな……
カゴォォォーーーン!!
「「「いってえぇぇぇぇーー!!」」」
突っ込んだコロッケたちは跳ね返されていた。
恐るべしピィナの卵……
しょうがない、なんか卵割るのに使うのは気が引けるけどやるか。
僕は卵のうえに乗って、卵の頂点に拳を振りかざす。
「『神気解放:才気活発』!! とりゃぁぁぁぁーーー!!!」
そして、神気解放して思いっきりぶん殴る!
ピキィッ!! (ピキィッ!!)
「っ!! いったぁぁぁーー!!」
「ちょっ、レン?! ルカ!! ルカ来てーー!」
果たして卵の殻は上から下までしっかりとヒビが入った、そして僕の拳にもヒビが入った。
攻城槌で割れなくても所詮たまごだろーって侮ってたよ、これは凶器だ……
それから治癒魔法のスペシャリスト、ルカさんに拳を治してもらって卵を割った。
中から出てきた黄身は二つだった。
「おっ! 蓮くん割れたんだね! きみが二個なんてありがたい!!」
「華憐よ、ありがたくなんかないよ……これ割るのにどれだけ苦労したか……」
「そっかー、カラメルも大変だよー! 足滑らせて中に落ちちゃった時なんて、もうベットベトで……」
ほんとだ、華憐から心做しか甘い香りがするし、所々ベトベトしてる。
ていうか、なぜ落ちる……さすが不器用の天才。
殻を割ってからは中身は普通の卵だったからすごく楽だった。
やはり魔法は偉大だ!
かき混ぜるのに泡立て器やミキサーなどいらない! クルアがいれば十分だ!
僕も風魔法でかき混ぜようと思ったんだけど、こういう細かい魔力調整はやっぱりクルアの方が得意で、僕がやったら飛び跳ねたりしてよくなかった。
まだまだ精進しなきゃな。
かき混ぜ終わったらあとは普通のプリンの作り方と同じで、砂糖入れてバニラエッセンス入れて牛乳を入れてかき混ぜる。
牛乳は牛なんていないしどうすっかなーって思ってたけど、牛いた。
精霊牛のこなすがミルクを出してくれた。
一応今回は何とかなったけど、牛を飼うことを今後の目標にしよう。
そして、かき混ぜ終わったらあとは蒸して冷やして固めるだけなんたけどこれが殻を割るのことの次くらいに大変だった。
こんな大きなものを冷蔵倉庫に入れられないから僕、クルア、ルカ、クロウ、コロネ、マリア、アラティたち悪魔族の魔法を使える組で順番に魔法で冷やしていくことにした。
神気と魔力を微弱で長時間使い続けるなんてことをしたせいで精神がすり減って廃人みたいになったけどなんとか続けられた。
そして、夕食を食べ終わって、ピィナと折り鶴たちに空中庭園へ運んでもらってデザートとしてプリンパーティーが始まった。




