84話 ルカさんを慰めよう!ミーナ&クルア
ルカさんが目を覚ましてから数日がたった。
プールは一応完成した、綺麗な50メートルプールをミライアたち人間族やアラティたち悪魔族とも一緒に作った。
けど、水入れてない、というか、日に日に暑さはましているがとてもプールで泳ぐという気分にはなれない。
なぜなら、ルカさんが起きてからずっと負のオーラを振りまいているから。
目を覚ました日にクルアに止められてからもうずっと塞ぎ込んでしまってる。
一応、会話はできるが声に張りや抑揚がなくこの世の終わりのような顔をしてる。
ルカさんの部屋だけ空気が重くて誰も近寄りたがらないし。
この数日間、首を吊ろうとしたの7回、身を投げ出そうとしたの12回、ナイフで自分を刺そうとしたのが20回と計39回も自殺しようとしていた。
その都度みつけた人が必死に止めている状況。
それも仕方が無いと思う……それくらいデモゴルゴンにやられたことは重いことだ、特に女性にとってはレイプなんて本当に死にたくなるくらい嫌だろうし。
それでもやっぱり自殺は良くない、そこで……
「ここに、ルカさんを慰めようの会を開催する!!」
ルカさんを慰めようの会は名前の通りルカさんを慰めて自殺をやめさせよう! という会である。
会員は僕と華憐、ミーナとクルアでアドバイザー兼ルカさんの監視役に天使族。
「さて、問題のルカさんだけど、そろそろ見ていられなくなったと思わない?」
「確かに……私が見た時なんてムンクの叫びになってたもん」
「私が見た時はレン様を奪われた時の私のような顔してました」
「私が見た時はワイバーンが卵を奪われてたような顔してたわね」
うーーーん、ミーナとクルアの例えが分かりにくいんだけど、とにかく絶望してたって事だよね?
「それで、本格的に立ち直らせようと思うんだけど、なにかいい案はない?」
「アニメを見せる!」
「マヨネーズを食べる!」
「レンの血を飲む!」
「却下!!」
「なんでよ! アニメの世界に入れば嫌なことなんて忘れられるよ!」
「レン様! マヨネーズは正義です!!」
「レンの血を飲めばいつどんな時でも元気になれるわ!」
なんてまとまりのない人達なんだ……
アニメなんて、こっの世界の人じゃ分からないし、マヨネーズと血で復活するなんてミーナとクルアだけだろう。
結局あーだこーだ言い合って、みんなそれぞれの方法で慰めることになった、本当になんてまとまりのないことだろう……
「じゃあ、私からいってきてもいい?」
「ん? なにかアニメ以外のいい方法があるの?」
「うん! 3年B組華憐先生か、GTK……グレートティーチャー華憐でいこうと思うんだけどどっちがいいと思う?」
古い! 古いよ華憐!! 華憐高校生だよね?! 僕名前知ってるだけでどんな慰め方するのか分からないんだけど!
「うん、華憐、両方ともやめとこう? 絶対分からないから!」
「うーーん、わかった」
「なら私がいってきてもいいですか?」
ミーナが手を挙げた。
「なにするの?」
華憐に影響を受けてるミーナはちょっと心配だなぁ〜
「私、今まで披露することがなかったですけど歌が得意なんです、なので歌を歌いたいと思います!」
なるほどー、確かに歌には元気が出る歌とかあるしね。
それに、スマホが使えるようになって僕がたまに音楽流して一緒に歌った時とかすごいうまくて驚いたし。
「いいんじゃない? ミーナすごい歌うまいしね」
「はい! レン様スマホ貸してください、音源として使いたいです」
「いいよー」
僕はスマホの音楽ダウンロードアプリを開いてミーナに貸して、ミーナはルカさんの部屋に向かった。
まずはミーナが一番手だ。
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「ルカさん! 元気を出してください!」
「無理、私はもう生きてたくないの、ほっておいてよ……」
ミーナがまずは一応言葉で慰めてる。
けど、やっぱりあんまり効果はなさそう。
僕達は部屋には入らず扉から中を覗いてる、邪魔しないようにね!
「そんなこと出来ません! 元一国の王女として、いえ一人のエルフとして、自殺しようとしてる人を見過ごすことはできません!!」
「もうダメなの! 私にはもう生きていく価値がないの!!」
「そんなわけがないじゃないですか! 価値のない人間なんていないんです!」
「……………」
ルカさんは黙って俯いてしまった。
「ルカさん、歌は好きですか? 私は好きです、なのであなたのために歌いたいと思います、きっとこの歌を聞けば元気がでますよ!」
うんうん、まぁ悪くない運びかな? このままいい感じの曲を歌えばいけるかも!
僕のスマホには前に言った通りかなりの曲が入ってる、たぶん華憐のアニメと同じくらい。
JPOP、アニソン、アイドル、洋楽、V系、ロックやヒップホップ、さらには吹奏楽やオーケストラ、ゲームのBGMなど本当にありとあらゆる曲という曲が入ってる!
ミーナがスマホを手に取った。
さぁ、いったいミーナはなんの曲をチョイスするのか……
僕達はしんと耳を澄ます。
そして、
「紅だぁぁぁぁーーーー!!!」
え?
豪快にドラムを叩くBGMが聞こえる。
「くーれないーにそーまーったっ!! こーのおーれーをーー!!」
「み、ミーナ……うますぎるよ……」
「ミーナにこんな特技があったなんて知らなかったわ……」
いやいや、うまい! たしかにこの難しい曲をすっごく上手く歌ってるけどさ!! 華憐とクルア、ツッコムとこそこじゃなくない?!
