53話 シロ様のニギリメシ
僕達は、ニギハヤミコシロヌシ様、略してシロ様を連れて家のキッチンに立っていた。
シロ様はうちで作った米でニギリメシを作りたいらしい。
なんだかよく分からない感性をしているなぁー
「レン、土鍋は一体どこにあるんだい?」
「土鍋? そんな大層なものないよ」
「土鍋がないのかい? それは困ったな……よしっ! なら土鍋を作ろう!」
「え? 今から作るの?」
「当たり前だろう、良い米をたくにはいい土鍋が必要なのだ!」
土鍋から作るの?! てか、土鍋で炊くの? ガチの本格派だぁ……
僕は土から作るのだと思っていたが、違かった。
シロ様が言う鉱石を集めるだけでいいみたい。
そして、集めてきた。
まぁ、だいたい全部、この前コロッケたちの住処に行った時にとってきていた。
「私は錬金術師なのだ、だからこの鉱石たちを錬成して作る」
シロ様は錬金術師らしい。
ほぇー、エル〇ック兄弟的な? ちびって言ったら怒るかな? シロ様意外とちっちゃいし。
そんなこと考えてると、シロ様が地面に手を置いて「錬成」ってつぶやいた。
すると鉱石の下に魔法陣みたいのが浮かび上がって、鉱石がグニョグニョ動き出す。
「なぁ、華憐、錬金術師ってよくアニメとかにもちょくちょく出てくるけどどういう存在なの?」
「錬金術師は錬金術を使う人だよ、錬金術は卑金属から貴金属を作ろうとする試みのことだよ」
華憐の説明は難しいんだよなぁー
「んーー、わからん」
「つまり、ざっくり言うと石を鉄に変えるみたいに物を別の物や形に変えたりする術ってことよ」
なるほど、クルアくらいざっくりなら僕もわかるや
そうこうしていると、鉱石がだんだん鍋の形になっていって、
「ほら、できたよ」
って、シロ様今まさに作った出来たてホヤホヤの土鍋? を持ってきた。
「なにこの、キンキラの土鍋」
シロ様が持ってきた土鍋は、まぁ何とも高級そうなキラキラしてる土鍋。
「この土鍋が熱伝導率がちょうど良くて美味しくふっくら米がたけるんだよ」
「そうなのかー、僕はその筋の専門家じゃないからわからん」
「食べてみれば違いがわかるさ、さぁ! 炊きにいこう!!」
そう言って土鍋を持ってキッチンへ元気に向かうシロ様。
「なーんか、僕の知ってるハ〇様と違うなー」
「お米大好きっ子みたいだしね、竜とかになったりするのかな?」
「え、あの人竜になるの?」
「いやね、クルア、僕達の世界にはシロ様に似た人がいて、その人、竜になるんだよ」
「竜人族ってことかしら?」
竜人族? そんな人がいるのか。
でも、シロ様は違う気がするなー、あれはただのお米好きだ。
そんなことを思いながら僕達もシロ様の後に続いた。
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再びキッチン。
戻ると、シロ様がいそいそとお米を炊く準備をしていた。
「レン、玄米じゃなくて精米はないのかい?」
「あー、精米機作ろうと頑張ったんだけど結局出来なくて諦めたんだよー」
そう、お米をゲットした日、炊いたら硬かった。
なぜ? って思ったら不覚、玄米のままだった。
ただ、精米の仕方なんてわからない、だって現代っ子の僕は精米機使ってたもん、あとは精米された米。
華憐は知ってるみたいで、やろうとしてたけど不器用で断念。
僕も教えて貰ってやったけど無理、めんどくさい! てことで断念。
だから、精米機を作ろってなったけど今の僕達の文明では不可能。
とういことで玄米で妥協してたべていた。
「なるほど、なら私に任せておきなさい」
「え? 精米できるの?」
「もちろんだとも、見てるといい……『精米』!」
シロ様が玄米に手をかざした、すると……
「え?! なんで?!」
「ふわぁぁぁぁ、蓮くん! 白いお米、白米ですよ!!」
玄米が精米されて白米になった。
シロ様なにしたの?!
「私は『精米』スキルを持ってるからね」
いや、何そのスキル。
本当にただのお米好きじゃん!
「すごいよ! 蓮くん!」
「まぁー、確かに便利だけどちょっとお米に偏りすぎじゃない??」
僕もお米好きだから精米できるのはいいんだけどさ、それがスキルって言うのはなんだかなーって感じがしない?
「さぁ! さっそくお米を炊こう!!」
シロ様はテキパキとお米を炊き始めた。
僕達は炊きあがるまで邪魔しないように端っこに避けておく。
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ピーッ、ピーッ、ピーッ、ピーッ
え?! まさかの炊きあがり音付きの土鍋だったの?!
薪を入れたり風を送ったりと火の調整をしているシロ様を頑張ってるな〜って思いながら眺めていたら、土鍋が炊飯ジャーみたいにピーピー鳴り始めた。
「よし、炊けたみたいだね」
「し、シロ様? その効果音は?」
「炊きあがったら音が鳴るように錬成したんだよ、便利でしょ」
いや、まぁたしかに便利だけどさー、無駄に凝ってるなー。
「さて、じゃあ開けてみようか」
そう言ってシロ様が土鍋の蓋を開けると
「「「おおおーー!!」」」
まっ白ふっくらでホカホカの湯気がたってる美味しそうに艶のある白米のお姿が……グスッ……なんか感動してきた
「それじゃあみんな、手に水をつけるんだ」
「え? このままよそって食べるんじゃないのー?
「何言ってるんだ、白米の真価はニギリメシだろう」
どうやらシロ様はニギリメシにこだわりがあるらしい。
まぁいいか、シロ様が作ったご飯だし。
僕達は手に水をつけてご飯を握り始める。
「熱っ……」
「あわわ、ボロボロしますー」
「ミーナご飯粒ついてるよ」
「華憐もついてるぞー」
「えっ!!」
わいわいわいわいみんなでご飯を握ってく。
クルアは体温低いから熱いのが苦手みたい、ミーナはご飯粒を飛ばしてる、華憐はミーナのご飯粒を取ってあげてるけど自分にもついてる。
「みんな、元気が出るようにまじないをかけて握るんだ」
って、シロ様が言ってる、こういうとこはハ〇様なんだけどなぁー、
ていうか、シロ様の握るおにぎり上手いな、手順から完成まで完璧すぎる。
まず、1回の米の量、ひとすくいで適量の米をしっかりと取ってる。
そこから柔らかく空気を包むように優しく時に激しくたまに転がして握っている。
そして出来上がるニギリメシは、私はニギリメシとして生まれてきました!っと言ってるようだ
僕のもなかなか上手いと思うけど、違いは一目瞭然。
「な、なんてこったこの僕が、<才能>の力を持つ僕が勝てないと自覚させられてしまった……」
「蓮くん何言ってるの?」
「才能はその分野の天才には勝てない事を思い知ったんだ……」
ちょっと遠い目をして言ってみる。
「大丈夫? ほらおにぎり食べな、元気が出るよ蓮くん」
「ん、ありがとー」
わぁ、元気が出る!!
僕達はおにぎりをめちゃくちゃ作って今日の晩御飯とした。
盲点だったのは具を入れなかったこと、せめて海苔くらい貼ればよかった……海苔なんてないけど……




