74話 鶏ついに空を飛ぶ
ピィナのことは華憐に任せて僕はドワーフたちのもとに戻った。
一応華憐の代わりにルンを連れてきた。
華憐はピィナを隠してたこと、ピィナがドアを壊したこと、キッチンを荒らしたことでルン裁判長の判決で有罪になり、お風呂掃除1ヶ月の刑になった。
やった! 仲間だ!!
それから少しだけ華憐と話し合って、僕達は未成年だけどここには大人の人も沢山いるしお酒を作ろうってことで決まった。
だからドワーフたちの話は受けることにした。
「おお! 受けてくださるか! 感謝するわい! がはははは」
うーーん、ずんぐりおっさん、巨木な我が家では新しい属性だなー、ひろしさんみたいにナイスガイなおっさんはいるけど。
「それに、カレン様は神気が使えるんだな、びっくりしたわい」
あれ? 神気のこと知ってるのかー
「神気のこと知ってるんですね、僕と華憐は神の使徒なんで」
「お? レン様も使えるのか?!」
「使えますよ! ……ほら!!」
僕は少しだけ神気解放する。
「おおー! わしのじーさんも使っておったわい!」
その話を聞いてみると、ジダンさんのおじいさんはエンシャントドワーフらしい、すごいな。
それから世間話をして話を詰めてく。
「三人にはここの上にある部屋を使ってもらいますね。ルン、部屋空いてるよね?」
「大丈夫スラ」
「おお!ここに住まわせてもらえるんですかい?」
そりゃあ、外に家なんて作ってないし。
あ、泥かまくらがあったな!
「部屋空いてるし使ってください、それのこの紙にお酒作りに必要な道具とか建物とか書いておいてください、使いたい食材とかも」
お酒作りって何が必要なのか僕にはさっぱりだし、華憐なら知ってるかもだけど、いや確実に知ってるけど、まぁ本人たちが選んだ方がいいだろ。
「ありがたい、道具は一応持ってきているが……あ、そうだスライムも持ってきたから渡しとくわい、わしらが今持ってても意味ないしな」
ジダンさんがそう言うと後ろにあった大きな荷物からラーメンの出前の箱みたいのを出して渡してきた。
ん? リザードマンもここにスライム入れてきたけどこれってスライム入れだったりするの? スライムの出前かな?
まぁ、とりあえず受け取っておいてスライムらしいからルンに渡す。
ルンは箱を開けて吸収して分身した。
「ルン3号スラ」
「ス、スライムが……」
ドワーフたちがかなりビックリしてる。口が空いてますよー
あー、そっか、ルンはよく2号と合体したり分離したりしてるから慣れちゃったけど、そもそもスライムが人型で喋ってるのがおかしいのか。
「あー、ルンはもともと流線ボディのスライムなんですよ」
僕はルンの説明とここにいる人達の種族とかの話をした。
「そ、そんなに幻獣種がいるのか……すごいわい」
そういえば、よくドワーフとエルフはいがみ合ってるイメージがあるけど大丈夫かな? ミーナ最近は華憐に影響受けてアホ化が進んできてるし、え? 僕のせいでもある? そんなわけないやん!
それから今日は三人をみんなに知らせるのと歓迎会をすることを伝えてルンに部屋案内を頼んだ、3号はいつの間にか掃除に向かってた。
「それじゃあ、必要なものが書き終わったらその紙を僕か華憐に渡してください」
「わかったわい、これからよろしく頼む」
こうしてドワーフが仲間になった!
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ドワーフたちと話し合ったあと僕は小ホールに来た。
ここにピィナと華憐がいてピィナを何とかするため。
「カレンお姉ちゃんお腹空いた!」
「ピィナどれだけ食べるの……? フードファイターも裸足で逃げ出すよ……」
「カレン様、フードファイターとはなんですか?」
「なんでこんなにおっきくなったのかしら」
小ホールにはクルアとミーナもいた。
「あ、蓮くん! ドワーフの人達はどうだった?」
「これからここで住むことになったよ、お酒作ってもらう」
「お酒を作るのですか?」
「そーだよ、ここの果物で作りたいんだって」
「いいじゃない、ここの果物はおいしいからきっとすごくおいしいお酒ができるわよ」
「え?! クルアお酒飲んだことあるの?」
「?? 当たり前じゃない。カレンは成人した時に飲まなかったの?」
あー、なるほど。
これも異世界とのちがいだなー
こっちの世界では15歳でもう成人らしい、そのときに種族ごとに細かいことは違うがだいたいは祝いのお酒を飲むらしい。
それからはお酒解禁、それじゃなくても子供の時から飲む子もいるとか。
華憐は僕たちの世界ではお酒とタバコは20歳からなことを教えていた。
「ねー、カレンお姉ちゃんお腹空いたよ!」
「あ、ごめんごめん!」
というか、ピィナ食べ過ぎじゃない??
