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85話 ルカさんを慰めよう!華憐&蓮

 


「カレン様、そんな格好で一体どうしたんですか?」


「ちっちっち……ミーナ、甘いよ、こういう時は『誰だオマエは!』って言わなきゃ」


 華憐が指を振って、口を鳴らす。


 うーーん、普通にウザイ。


 というか、『誰だオマエは!』って言ってもらいたいのが分かってしまった。


 もう割と長いこと一緒にいるしね。


 話進まなそうだから言ってあげよ。


「誰だオマエは?!」


 言ってあげると華憐はニヤリと笑って、


「アタシ? アタシはルカさんの担任の先生だ!」


 あー、今のセリフと、出てきた時のセリフと格好で分かったや。


 華憐は今は赤いジャージに、丸メガネに、髪の毛を二つ結びにしている。


 うん、ヤ〇クミだ。


 ご〇せんのヤ〇クミだよこれ。


 3年B組華憐先生もGTK〜グレートティーチャー華憐〜も反対されたからご〇せんできたのか、あんまり変わらなくね?


 しかも、僕達が敵不良グループの役やらされてるし。


「なぁ、華憐さんや本当にヤンキー教師で行くの?」


「これなら絶対に立ち直れるよ!! 私、このドラマ見てすっごい感動したもん! 漫画ダウンロードしてあるし」


 あ、まじかよ、こいつアニメだけじゃなく漫画までダウンロードしてたのか……量やばそ……


「やっぱり、考え直そうよ、ああいうのはさ、こうドラマがあってそれを知ってるからこそ感動するのであって、全く知らない人にやっても感動薄いから」


「大丈夫だよ、蓮くん! じゃあ、見ててね!」


「ああ、ばかばか、絶対無理だから!」


 華憐は僕の静止も聞かず、ルカさんの部屋へ意気揚々と踏み込んでいった。





 ………………………………………………………………





「またあなた達ですか、私のことはいいですからほっておいてください」


 ルカさんは部屋に入ってきた華憐をチラリとみてから拒絶の言葉を言った。


 華憐はすっと息を吸うと、瞬間表情がかわった。


「はぁ、何逃げてるんだよ」


 いつも思うけど、華憐って演技は上手いよなぁー


「逃げてばかりの奴にな……手を貸してくれるほど……、世の中そんなに甘くねぇんだよ!」


 すごいなぁー、華憐の周りだけなんかドラマが見える。


 セリフがすごく重く感じられて、ついつい吸い込まれそうになる。


「そんなこと、あなたに言われなくたってわかってるわよ……」


「じゃあ、なんでお前はいつまでもこんななんだよ……そんなんじゃな……いつまで経ってもお前は弱虫のままなんだよ……!」


「………………………」


 ルカさんは華憐の言葉を聞いて俯いてしまった。


 あれ? 意外と効いてる?


 僕達はその様子を息を飲んで見ている。


「お前みたいなやつを見てるとな……私はむちゃくちゃ腹が立つんだよ……! みんな色々あったってちゃんと前向きに生きてんだよ……!」


「………………………」


 僕は華憐の言葉が自分に向けられてるものだと錯覚しそうになる。


「誰だってな……ずっと順風満帆で行ける人間なんていやしないんだよ……自分で挫折を乗り越える力がなかったら、転んで躓いただけで人生終わっちゃうんだよ……!」


「…………………………」


 僕はまだ、ゆいりのことを乗り越えてないから……


 ふと隣を見ると、ミーナが泣いてた、クルアも涙は出てないが目が涙ぐんでる。


 それくらい華憐の演技はすごい、まるで女優みたいで……もしかしたらいけるんじゃないか?


「やなことがあったとき逃げたくなるのは皆同じなんだよ……でも、そこで逃げたら終わりじゃないのか……?」


「あ……に……」


 ルカさんの口が少し動いた、けど何を言ったのか聞き取れない。


「やなめにあったって……自分の力で立ち上がって行くことが……生きてくってことじゃねぇのか……?」


「あなたにっ……」


 こんどははっきりと聞こえた。


 けれど、華憐には聞こえなかったみたいで、


「お前には、その力が……」


 ドォン!!


