83話 魔王の娘
ミライアたち人間族とクーアたちエルフの次に来たのは獣人族の女の子たちだった。
小さな顔に犬耳とか猫耳とかしっぽとかがフリフリしててかわいい。
「あ、あの、私達はあの山を超えた獣人族の里の者なんです」
僕に話しかけてきた子は痛シャツに『セッテ』と大きく書かれてるからセッテって名前なんだろう
というか、あの山ってことは
「ガルさん達の里の?」
「ガルさんを知ってるんですか?!」
「うん、知ってるよ、この前食料渡したから」
「え?! あの野菜とかはここの野菜なんですか?!」
おおっとー、すーごい食いつきよう。
「そ、そうだよ、」
セッテたちはガルさんの里の人達で僕達の作った野菜を食べたらしい、それがいたく感激したみたい、というか、話を聞いたらその獣人族の里の全員が僕達の野菜の虜になったみたいだ。さっすが、レン産の野菜だね!
「じゃあ、君たちは獣人族の里に帰るのがいいね、もうすこししたらたぶんガルさんがこっちに来るからその時に同行するといいよ」
「はい! そうします、それまではお世話になります!」
獣人族のみんなはガルさんたちが来るまで当分の間ここに住むことになった。
華憐に聞いたらガルさんたちは鐘を持ってもう出発したらしいからもうすこししたら来るだろう。
とゆうか、華憐の『飛耳長目』はここからでも1つ先の山の先が見えるのか、末恐ろしくて悪いことが出来ないな……
天使族の人達はルカさんがまだ目を覚まさないからなんとも言えないだろうし、あとは悪魔族の子達だけだな。
急かすわけじゃないけど僕から聞いてみるか。
「君たちはどうするか決めた??」
「あ、レン様、その……お話があります」
「う、うん? わかった、場所を変えようか」
なんか、内密にお話があるみたいだから華憐を連れて応接室に行くことにした。
あそこは防音が完璧だから音漏れの心配がない。
音漏れの心配がないってわかるとなんかイタズラ心湧くよね。
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場所を移して応接室。
僕の正面には僕に話しかけてきた悪魔族の女の子、その両隣に二人座って、残りの五人は後ろにキリッと立ってる。
あらー? もしかしてやんごとなきお方なのかしらん?
僕に話しかけてきた悪魔族の子は赤髪で絶世の美女と言うような見たことないくらい美しい顔立ちをしてる。一体どんな親同士が恋に落ちればこんな子が生まれるんだろう……
ついつい、見とれてマジマジとみてしまう。
「あ、あのーー、よろしいでしょうか?」
「あ、ごめんごめん、いいよ、それで話って?」
「はい、まずは助けて頂き本当にありがとうございます、私は魔王マーラの三姉妹の三女のアラティです」
「うんうん……え?」
今、魔王って言った?!
「え、えーーと、もう一回いい?」
「魔王マーラの娘のアラティです」
ま、まじか……ほんとにやんごとないお方だよ。
ほら、隣のカレンも顎外れそうになってる!
「だ、大丈夫だよね? 僕達『よくも私の娘を!!』とか言われて襲われたりしないよね?!」
やだよー、もうデモゴルゴンでそういう戦闘はいっぱいいっぱいなの! もう、今は戦いたくないの!
「あら、うふふ……大丈夫ですよ、私の父は暗黒界から逃げてこの地上に降りてきた、弱虫魔王なので、それに魔王って言われててもそんな怖い存在じゃないですよ」
い、いやいやいやいや、魔王ってだけで相当な実力者でしょ?! 弱いわけないじゃん!!
「か…華憐、魔王マーラの情報ってある?」
「え、えっとねちょっと待ってね……うーーんとね、魔王マーラ・パーピヤスは悪魔大辞典によると……」
はい! 華憐の解説のお時間です!
魔王マーラ・パーピヤス、二つ名『煩悩の大元』は煩悩の化身の悪魔で、戦闘力は魔王最弱であり、暗黒界で嫁を見つけ、子供ができた後は暗黒界の戦いには参加せず地上に降りてきて魔人族や獣人族を従えて国を作っているらしい。
暗黒界から逃げてきたことから、弱虫魔王とかへっピリ魔王とか、最弱のレッテルが貼られているが愛妻家としてすごく女性たちからは人気があるらしい。
今は3人の娘がいて、3人とも絶世の美女になってるとか何とか
「なるほど、確かに絶世の美女と体現できるな」
僕の前に座るアラティは僕が今まであってきた中で多分1番美人だもん。
「………………イタイイタイ!!」
アラティのことをじーーーっと見つめてると、隣から脇腹をおもいっきしつねられた。何するんじゃい!!