「なぁ、ピィナだっけ? さっきも華憐に食べ物貰ったんじゃないの?」
「もらったよ! けどたりないの!」
「華憐、ピィナの種族何??」
「鶏舎で『鑑定』した時はひよこだったよ」
このひよこ、めちゃくちゃでかいから胃もめちゃくちゃでかいのかな? ていうかまだ成長したりするの? それってもうひよこじゃなくない??
とにかくデカすぎるな、これじゃあ家の中だと不便すぎる。
「ピィナ、ちっちゃくなれないか? 今の大きさだと小ホールとかしか生活できないんだけどー」
「ちっちゃく? んーーーー」
ピィナが目を瞑って唸り出す。
すると、ピィナの足下からぼふんっ……と煙が出てきた。
「ごほん……ごほん……な、なんだ?」
「ピィナ?」
「わぁー! 目がぁ! 目がぁ!」
「ミーナ、ちょっと大袈裟すぎよ」
そのセリフを言ったらミーナはもう手遅れかもしれないなー
モクモクしてた煙がだんだん晴れてきてそこにピィナの姿はなかった。
「ピィナ?!」
「どこいったんだ?」
「下だよ、カレンお姉ちゃん!」
「下?」
僕達は下を見てみる。
そこには、金髪というより黄色の髪にオレンジや赤の髪が混じった幼女がいた。
「ピィナ??」
「そうだよ! レンお兄ちゃん、これでいい?」
「あ、ああ、それで問題ないーかな? 華憐、ピィナはほんとにひよこなの?」
「ちょ、ちょっと待ってね! もう一回神気解放状態でやってみるから! ………『神気解放』!」
神気解放状態で能力を使うと普通の状態の時より効果が強くなる。
「えーと、蓮くん、普通のひよこから幻獣種のひよこになってるだけで、ひよこではあるよ」
「ひよこではあるのかー、魔獣じゃなくても幻獣種にはなれるんだなー」
僕はもう一度ピィナをよく見てみる。
うん、今は普通の幼女だ。ん? 開きかけの光の蕾が見えるな
なにか才能持ってて目覚めかけてるってかんじかな、『開花』させてみるかー。
「『開花』!!」
開花させると、ピィナの体が光に包まれた。
これはあれだサイカのときと同じやつだ!
その時も思ったけど、なんかプリ〇ュアの変身シーンみたいだな、あれ変身してるとき全裸じゃない?っていつも思ってたやー。
「なんだか、へんなかんじー」
光が収まって現れたピィナは……あれ? 何も変わってない?
「何も変わってなくない?」
「蓮くん、変わってるよ」
「髪が黄色から白になりましたね」
「この色合いは……ニワトリかしら?」
あ、言われてみれば確かに、黄色にオレンジや赤が混じってた髪が白に赤が混じった感じになってる。
つまりひよこから鶏にジョブチェンジしたってこと?
「ピィナ、もう一回大きくなってみて」
「わかったー!」
ピィナの足下からまた煙が発生する。
毎回この演出するのやだな、煙邪魔くさい!
はたして、ピィナの姿は?!
「でっかいニワトリだなー」
「でっかいニワトリだね」
「でっかいニワトリですね」
「でっかいニワトリだわ」
それはそれは大きなお化けニワトリだった、鶏肉すごい取れそう。
そのでっかいニワトリになったピィナは自分の羽を広げて首を傾げてる、どうしたんだ?
「カレンお姉ちゃんたちなんかいけるきがする!」
「え? わぁぁぁぁ!」
「飛んじゃいますーーー!!」
「ちょ、ピィナ! ストーーップ!! ぐはっ!!」
「ふっ……」
ピィナがいきなりでっかい翼をバタバタし始めて、この前華憐が魔法を暴走させた時と同じくらいの風が小ホールを吹き乱れ、裁判セットが宙を舞ってく。
僕とミーナと華憐は吹き飛ばされて華憐とミーナが僕に突っ込んできて激突、クルアはちゃっかり飛行して空に逃げてた。
壁に激突しつつもなんとか目を開けて状況を確認する。
「「「「え………」」」」
たぶん、みんなも見たんだろう、声が重なった。
僕達が見たものそれは……
「わぁぁぁ! みてみてカレンお姉ちゃん! とんだー!!」
宙に浮くニワトリだった。
この日、空を飛ぶニワトリが爆誕した。