 華憐が再びセリフを言おうとした時、ルカさんが壁を思いっきり叩いた。


「あなたに! 私のなにがわかるっていうの?! 」


「っ!」


 ルカさんが怒鳴り散らす。


 僕はまずいと思った。


「神気を奪われて堕天して……天使族の尊厳を奪われて……さらには、女としての尊厳さえも奪われた私のなにがわかるっていうの?!」


「………………」


 こんどは華憐が黙る番だった。


「もう……放っておいてよ……」


 これは少し時間を置くべきだろう。


 そう思った僕は、華憐を呼びに行った。


「華憐、今は……」


「うん、わかった、ルカさん……ごめんなさい」


 華憐と僕はぺこりと頭を下げて退出する。


「マールちゃん、ごめんね……お姉さんをどうにもしてあげられなくて……」


 たぶん、ルカさんの叫び声が聞こえたんだろう、いつの間にか扉のところにマールちゃんがいた。


「いえ、カレンさんのせいじゃないです、気にしないでください、私はお姉ちゃんの所にいますね」


 そう言って、ルカさんの部屋に入っていく。


「カレン様、カレン様の言葉は私たちにはすごく響きましたよ」


「そうよ、だからそんな落ち込まないで」


「うん、ありがと……ミーナ、クルア」


 落ち込気味の華憐に励ましの言葉を送るミーナとクルア。


 そのまま、次は僕の番だね! って空気でもなくなって、最初に話し合いをした食堂にもどってきた。


「蓮くん、どうするの?」


「とりあえず、時間が必要だと思うから夜まで待とうと思う」


 一応僕にはこれはどうだろう、という考えはある。


「次はレン様がなにかするんですか?」


「そういうこと、本当は夏の終わりにやろうと思ってたことなんだけどね」


「一体何をするのよ」


「まずは、クルアやマールちゃんとか魔法を使える人を集めて、僕が作った魔法を夜までに覚えて欲しい、今回は華憐も魔法を使っていいよ、最初と最後にでかいのを最大魔力量で打って欲しいんだ、それで……」


