56話 修行
「おっふろっ、おっふろっ、我が家のおっふろ、おっさき~、がーーん」
僕は今、CMで割とすきだったセリフを言いながらお風呂に入ってる。
久々の一番風呂だ。
僕とミーナで1ヶ月お風呂掃除の刑を受けて初風呂掃除なのだが今日はミーナが気を失っちゃったから僕一人で洗った。
だから、これくらいの贅沢は許されるだろう。
今日は僕も散々な目にあったなー、五回くらいきゅうちゃんに噛まれるし、華憐に二回湖に突き飛ばされたし。
「魔法かー、なーんか見えるようにはなったんだけどなー」
僕は右手に魔力を集めようとしてみるが、上手くできない。
「神気と何が違うのかな」
僕は左手に神気を集めてみる、こっちは簡単に出来る。
そう言えばクルアが神気は魔力の上位互換って言ってたような……けど制御出来なくて暴走するって……
「よし、やってみるか」
僕は左手に集めた神気を薄く伸ばすように少しだけ戻した。
魔法はイメージ、水を作るイメージ、そして詠唱。
「『水よ来れ……作水』……おっ、ちょっと量が多いけどできた!」
やっぱり神気でならできる。
てかこれだったら僕も魔力習う必要なくないか? だって神気でできるし。
あーでも、神気だとどうしてもオーバーになりやすいのかー
これ以上神気を抑えるのは難しいし
やっぱり、魔力を完璧に感じるようになる! これが出来れば僕も魔力を扱えるようになるだろう、ならやることは……
「修行しよう!!」
修行といえば滝行! でもそれは痛いから僕はお風呂のジェットバス(肩)にやって来て頭から打たれてみる。
「南無阿弥陀仏〜、南無阿弥陀仏〜」
修行の時なんて言うのかなんて知らないけどこれでいいでしょー。
そういえば今日掃除して思ったけど我が家のお風呂無駄にデカすぎる。
まずは洗い場、20個くらいシャワーがある。
そんなにあるから必然的に広くなる。
次にお風呂は、普通の湯船と歩行湯、ジェットバス(肩)(腰)、炭酸風呂、電気風呂、薬草風呂、水風呂とサウナ、どこの旅館ですか?ってくらいたくさんのお風呂。
まぁ、僕はお風呂嫌いじゃないからいいんだけどさ、掃除がきついのなんの、ルンはいつもこんな広いのを掃除してたのかと思うと、なにもしてない僕が汚物と罵られるのも分かる。
「おー! レン兄ちゃん! 何やってるんだ?」
コロッケがお風呂に入ってきた。
「南無阿弥……わしゃあ〜仙人になるんじゃあ〜」
「ん? まぁよくわかんないけど頑張れよー!」
コロッケは歩行湯の方に行った。
そういえばよく泳いでるの見たなー、いるよね子供で歩行湯泳ぎたがる子。
それからかれこれ15分くらいジェットバスに打たれてた。
「うー、これは何かをつかめる気がしない……頭がジンジンするー禿げてないよね?!」
僕はジェットバスを上がって次はどうしようかと悩む。
「よし! 寒中水泳だ!」
僕は水風呂に来た。
つま先をちょこんと入れてみる。
「ひっ……やっぱやめようかな……」
僕は寒いのは超苦手だ、冬無理駄目。
「おい、コロッケのやつもう行ったぞ! 急げー!!」
そのときお武たち折り鶴の少年組が走ってきた。
僕にトンっとぶつかる。
バッシャーーーン
「え、ぎゃあぁぁぁぁぁーー!!」
「あ、ごめんなさい! レン様大丈夫ですか?」
僕は手を引っ張ってもらって水風呂から出してもらう。
「お湯……お湯を……ガクガクブルブル」
「お凧、お湯だ!」
「おう! おりゃぁー!!」
お凧が桶に入れたお湯を全力でぶっかけてくる。
「うぎゃっ!」
「大丈夫ですか?!」
「だ、大丈夫大丈夫、ありがと」
お凧、だいぶ破天荒なところあるな……
僕は水風呂修行は諦めた。
「水風呂出来ないとなると、かくなる上は…………サウナだ!」
僕はサウナに来た、あっついな〜モワッとしてる。
とりあえす、石に水をかけて、座禅を始める。
「今は昔、竹取の翁という者ありけり……」
南無阿弥陀仏はなんか違うかな〜って思ったから竹取物語を唱えることにした、やっぱこれも違うかな?
竹取物語が中盤に差し掛かった頃、サウナの扉が開いて誰かが入ってきた。
「お〜う、レンさ〜ま、いいお〜ゆだっぺ」
ん? こんな日本語を使う人は……
「ああ、ひろしさん、お疲れ様ー」
「こ〜んなところできぐ〜うだっペ」
ひろしさんは最近日本語をならってる。
誰だよ、教えてるやつ……おかしな日本語になってるぞ。
まぁ「だっぺ」なんて茨城の方の方言だし、そんなのこの世界の人が知ってると思えないからだいたい予想つくけど。
「レンさ〜まは、なにして〜るだっぺ?」
「修行中、僕は暑さを超越した存在になるんだっぺ!」
「それ〜は、さすがレンさ〜まだっぺ」
うぅー、気になる、だっぺが気になるよだっぺ。
それから僕は滝のような汗をかきながらひろしさんと話し合った。
巨木な家での生活はどうかとか、なにか不自由はないかとか、最近お鶴さんが厳しいとか、足が臭くなってきたとか……
かなり話した、2時間くらい話した……話しすぎじゃない?
ていうか、ひろしさん暑さに強すぎ! まったく話が終わる気がしないよ!
僕はもう、正直限界!!
「お鶴はもても〜てだっぺ、それ〜はライバ〜ルが多く〜て、おれ〜も求愛だん〜すをくふ〜くしたんだっペ、それ〜で……」
今はお鶴さんとひろしさんの馴れ初めの話を聞いてる。
けど、僕は頭がぼーっとして全く耳に入ってこない。
あ、なんだかフラフラしてきた……
「お鶴がお〜れをえら〜んでくれ〜たときはうれ〜しかっただっぺ、ん? レンさ〜ま大丈夫だっぺ?」
ひろしさんが心配してくれる。
「だ、だいじょ……」
僕は大丈夫と言おうとして倒れた。
「Ren!! Take care!!(気をしっかり!!) Help now! !(今助けます!)」
ひろしが何か必死に言ってるけどわからない。
運ばれる揺れを感じながら僕は意識を手放した。




