8話 デカすぎる我が家
◇◇レンside◇◇
僕達は今、巨木の元に向かうべく湖を泳いでる、もちろんコロッケたちも一緒。
「華憐さん、あば、あばれないでおほぼぼぼぼぼぼ」
「ほら! 蓮くんはやくーー」
華憐さんは泳げないらしい、だから僕が背負って泳いでる、泳げない華憐さんはというと僕の背中で暴れてる、おぼれるおぼれるー、華憐さんじっとしてて! コロッケたちは余裕でついてきてたまに押してくれる。
「ぶはぁ!! はぁ、、はぁ、、じぬがとおもっだ……」
「わぁ! 幹もふっとーい!!」
やっとの思いで陸にたどり着いた、華憐さんは元気だなー。
「蓮くん蓮くん、ぐるーって一周してみよう!」
「はいはい、ちょっとまってー」
「がるるるる」
お、このコロッケの気持ちはわかるぞ、呆れてる感じだな! え? ちがう?? 大丈夫かって? ありがとう。
それからコロッケたちと華憐さんと幹をぐるーっと回ってみた、耕した畑とちょうどピッタリだ、周りには特にこれといったものは何もないみたい。
「蓮くーん、ここに扉があるよー」
「やっぱりただの木で家なんて無理なのか? え?扉??」
「蓮くんはやくー!! 扉ー」
華憐さんのところに向かうと、木の根っこと根っこの間の空洞みたいな所に高さ五メートルくらいの大きな扉があった、傍には普通の玄関みたいな扉もある。
「ほんとに扉だ、すごいなぁー」
「蓮くんはいってみよ!!」
僕と華憐さんとコロッケたちで大きな方の扉を開けると、
「わぁー! 広いね!」
「なんか、あれだね、よくある世界樹みたいだ」
結構な高さまで吹き抜けた玄関ホールみたいな、いや実際に玄関ホールなんだろう、があった。
「これ、上に登るの大変そうだなー」
「あ、あそこに階段あるよ! 登ってみよう!」
「僕の話聞いてたー? 大変そうって」
「大丈夫だよ!!」
華憐さんは僕の話も聞かずに一人で階段を登り始めた、テンション高いなぁー。普通こんな階段見たらオタク達はしり込みするものじゃないの? そういえば、鉄グマに襲われてた華憐さん、結構な速さで走ってたな……実は結構運動出来る?
僕は仕方なく華憐さんに続いて階段を登り始めた。
階段は吹き抜けホールのそばに着いていて登ると木の幹の円形に合わせて、ぐるーーっと一周に等間隔に部屋があった。
「蓮くん、部屋の中は何も無いみたいです」
「そうなの?」
近くの部屋を覗いてみると、窓がある以外物も何もない部屋だ。
「さすがに、家具とかは別なんじゃないかなー」
「そうかもしれませんね、残念です」
「まぁ、家具くらいなら作れるさ」
そのまま部屋を出て上に上に登っていく、もうそろそろ木の半分くらいまで来たんじゃないかってところで一番上まできた。
「部屋以外なにもありませんね」
「そうだね、でもこれだけの部屋数あれば結構な人住めるね、てか管理つらそう……」
「でも、不思議じゃありません? 外から見たときはまだまだ上続いてるとおもうんですけど」
「たしかに、どこかに階段あるのかな?」
僕と華憐さんは手分けして部屋を開けて閉めて開けて閉めてして、階段をさがした。
「階段ありましたか?」
「ううん、見つかんないー」
全ての部屋を見てもどこにも階段などなく一階の最後に探した部屋に戻ってきていた。
「んー、やっぱりあそこが一番上なんじゃない?」
「えー、それはがっかりです……外見だけの見せかけダミーですか。詐欺ですね」
「まぁ、これでも大きすぎるくらいだしこれ以上あっても……」
「がおおおー!!!」
華憐さんと二人で話し合ってると突然コロッケの叫び声が聞こえました、あれ? そういえばコロッケ達どこいった?