ミーナ……なんで、紅をチョイスしたんだ……慰めになるのか? 〇 JAPANファンならなるか。
でも、もーーっとふさわしい曲あったろー、これじゃあ慰める奴はもういないになっちゃうじゃん、暗喩で自立しろってことを伝えてるのかな?
いや、それでもさー、FUN〇Y MON〇EY 〇A〇YSとかあったでしょー。
それから、ミーナはしっかりと歌い切った、すごくすごくうまかった。
が、歌のうまさに驚いてたみたいだけどルカさんの立ち直りにはならず「出ていって……」と言われて、しぶしぶ戻ってきた。
「ど、どうしてダメだったんでしょう……? 私の歌、あんまりよくありませんでしたか……?」
「いや、ミーナ、凄かったよ、めちゃめちゃうまかった、けど選曲がダメだったんだと思う、もっとこうじわじわと元気がくる曲だったら行けたかもしれない」
「そ、そんな……私はあの曲が一番好きなのに……」
まぁ、好きな曲は人それぞれだしね、ミーナは意外と激しい曲が好きなのかな? あ、それと
「ミーナ、ちょっといい?」
「はい、なんですか?」
僕はミーナの額に手をかざして、
「『開花』!!」
赤金色のオーラがミーナを包んではじけた。
実はミーナが歌ってる時に光の蕾が見えてた。
ミーナは私にもなにか才能があったんですね! って喜んでた。
さて、ずっと喜んではいられない、まだルカさんは立ち直ってないんだ!
次はどうしようかと悩んでると
「レン、次は私が『熾天使』のために一肌脱ぐわ」
と、クルアが言ってきたので、頼まれたものを用意して次はクルアの番になった。
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「Ladies and gentlemen! 今日は『熾天使』のためにこの舞台を用意したわ! さぁ! とくと見てなさい! 私の奇術を見れば面白くてあなたの悩みなんて吹っ飛ぶわよ!」
クルアに用意してくれと頼まれたものは奇術の道具だった。
前に、華憐がダラダラして動かなかった時、バリ〇ードの真似をさせるためにパントマイムを教えたのだが、そのときに僕がいろいろとマジックを見せてあげた。
それでクルアが「魔法も使ってないのに一体どうやってるの?!」っと、食いついてきて色々と種を教えてあげるとドハマリしていた。
たぶん、それで練習したんだろう。
でも、「慰めにはちょっと厳しくない?」 言ったら、「『熾天使』も魔法が使えるはずだからきっと驚きと面白さで元気になるわ」って自信満々に言ってたけどぼくはちょっと微妙だと思ってる。
まぁ、クルアが行ける!って言ってたからやらせてみるけど
「さぁ! なんとこの種も仕掛けも魔法もかけてない帽子から………ニワトリがでてきました!」
「え?! クルアすごい!!」
「い、今のはいったいどうやったんですか?!」
今のクルアは奇術師コスプレをしている、お鶴さんに作って貰ってた。
クルアが帽子をくるんとさせて、中からニワトリをだした。
たぶん鳩がいないからニワトリで代用してるんだろうなー
僕は種がわかるからそこまで驚かないけど、華憐とミーナはすごく驚いてるな。
ルカさんも一応見ていて、目を丸くしてるから驚いてることは驚いてるみたい。
それからトランプのマジックや脱出系のマジックやハンドパワーとかマジックの定番をやってみんなを驚かせてくクルア。
「さぁ、最後にこの帽子をポンとたたくとー……」
クルアが帽子をとって逆さに置きステッキで叩く、すると花束が飛び出してきた。
「はい、これあげるから、前みたいに元気だしなさい」
と、出てきた花束をルカさんに渡す。
ルカさんは受け取るけどやっぱりどこか浮かない顔。
「ありがとう、まさか『先祖返り』に慰められるとわね、あなたも変わったのね」
「ええ、そして『熾天使』、あなたも変われるわ、なぜならレンたちに助けられたんだから、だから前みたいに元気だしなさいよ」
クルアはルカさんの肩に手を置いて声をかける。
「無理よ……私はもう……」
「そんなこと言ってたらいつまで経っても前に進めないじゃない、せっかく助けて貰ったんだから、助かれたことを喜んで顔を上げなさいよ」
俯いてるルカさんの顔を覗き込んでニコッと微笑むクルア、けど……
「………こんな私なんて助けられずに死んだ方が良かった……」
「……っ!……………はぁ………」
ルカさんがそういうとクルアはちょっとムカッとした顔になったが、小さくため息をついて僕達のところに戻ってきた。
「ごめんなさい、無理だったわ……」
「クルアはよくやったよ、奇術上手くなったねー」
「はい! クルアさん、すごかったです!」
「ありがとう、でも、助けてもらったのに死んだ方がいいって言うのはさすがにひどいと思うわ」
まぁ、確かに僕も悲しくなる、けど……
「それも仕方ないと思う、だってそれくらい酷いことをされたんだ、でもやっぱりルカさんのためにも、マールちゃんのためにも何とかしてあげなきゃ」
「はい、もちろんです」
「そうね」
ミーナとクルアが相槌を打ってくれる。
「それより、華憐はどこに行ったの?」
あれ? そういえばいつの間にかいなくなってたな……
「ほんとだどこいったんだ?」
「あぁ、カレン様ならさっきお鶴さんの所に……」
「さぁ!! あの夕日に向かって、走ろうじゃないか!!」
ミーナがなにか言おうとした時、そいつは現れた。




