82話 助けた人達
「あーー、昨日は地獄だったな……やっぱり我が家が一番だ」
暗黒界から帰ってきて一晩たった。
昨日のことはもう語りたくもない……あれは僕の一生の黒歴史だ、墓場まで持っていこう。
なんとなく帰ってきたなーって思って窓の外を見ると、ミーナが半袖半ズボンで走ってた。
その隣にリーアさんとレーナさんもいる。
「何やってんだ? ミーナ、ダイエットでもしてるのかな? マヨラーだし」
最近ミーナのマヨネーズの量が日に日に多くなってきたから、ある日「ミーナ、カロリーはな忘れた頃にやってくるんだ」って言ったらちょっと青ざめてたからな。
さて、今日は助けてきた人達もいるから朝ごはん作るの頑張らなきゃなー
僕はもう一度、朝日に「うーーん」と伸びをしてるとコンコンとドアを叩く音が聞こえた。
「どうぞー」
「ご主人様、お着替えと濡れタオルをお持ちしました」
「ありがとー」
オリア達、鬼人族のメイドさんが来てから朝の支度はいつもやってくれている。
僕がちょうど起きて、いい感じの時間になったら最高のタイミングで届けてくれる。
いったいどうやって僕の起床やタイミングがわかっているのだろうか、僕の部屋監視カメラとか着いてないよね?
前に華憐とこのことを話した時、華憐も同じらしいから大丈夫なんだろうけど。
僕は着替えと濡れタオルを受け取って部屋の洗面所に向かう、オリアはそのままベッドメイキングをしてくれる。
本当にメイドの鏡みたいな仕事をしてくれるからいつも助かってる。
それから着替えて、オリアも一緒に食堂に向かった。
キッチンで朝食を料理担当の人達と作ってると続々とみんながやって来て料理を受け取って席に座る。
最初の頃は人数が少なかったからしっかり配膳してたけど、最近は人数が増えてカウンターを作ってバイキング方式で取っていくような形になった。
「じゃあ、みんなあとのことは頼んだよ!」
「「「「「はい! オーナーレン!!」」」」」
料理するときは僕のことはオーナーレンと呼ばせてる、料理長でも良かったけどオリアが来てから僕の料理の腕を抜かれたから料理長はオリアに兼任させた。
僕はいつものみんなと種族代表たちが集まってるテーブルに座る。
「蓮くんおはよう」
「レン、おはよう」
華憐とクルアが挨拶をしてくれる。
「おはよー」
「今日もレン様のお料理は最高です!」
「ありがとー、ミーナそういえば朝走ってたけどどうしたの?」
「いえ、ちょっと修行しようかと……」
「修行?」
「はい、その……昨日は私だけ連れて行って貰えなくて悔しかったので……」
そうかー、ダイエットじゃなかったのか
「いや、ミーナ、昨日は来なくて正解だったぞ、あんな所行くべきじゃない」
「それでも、レン様とはひと時も離れたくないんです!」
うぅー、お風呂騒動のときからミーナの愛が重いよぅ、押しつぶされそう
「まぁ、わかったよ、というかそうだ昨日帰ってきてからも話したけど今確認するね」
僕は種族代表たちの顔を見ながら話を続ける。
「とりあえず、ルンとお鶴さんには昨日急に部屋と服を頼んじゃって悪かった」
「いえ、これが仕事でありんす」
「いつも、掃除してたから問題なかったスラ」
「ありがとー、それで今日は囚われてた人達をホールに集めて話を聞くことになるから、覚えておいて」
僕がそう言うとみんな各々に返事を返してくれる。
それから朝食を食べ終わって小ホールに向かう前にマールちゃんの所に行くことにした。
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コンコンと僕は、マールちゃんとマールちゃんのお姉さんのルカさんが使ってる部屋のドアを叩く。
「はいどうぞ」
返事が返ってきたからドアを開けて部屋に入る。
「マールちゃん、ご飯持ってきたよ、ルカさんまだ目を覚まさない?」
「はい」
マールちゃんは家に来てからずっと眠ったままのルカさんの看病をしてる。
「今から小ホールで集会を開くけどマールちゃんはルカさんに付いていてあげな」
「はい……」
マールちゃんはここに来てから元気がない、理由は言わずもがなお姉さん、ルカさんのこと。
ルカさんは今、髪は真っ黒で羽も真っ黒、元はマールちゃんと同じ翡翠色の髪に白い羽だったみたい、つまり堕天してしまってる。
天使族にとって堕天使はもっとも忌み嫌われ、悪魔として扱われる存在らしい、よくて国外追放、悪くて死刑にまでなるとか。
そして、ルカさんは『熾天使』で基本的な天使族の中で一番最高位の階位であるから、見つかれば死刑は免れないという。
だから、マールちゃんはここに来てからずっと顔を俯いてる。
「じゃあ、小ホールにいるから何かあったらよんでね!」
「はい、ありがとうございます、マリアさんたちは出るそうです」
「わかったー」
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小ホールには既に助けた人達が集まってた。
助けた人達は多種多様な人種がいる。
人間族の女の子が10人。獣人族の女の子は5人。エルフの女の子が3人。悪魔族の女の子が8人。そして、天使族の3人組のクロウさん、コロネさん、マリアさん。それと、マールちゃんのお姉さんのルカさん。
計30名を助けた。
みんな中学生から高校生くらいの背格好でボロボロだった服からお鶴さんたち折り鶴特性の痛シャツを着ている。 普通の服はなかったのか……まぁ初めのうちは名前覚えるの大変だから意外といいかも?