「ゴホンッ……えーと、話を戻すと、アラティは魔王マーラの娘で、それで魔王のところまで送り届ければいいの?」
「いえ、今はちょっと姉さんたちと喧嘩してて、家出中なのでここに住まわせてもらいたいです」
姉妹喧嘩で家出中って、なかなかお転婆娘?
「えーーっと、まぁそれは構わないんだけど、というかなんでデモゴルゴンに捕まってたの?」
「あれは、家出してどこ行こうか悩んでた時、知らない悪魔族のおじさんが楽しいところに行こうって誘ってくれたからついて行ったら、ああなったんです」
ええー、そんな典型的な知らない人について行ってはいけないに引っかかるの?!
「知らない人について行ってはいけないって習わなかったの? ていうか侍女さんたちは何してたの?」
「そ、それは、お城の外に出るの初めてで、楽しいところに行きたかったから、あとこの子達は侍女じゃないですよ、牢屋で会った子達で私を慕ってくれるようになったんです」
あーー、つまり箱入り娘だったのか……箱入りお転婆娘、大丈夫かなー、これから、ちょっと不安。というか、
「そのー、家出のことは誰かに伝えたの?」
「いえ、1人で黙ってきました」
ま、まじかい……嫌な予感しかしないよぉー
「い、1回帰らない? きっと魔王さん心配してるよ」
「嫌です! まだ私は姉さんたちを許してないので!」
「えぇー、はぁ……まぁいっか、そのかわりここにいる間はみんなと一緒に働いてね」
「はい! ありがとうございます!」
「え? 蓮くんいいの?!」
「まぁ、気が済むまでいてくれればいいんじゃない? そのうち家に帰りたくなるよ、もし魔王が来たら事情説明すれば大丈夫でしょ」
「ま、まぁ、蓮くんがいいなら私は別にいいけど」
少し楽観的かな? まぁー、大丈夫か、何とかなるなる!
「ま、そういう訳でよろしくね、アラティ!」
「はい! よろしくお願いします!」
悪魔族の種族代表はアラティとして一緒に住むことになった。
人間族10名、種族代表ミライア、エルフ3名は僕達の仲間に、獣人族5名はガルさんが来るまで泊まるということで客人ということに、悪魔族8名は種族代表アラティとして、気がすむまで手伝いを条件に居候することになった。
そっからアラティと話し合いをして何をやってもらおうか決めてから廊下を歩いていると、
「レン様! レン様!」
「ん? どうしたミーナ」
「ルカさんが目を覚ましました!」
「ほんと? 今すぐ行くよ!」
僕はルカさんが寝てる部屋に向かった。
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「お姉ちゃん! 落ち着いて!!」
「いや! マール離して!」
部屋に近づくと、マールちゃんとルカさん? の叫び声が聞こえてきた。
「大丈夫か?!」
「レンさん、お姉ちゃんを止めてください!」
僕が部屋に入ると、ナイフを自分に突き刺そうとしてるルカさんとそれを必死に抑えてる、マールちゃんがいた。
「ちょ、ストップ! ストーーーップ!! 」
僕はマールちゃんを手伝って、ルカさんの所業を止めさせる。
「やだ!! 話して! 離してよ!! 私はもう生きてちゃいけないの!!」
なおも暴れようとするルカさん。
気持ちは分かる、お互いデモゴルゴンに貶められて、しかもルカさんはたぶん、僕より酷いことされていた、けどそれでも自殺はダメだ!
「レン様! クルアさんを呼んできました!」
「レン、『熾天使』を落ち着かせるわ! ………『静謐』!」
クルアが魔法をルカさんにかけると、ピタッと静かになったと、思ったら手で顔を覆って
「うぅ……うぅ……ぁぁあ……」
嗚咽を漏らしながら泣き始めた。
無理もない、僕も泣いたもん。
とりあえず今は心を整理する時間が必要だ。
だから、みんなで話し合って今はそっとしといてあげることにした。
僕はなにか食べやすいものを作ってあげようとキッチンに向かう。