「蓮くん、コロッケたちが呼んでます、こっちですね」
華憐さんがコロッケの方へといったので僕もついて行くと、玄関ホールの丁度真ん中あたりにコロッケたちがいた。
「どうしたー? コロッケたち」
「がうがう!!」
「えーっと、あそこに何かあるみたいです」
相変わらず僕にはコロッケたちが何を言ってるか分からないや。
コロッケたちのもとに向かうと、そこにはタッチパネルみたいのがあった。
「タッチパネル? なんだこれ?」
「どれですか? こういうのは私得意ですよ!」
たぶん、オタクな華憐さんだから、こういう機械とかコンピューター系は得意なんだろう。
華憐さんがタッチパネルらしきものをいじると、ガタンっ!って音を立てて地面が浮かび上がった。
「え? 華憐さん何したの?!」
「なんか、100ってボタンみたいのがあったから押してしまいました」
ああ、だめや〜この子ボタンがあったらとりあえず押しちゃえ系女子だ。まぁ、ボタンがあったら押したくなるのは人間の性か。僕も押したくなる時あるし。
そんなこと思ってるうちに地面はどんどん上昇していって、またガタンっ!って音がして止まった。
「ついたみたいですね」
華憐さんは正面にある外に繋がってるであろう扉に向かった。
「わあああぁ! 蓮くん来てください! 絶景ですよ!」
今日何回目かもわからない「わあああぁ!」を言ってくる、僕も華憐さんのものに向かって外に出るとそこには、
「………やばっ」
何も言葉に出来ないくらいの絶景の光景があった。
正面はどこまでも続く緑の海のような森林、東側は森を抜けたら山岳地帯のようになっていて一番大きい山は雪化粧をしていてエレベストのよう、西側は森を抜けたら草原になってる、どこまでも緑だな。どの方向も遠くにうっすらと山が見えてるから、ここは山脈の中心なのかもしれない。
そして、この巨木の背後、北側は最初に僕達に言葉にならない絶景を見せてくれた巨大な滝!! 水しぶきが陽光にキラキラと輝いて虹がかかってる、なんとも神秘的、下から見るのもすごかったが上から見てみるのもまた、絶景だ。
華憐さんなんてあごはずれるじゃないかっていうくらい口が開いてる、直してあげよう、かくっ! ぱかっ! うん、閉じない。
「ここはつまり展望台みたいな感じなのかもね」
「………はい、自分がなんだか小さく感じます」
「そうだね」
それからしばし二人で何も話さず絶景を眺めていた。
「とりあえず、他にも階数あったんだよねー?」
「はい!ありました! 探索してみましょう!」
それからまた二人で51階から99階の探索を始めた。
51階には1階より小さいがホールのような大きな空間が54階まで突き抜けになってる、55階から60階はちょっと大きめの部屋や窓がない部屋などあることから倉庫の役割だと推測する、61階から80階はホテルのような部屋が沢山、81階は大浴場、82階は大食堂、83階は大キッチン、84階は大広間、85階から87階は小ホールで吹き抜け、88階は小倉庫、89階は小キッチン、90階は小食堂、91階から94階は部屋になっていて、95階はお風呂♪、96階から99階は天空ガーデンで庭だ、100階は展望台。
色々見たけど、一番テンション上がったのは大浴場かな? 中に入ってみると銭湯みたいにたくさんのお風呂があった。
今まで川で行水という野生に帰ってたから、冷たい川水じゃなくてお湯というのが僕にとってはすごくすごくすごく嬉しい!
あとは、天空ガーデンかな? 各フロアの部屋にもベランダみたいのがあって外に出られるけど、天空ガーデンはそもそも壁が無くて他のフロアと比べて開放感がある。
あと、天井が高いからよく太陽の光が入ってきて暖かいし、床がフローリングじゃなくて原っぱだから本当に庭みたいだ。お昼寝とかに最適そう、あとはバーベーキューとか。あぁ、天井が高い家にしてよかった。また僕は嘘をついた……。
「でもさ、それでもさ、部屋と階数おおすぎいいいぃぃぃぃ!!!!」
全部の部屋とかを調べ終わってつい叫んでしまった、ちょっと大きすぎない?! 部屋管理できないよ!
「蓮くん、これからここが我が家になるんですね、こんなおっきな家に泊まるなんてテンション上がります!!」
「いやいや! 限度があるでしょう!! そんなに僕のダンスと歌がよかったの?!」
というか、部屋ばっかで家具とか何も無いんですが、もしかして自分で作れと? めんどくせぇー。
「華憐さん、とりあえず今後使う部屋だけ決めて降りよう」
「そうですね、そうしましょう」
それから、使う部屋を決めた、僕はキッチンとかお風呂とか近い方がいいから両方とも同じくらいの距離の93階の部屋にした、というか一つの階が一部屋みたいなかんじだ。
マンションの最上階のワンフロアが僕の家です! みたいな。
だから、コロッケたちと華憐さんと僕で93階を占拠した。こんな大きな部屋をたった一人で使うなんて広すぎて寂しいからね。もともと僕には広い部屋は性にあわない。
ちなみに、上階のほうも家具の類は全く無かった。家具くらいのオプション付けてくれてもいいと思うんだけど。
部屋を決めてエレベーターで一階に戻る、これどうやって動いてるんだろ? 神様の不思議パワー? それとも魔法みたいなものがあるんだろうか? まだ見た事ないけど。
「とりあえず、引越しの準備するか、準備といってもなにもないけど」
「そうですね、あ、野菜の方ものびのびダンスやりましょう! 何が起きるかも!」
「ええー、またこんなの出来たらどうするの」
「大丈夫! だって栄養価が高い野菜いろいろって願ったんですよね? なら大丈夫ですよ!」
「まぁ、たしかに……」
華憐さんはそう言うけど、なんだかそこはかとなく不安な感じがする。
「がうがう!!」
「コロッケどうしたの? 」
「がうがう!!がう!!」
「あー、うん! そうだね取りに行こう!」
「コロッケなんだって??」
「コロッケたちの住処のものも取りに行きたいんだって」
「ああ、なるほど、でもその前にご飯食べよ、お腹空いた」
「そうですね、それじゃあ一度でましょうか」
そう、この巨木ができたときはまだまだ明朝だったのにすっかり真昼間である、それだけでこの巨木がどれだけ大きいかがわかるというもの。
「あっ………」
「あーー、華憐さん??」
「蓮くーーん!!」
そうだよ、ここ湖の真ん中じゃん、やっぱりまずは橋をかけよう! うん、そうしないと、ここに来る度に溺れかける……。
こうしてデカすぎるにも程がある我が家がかんせ……ごぼっごぼぼぼぼ……おぼれる……おぼ……。
「わーー!!! 蓮くんしっかりー!!」