 僕は考えたことをみんなに伝える。


「なるほど、確かにそれならもしかしたら……」


「どういう魔法なのかイマイチわからないけどたぶんすごいのよね?」


「ああ、これだよ」


 僕はスマホでその写真を見せる。


「わぁ! レン様、美しいですね!」


「でしょ! ミーナは魔法が使えない人を天空庭園に集めておいて」


「はい! みんなにも見てもらいたいですしね!」


「じゃあ、準備開始だ!」


 僕の計画を実行するためにまずは、クルアに魔法を教えて、クルアは僕がおしえた魔法を他にも魔法が使える、天使族と悪魔族の人達に教える。


 ミーナはお鶴たちやザリュさんたちに夜に天空庭園に集まるように言って回っていた。


 華憐はハナと大トリを任せたからどんなのにしようかブツブツと悩み始めた。


 僕はクルアに魔法を教えてからはオリアとキッチンに立って夏祭りの屋台で出るような料理を作りまくった。


 焼き鳥、焼きトウモロコシ、魔法で作った氷を削ったかき氷に、装置を作るのに時間がかかったわたあめ、お好み焼きにベビーカステラなどなど


 思いつく限りの、屋台料理を作って、エルフに急遽頼んで作ってもらった、大きなテーブルを折り鶴たちに天空庭園まで運んでもらって、そこに並べる。


 そうして夕方に差し掛かった頃、小さな夏祭りが開始された。




 ………………………………………………………………




「さて、そろそろ時間かな、華憐とクルア、そっちは任せたよ!」


「任せて! 蓮くん! すっごいのを期待しててね!」


「魔法の天才の先祖返りの吸血鬼がやるのよ、レンの方こそ失敗しないでよね」


「あはは、がんばるよ!」


 僕は華憐とクルアと別れて、ルカさんの部屋に向かう。


「ちょっと、マール!!」


「お姉ちゃん、じっとしてて! この服羽根が難しいんだから!」


 ルカさんの部屋からマールちゃんとルカさんの声がする。


 僕はコンコンとドアを叩いた。


「レンさん、大丈夫ですよ!」


 マールちゃんから返事があったので、ドアを開けると、浴衣を着たルカさんとマールちゃんがいた。


 華憐が夏祭りなら浴衣でしょう! って言って、元々折り鶴たちは浴衣を着てたからそれを量産してみんなの分を作った、もちろん僕も着ている。


「うん! ルカさんも似合ってるじゃん! マールちゃんも可愛いよ!」


「えへへ、ありがとうございます! お姉ちゃんのことよろしくお願いしますね!」


 マールちゃんは退出して華憐たちのところに向かう。


「また……もう、放っておいてって言ったじゃない、いい加減にしてよ……」


 まぁ、こんな短時間でなにか変わったりはしないか。


「ルカさんと話がしたくて、それと見せたいものも」


「じゃあ、話たらもうほっといて、自殺しようとしても止めたりしないで……」


 実は華憐を拒絶したあと、5回くらい自殺しようとして止められてた。


「はぁ、わかった」


「それで、なに……?」


「とりあえず、場所を移動しよう」


 僕はルカさんの手をとって部屋の外に出そうとすると


「いやっ!」


 パシッと手を叩かれた。


「その……髪とか羽根とか人に見られたくない……」


 あぁ、そっか、堕天しちゃった色なんだもんね。


「うーーーん、あ! そうだ!」


 ここら辺の気候は昼間は死ぬほど暑いが、夜とか日が沈むと涼しいくらいで、寒がりの僕からしたら割と寒いくらい、だから夜と明朝はいつもお鶴さんに作ってもらった、フード付きパーカーを羽織ってる。


 僕はそのフード付きパーカーをルカさんに羽織らせる。


 浴衣にパーカーってなんか似合わないけど、仕方ない、ルカさんの長い髪はまとめてお団子みたいになってるから隠れる。


「はい! これで見えないよ! それじゃあ展望台に行こう!」


「……………」


 僕はルカさんの手を取って展望台に向かう、ルカさんは黙って着いてきてくれた。


 一応展望台だ、高い。


 もし油断してルカさんが身投げとかしないようルカさんの前に立つ。


 僕はルカさんに質問をする。


「ねぇ、ルカさん、堕天って天使族にとってどういうことなの?」


 僕はそれがずっと、僕や華憐たちとの認識とズレてるとも思ってた、たぶん僕達が軽く見ている、だから天使族にとってどういう事なのか知りたかった。


「………天使族にとって、堕天は破滅の象徴、扱いは悪魔と同じで滅ぼされる存在」


 ふむ、つまり、エルフの忌み子みたいな感じかな?


「………そして、私は『熾天使(セラフィス)』の階級、絶対に堕天なんてしてはいけない……けど、してしまった……だから、天使族の国に見つかれば殺される……」


 ふむふむ、つまり堕天を治せばいいのでは?


「その、堕天を治す方法はないの?」


「………ある……あるけど、女の尊厳まで悪魔に踏みねじられた私には、絶対にできない……」


「その方法って?」


「………粘膜接触で神気を流してもらうこと」


 おいおい、粘膜接触って……あ、だからデモゴルゴンは触手で粘膜から奪ってたわけか。


「でも……悪魔に身体を汚された私に、そんなことをしてくれる天使族はいないし、マールたちだと神気量が少なすぎてそもそも譲渡ができない……」


 つまり、神気量が多い人が必要と………いるな、ここに。


 それに、僕は別に悪魔にとかどうとかこうとか気にしてない。


 だから、あとは僕の覚悟だけか。


「………だから、もう私はいきている意味なんてないの、どうせ国に見つかれば殺される、それならいっそ……」


 僕は、続きの言葉を言わせたくなくてルカさんの唇を塞いだ。


 その時、後ろでドォォォーーンって音と、パチパチパチと言う音が聞こえてきたから、たぶん華憐が全力の花火を打ち上げたんだろう。


(『神気解放』)


 僕は、キスをしてるから声が出せないけど、神気解放をしてルカさんに全力で全神気を一気に流し込む。


 ここまで全て同時に起こった。


 僕の神気はどんどんルカさんに流れていって、赤金色のオーラが吹き乱れ、ルカさんを包んでいく。


 そして、フード付きパーカーがふさっと地面に落ち、その下に隠れていた漆黒よりも黒かった髪はだんだんと美しく輝く翡翠色になっていき、同じく真っ黒だった羽根はどんどん純白になっていった。


 だが、それも途中止まりで、翡翠色の髪は前髪のひと房だけ紫色で、羽根も片翼だけ紫色になったままだった。


 僕は、神気が足りないのかと思って、さらに流したが、全神気流し終えても色が変わることがなかった。


 僕が顔を離すと、驚いて目を見開いてるルカさんがいた。



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