77話 蓮の大激怒
「うわっ……なにこれ空気悪い……」
華憐も気分悪そうにしている。
「暗黒界の空気は人間族にはちょっときついかもしれませんね」
そういうマールちゃんや他の人たちは大丈夫そうだ、本当に人間族の僕達だけが影響を受けてるみたい。
僕は暗黒界を眺めてみる、悪魔ここにいますよ!って感じの雰囲気だ。
暗黒界は空が赤くて、今のところ見渡す限りの地面も赤くて荒廃してる、ほんとに魔王たちはここに国なんか作ってるのかな?
「どこにお姉さんいるのかわかる?」
「デモゴルゴンの城はここから東に真っ直ぐのところです」
「よし、じゃあ急いで助けに行こう!」
そう言って東に進もうとした時、
「わぁー、なにここ、かんじわるーい」
「「「「「え?!」」」」」
僕と華憐とクルアとサイカとオリアの声が重なった。
「あ! レンお兄ちゃん! カレンお姉ちゃん!」
後ろを振り返るとピィナがいた。
「え? ピィナなんでここに?!」
僕が聞くとピィナは
「あれ? んーー、なんでだっけ? 忘れちゃったー」
なめてた、このバカ鳥をなめてたよ、まったく……でも、たぶん帰そうにも帰ってる途中でまた忘れるんだろうなー……あ、そうだ。
「ピィナ、ニワトリになって」
「?? わかったー」
ぼふんっと、ピィナがでっかいニワトリになる。
「よし、みんなピィナにのって移動しよう、多分一番早い」
「はぁ、ピィナあとでお説教だからね!」
「確かに、ピィナに乗ればあっという間かしらね」
ピィナは華憐からお説教が確定した、クルアとサイカとオリアがピィナに乗る。マールちゃんは……
「な、な、なんですか?! このニワトリは?!」
びっくり仰天していた。
「まぁ、今度説明するから今は先を急ごう」
とりあえずマールちゃんの腕を引いて無理矢理乗っける。
「ピィナ、向こうに早めで向かってくれ!」
「わかったーー! いくよーー!」
ピィナが翼をバタバタさせると
「に、に、ニワトリが飛んでる……」
やっぱりマールちゃんが仰天してた。
まぁ、初めて見ると衝撃的だよね。
ピィナは東へ真っ直ぐに進んでいく。
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ある程度進んでくると建物が見えてきた。
「うわっ、なんだこの街、ピンクピンクしてていやらしさ満開なんだけど」
「趣味悪いね、デモなんちゃらっていう悪魔」
確かに華憐の言う通りだ。
見えてきた街はなんて言うか歓楽街って感じで見渡す限りピンク色の街だ。こんなとこ住みたがるやついるのか?
「見えてきました、アレがデモゴルゴンの城です」
マールちゃんの指さす先は
「うわぁー、バリバリラブホじゃん」
なんかちょっと高級そうなラブホテルみたいな城があった。
僕も何回か行ったことあるけどまんまそれな感じ、華憐とかちょっと顔を赤くしてる、むっつりだもんね。
「華憐、マールちゃんのお姉さんがどこにいるか分かる?」
「待っててね今探してみる………『神気解放:飛耳長目』!」
華憐が神気解放を使って青金色のオーラを振りまく。
「やはり、カレンさんは神気が使えたのですね、ならレンさんも?」
そっか、天使族は神気を感じられるんだったなー
「もちろん使えるよ、僕と華憐は神の使徒だからね」
そう言うとマールちゃんは今日何回目かの驚きの顔をしていた。
「蓮くん見つけた! 地下の部屋にいるよ! 部下三人と思わしき人達はさらにその下の地下牢みたいな所! 状況はあまり良くないかも……」
さすが名探偵華憐さん、仕事が早い。
「了解、どこから侵入するのが一番近い? というかその地下室の真上はどこ?」
「地下室の真上? えーと、一階の玄関入ってすぐのホールのところだよ」
「よし、なら真正面から強行突破で行こう、パッと連れ戻してすぐ帰る! こんな感じの悪い場所いつまでもいたくない! みんなそれでいい?」
「「「「「了解!!」」」」」
「華憐、もし何かあったらスマホで連絡だ、ピィナ玄関前に近づいてくれ、僕達が飛び降りたらそのまま空中で待機してて、僕達が見えたら回収を頼む」
「わかったーー!」
ピィナが急降下して地面に近づく。
「お、おい! なんだあれは?!」
「ニワトリ? 空飛ぶニワトリだと?!」
警備をしているたぶん、騎士階級の悪魔が僕達に気づいた。ピィナに驚いてるみたい。
ピィナは構わず急降下していって、地面スレスレになったところで僕達は飛び降りる。
ピィナはそのまま騎士階級の悪魔たちに突撃して吹き飛ばしてた。
「よし、それじゃあ行くか!」
先頭に僕、その後ろに華憐とクルア、二人を守るようにしてサイドにサイカとオリアで殿はマールちゃんという陣形で城の門に突っ込んでいく。
この陣形はピィナに乗ってる時に決めた。
「誰だお前たち! 止まれ!」
門番の悪魔が槍をこちらに向けてくる。
「『神気解放:才気活発』!!」
僕は神気解放をして、門番の懐に超高速で入り、みぞおちを思いっきりヤクザキックする。
「ぐあああぁぁぁー!!」
門番は吹き飛んで門に激突、門を開けてくれてしっかりと門番の役目を果たしてくれた。
「華憐、この辺??」
「そうだよ!」
城の中に入ってホールの中心まで来た。よし、久々にやるぞー!
