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69話 ミーナのファーストキス

 

 カタンッ……


 僕がバレる覚悟を決めていたら、掃除道具の壁の横から何かを置く音がした。


「まったく、上がったら蓮くんとミーナにちゃんと言っておかないと」


 どうやら、中に入れずに掃除道具に立てかけたらしい。


 身体を洗いに行くのかぺたぺたと歩く音が遠ざかっていくのが聞こえる。


 よ、よかったぁー………さすがに終わったかと思った……


「はぁーーー」


 僕はたまらず止めていた息を吐き出す。


「ひゃんっ……だから、レン様、耳は止めてください」


「ああ、ごめん、つい安心しちゃって」


「そうですね、私ももう終わりかと思いました」


 まったくだよー、しかし出れなくなっちゃったなー、お鶴さんの声とかも聞こえたからほかの女性たちも入ってきたみたいだし、みんなが上がるまで出れないかな。


「ミーナ、ごめんね、つい咄嗟に引っ張りこんじゃって」


「いえ、元はといえば私が清掃中の札を掛け間違えたのが原因ですし、レン様が謝ることでは」


 あー、そうだったな、そういえばいつの間にか清掃中の札無くなってるけどどこいったんだ?


「そ、それにこんなにレン様と密着できる機会なんてそうそうないですし、私にとっては役得です!」


「え?」


 あっ! そういえばそうじゃん! さっきはバレそうになったから気にならなかったけど、ミーナに今抱きつかれてるじゃん!


 あ、やばい、そんなこと気づいちゃったから意識してきた……ミーナの身体柔らかいな。


「レン様、ドキドキしてきましたね」


「そ、そんなことないよー?」


「嘘です。私、耳いいんですよ? レン様の心臓の音こんなに至近距離なら聞こえます。私もさっきからずっとドキドキです、お揃いですね」


 くっ……いつもはアホっぽいことばっかり目立つのに、こういう時だけ妖艶的になりよってー


「ミーナ、僕も男だからそういうの弱いんだよー、勘弁して」


「嫌です。というか今レン様を落とすチャンスじゃないですか、レン様逃げられませんし」


 そう言って、抱きしめる力を強めるミーナ。


 わーー! 止めてよミーナ! 別に僕、童貞じゃないけど可愛い子にこんなことされたら反応しないわけないじゃん!


「それに、さっきからレン様に私の弱い所を刺激されて身体が熱いんです」


 え?! そんなことしたっけ?! あ、耳か……


 ど、どうしよう、出るか? いや出たら出たで外は女湯だからまずいし神気とか魔法とかで……いや無理だ神気は目立つし、魔法はクルアがいるから見られる。


「クルアさんにはこんなふうに噛まれたのですか?………はむっ」


 ミーナが抱きついた状態のまま少し背伸びをして僕の首すじに甘噛みしたり舐めてきたりしてくる。


 いや、僕、噛みつかれたい趣味とかもってないよ? くすぐったいな……ちょっと冷静になれた。


 と、思えたのはほんの少しだけだった。


 ミーナが背中に回していた手を僕の背中に直接入れてきて服をたくしたげてきた。


 ねぇ、この世界の女性、積極的過ぎない??


「ちょ……ミーナさすがにそれは僕も冷静になれないんだけど」


 って、言うとやめてくれた。


「理性がもたないんですか? ぶっ飛びそうですか? それならそれでいいですよ、レン様も男です。猛獣のようになってくれても私は受けいれますよ?」


 何言ってるのこと人! ならないからね、猛獣のようにはならないからね!


 さすがにそろそろ釘を刺そう、僕が冷静でいられるうちに


「ミーナ、そういうことは」


「恋人同士じゃなきゃだめ……ですよね?」


「そういうこと、だから」


「私じゃダメですか?」


 僕の言葉をさえぎってミーナが言ってきた。


「恋人、私じゃダメなんですか? 私はレン様のこと大好きです、愛してます。レン様は?」


 僕はミーナのことどう思ってるのだろう?


 たぶん、好きだろうな、そりゃあこんなにアプローチしてくれて、愛してるって言ってくれる子が嫌いなわけがない。


 でも、僕は……やっぱり


「僕はミーナのこと好きだよ、好きだけど答えられない、ごめん」


「そうですか」


 ミーナはちょっと顔をくもらせる。


 ちょっと胸が痛い……


「じゃあ、やっぱり強引にいくしかありませんね!」


「はい?」


 ミーナが背伸びをして唇を僕の唇に近づけてくる。


 いきなりのことで僕は反応できない。


 そして、一瞬だけ触れた。


 その瞬間……


「こら、ハルちゃん! 走ったら危ないよーー!!」


「大丈夫だよぉー! カレンもはやくぅー!」


「ハルちゃん! 前! まえー!!」


「えぇー?」




 ガッシャーーーーーン!!!




「きゃっ!」


「うわっ!」


 ハルが掃除道具入れにぶつかって倒れて、僕達は外に放り出された。


「イテテテテ……あれぇー? レンとミーナ?」


「「あははははは」」


 僕たちはもう、乾いた声しかでない……


「蓮くん、ミーナ、これはどういうことかな? かな?」


 僕は頭をフル回転させる、この絶体絶命のピンチを回避する方法……考えろ考えろ!!


 いや、こういうときはもうひとつしかない、僕は陸上部だいける!


「え、えーーと、華憐! 綺麗な身体だね!!」


「え? きゃあああああ!!」


「ミーナ! 逃げるぞ!!」


「え? あ、はい!!」


 僕は華憐が動揺してる間にミーナを連れて走って逃げた。


 脱衣所を出て、エレベーターを抜け、家を出て一晩中逃げた。


 が、<知識>の力を持ち神気解放の能力は超探索特化、そんな華憐から逃げられるはずもなく、次の日の朝にはクルアに捕まって華憐の前に正座させられた。


 それから二人でこってりと絞られ、クルアと華憐に尋問されすべてを白状、ルン裁判長の裁判を受け、有罪が確定。


 僕はお風呂掃除のほかにトイレ掃除も課せられた。


 僕、働きすぎな気もするんだけど……だってここトイレ多いし、今度ルンに分身の仕方教わろうかな。


 ミーナは前の裁判の時に獲得した僕の奴隷権利を剥奪され、お風呂掃除の増加が決定された。


 はぁ……ハルめ、恨んでやる!


 けど、あのままだと理性ぶっ飛びそうだったからちょっと感謝かも……




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