ていうか、みんな少女って風貌だから、デモゴルゴンの趣味が透けて見える。うえっ、思い出したら肌寒くなってきた……
いつもみたいに、「チューモーク!」だとか「ニューヨークに行きたいかー!」とかやりたかったけど、みんな少し不安そうな顔してたからさすがに自重する。
そりゃー、昨日まで牢屋にいていきなりこんなとこ連れてこられたらこれからどうなるのか煮るなり焼くなり気になるか。まぁ、とりあえず話をしよう。
「えーと、おはようございます! 僕がこの巨木な我が家の主の雨宮蓮です」
うーん、今は裁判長セットの裁判長席のところで話してるけどなんか担任の先生とかになった気分だなぁ。
「とりあえず、今みなさんは保護という形でこの家にいてもらってますが、これからどうするか話し合おうと思います、直ぐにとは行きませんが帰る場所がある方は送り届けることも考えてます、もちろんこのままここにいて一緒に住むでもいいですよ! 部屋は大量に余ってるんで」
ここまで言って、とりあえずみんなの顔を見渡す。
うん、さっきよりは不安そうな感じは消えたね!
「まぁ、どっちにするもあなた達の自由なのでゆっくり考えてください、決まったら僕か華憐に伝えてください、以上!」
そう言って、壇上を降りたら早速人間族の女の子たちが来た。
「あの、アマミヤ様……」
雨宮様って新しいな……
話しかけてきた子は金髪の高校生くらいの女の子。
「蓮でいいよ、もう決まったの?」
「はい、その私達は孤児だったんです、だから帰る場所なんてなくて……」
ああ、そっか、やっぱりいるよね孤児とかそういう子たち、前の世界にも日本じゃあまり見ないけど、世界には沢山いるしね。
「じゃあ、ここに住めばいいよ、そのかわりちゃんと働いて貰うからね」
「はいっ!! ありがとうございます!」
「それで、なにか得意なこととかできることとかある?」
「わ、わかりません……」
まぁ、それもそうかー、ゆっくり色んなことをやらせてみよう
「わかった、ならゆっくり色んなことをやってみてよ、その間にやりたいこととか得意なことが見つかったら教えて、あと君が一応人間族の代表ってことで」
「はい! わかりました!」
人間族の女の子たちが笑顔で部屋に戻ってく。
あ、そうだ名前聞いとかなきゃ、まぁ痛シャツで分かるけど一応礼儀としてね。
「おーーい、君名前はー?」
僕と話してた子がくるっと振り返って、
「ミライアです! レン様!!」
金髪がフワッと宙を舞うのがなんとも、いとをかし。
僕は手を振って華憐たちのいるところにミライアたちはここに住むことになったことを伝えるために向かった。
人間族の女の子たち10人が仲間になった。
「あ、蓮くん、さっきの子達はここに住むって?」
「うん、元は孤児で帰るところがないんだって、だから住んでもらうことにした」
「むむ、またレン様に言いよる女が増えそうですね……」
「まったくよ、ミーナ後で釘を刺しに行きましょう」
なんか、ミーナとクルアが怖いこと言ってるけど無視しておこう。
「あ、あのぉー……」
みんなでこれからなにするか、とりあえずプールの続き作ろうぜ!って話をしていると声をかけてくる者がいた。
「ん? どうした? どうするか決まった?」
話しかけてきたのはエルフの人達でTシャツにでっかくトーアって書かれてる。トーアって名前か、うむうむ。
「そちらの方は、その……え、エルフですか?」
と言ってミーナを指すトーア。
あ、そうだった。もうずっとミーナはもう銀髪を隠すのを辞めてるから普通だと思ってたけどエルフにとって銀髪は忌み子の象徴だった。ミーナ悲しんでないよね? 大丈夫?
「え、えーーと……」
「はい、私はハイエルフのミーナです、見ての通り銀髪ですが、もうそんなことは気にしてないし、むしろ私の好きな所なので気にしなくていいですよ」
僕が返答に困ってるとミーナはスパッと言った。気にしてないならよかったー、
「み、ミーナ様ですか? 生きておられて……」
「ミーナ知り合い??」
「いえ……あ、もしかして私の国の国民の方ですか?」
「は、はい! 実は……」
トーアの話はミーナが国から逃げたあとの話だった。
ミーナの国が攻められてからほんとに酷かったらしい、国民はほとんど誘拐や連行で連れていかれて、逃げ出せた人は少数、トーアたちはそんな逃げ出せた人の一部で、たまたまデモゴルゴンの部下に見つかり攫われてしまったらしい。
「そうだったのですか……私の国が……ごめんなさい、私のせいで……」
責任感が強いミーナはやっぱり自分のせいだと思ってるみたい、まぁ割り切れないのは分かるけど……あとで慰めてあげよう。
「いえ! ミーナ様のせいなんかじゃありません! 私はミーナ様を忌み子だなんて思ったこと一度もないんです!」
「でも……」
「レン様! カレン様! 私、決めました! ここに住んでミーナ様のお付になります! 2人もそれでいい?」
わぁお、トーアの性格は結構突撃系だなー、他のみんなも異論はないみたいだし。
「ミーナもそれでいい?」
「はい、嬉しいです!」
「じゃあ、決まりだね!」
こうして、元ミーナの国の国民のエルフたち3人が仲間になった。