「みんな構えてて! サイカとオリアは華憐とクルアのことよろしくね!」
「はい!」
「承知しました」
僕はサイカとオリアが華憐とクルアのそばに寄るのを見てから、拳に神気を集める。
「はあああぁぁぁーーーー、見よう見まね『二〇の極み』!!」
僕は床に向かってダンジョンの壁を破壊した時と同じように拳で殴る。
どごぉぉぉぉんと、爆音を響かせて地面が地下まで貫通した。
そのまま、穴に僕とサイカは落ちていき着地、華憐はオリアに横抱きにされて着地、クルアとマールちゃんは飛んで降りてきた。
「これでダンジョンの壁も破壊したのね、すごい破壊力ね、まったく」
「そうだろー! 左〇助は凄いんだぞ! 剣使わないからあんまり目立たないけど」
「左〇助って誰よ」
「んーーー、格闘家?」
そんなことを話しつつも地下室を見てみる。
地下室は壁に棚があって、なんか変な薬品とかが大量に入っていたり鞭や猿轡や目隠しなど、うわっ……ハードプレイやん……って引くくらい偏ったものが沢山ある。
壁際に悪魔らしき人が二人いて、その後ろには……
「お姉ちゃん!!」
髪が真っ黒で翼も真っ黒な僕と同じくらいの女の子が全裸で地面にぐったりと倒れていた。
白い肌は粘液みたいなネバネバまみれで時折ピクピクと痙攣してるが気を失ってるみたいだ
「あ? 誰だおまえら、これからお楽しみなんだから邪魔すんなよ」
「そうそう、こいつ今はこんなだけど、さっきまでデモゴルゴン様に犯されてた時なんて『イヤっやめてっ!』って感じでいい声で泣くんだぜ?」
「やっとデモゴルゴン様が譲ってくれたんだ、邪魔すんなら殺すぞ」
つまり、こいつら、あの子をレイプしたと。
そう理解した瞬間、僕はその場から一瞬で二人の悪魔に近づきこめかみを足で蹴り飛ばしていた。
二人の悪魔は吹き飛ばされて壁に激突、それでも止まらずどんどん壁を壊していって見えなくなった。
華憐たちは一瞬の出来事すぎて唖然としている。
僕は女の子を見てみる、女の子は涙を流してたし下半身からは血が出ていた、たぶん処女だったんだろう。
「『洗浄』…………ごめん」
僕は鶏舎のときにクレアにやられた洗浄する魔法を女の子に使って、ネバネバとかを落としてやる。
もしかしたら、もっと早く来ていればこんなことにならずに助けられたかもしれない。そう思ったら申し訳なくて謝罪の言葉が自然と零れてた。
ある程度綺麗になったら、『乾燥』の魔法で乾かしてあげて、僕が着ていた上着を肩にかけてあげる。
「お姉ちゃん……」
マールちゃんが泣きながら女の子に抱きつく。
他のみんなも悲痛な顔だ、女性としてとても不快な気持ちだろう。
「あーー? 誰だおまえら、俺の城で馬鹿でけぇ轟音が聞こえたと思ったらこんなところで何してやがる、お? お前は……その女天使の妹か! なんだー? お前も俺に犯されに来たのか?」
地下室の出口の階段から気持ち悪い声が聞こえてきた。
そちらを見ると、短髪で舐めまわすような視線をマールちゃんに向ける男がいた。
「お前が、お姉ちゃんを………」
マールちゃんは今にも飛びかかりそうな感じだ。
僕はそれを腕を横にして停める。
「レンさん?」
「あいつをぶっ飛ばすのは僕に任せて」
「え、で、でも相手は腐っても侯爵階級ですよ」
「大丈夫、マールちゃんたちは部下三人の方を頼む、華憐任せる」
「わかった、蓮くん気をつけてね! マールちゃん行くよ!」
華憐がマールちゃんの手を引いてさらにしたの地下室に行く音が聞こえる。
マールちゃんのお姉さんはオリアが抱えて行った。
「ちっ、せっかくもう一回気持ちよくしてやろうと思ったのになぁー。で? 誰だお前」
「すーー、はぁーー、お前があの女の子を犯したのか?」
僕は爆発しそうな怒りを深呼吸で抑えつつ質問してみる。
「そうだが? いやー、よかったぞあの女は、いーい声で泣くんだよ、口で嫌だ嫌だと言いつつも身体はしっかり反応してるあたり、くーーー興奮するねぇー、それに処女だったしなぁ」
あ、無理だ、怒りを抑えられないや。
デモゴルゴンとの間合いを一瞬で詰めて目の前に出て、顔面をぶん殴った。
「は? グホォ!!」
デモゴルゴンはさっきの二人組悪魔と同じく吹き飛んでいく。
僕はレイプが大っ嫌いだ、同じく痴漢も、車内で見かけた時なんてその男の社会的地位を徹底的に貶めて問題になったくらいに、だから……
「お前、覚悟をしろよ」
デモゴルゴンを蘇らせないくらいぶっ殺すことにした。




