45話 ミーナの尋問
ダンジョンから帰ってきて一晩たった。
昨日帰ってきたらなぜか家に入れなくて、久々にかまくらで寝ることになった。
久々に地面に直寝で体が痛い……
重たいからだをゆっくり起こすと、僕の上に幼女体系のクルアがいた。
体が重かったのはクルアのせいか……
てか、何やってるのさ、寝袋で寝ろって言ったのに!
「クルア、何でここで寝てんだ? おきろ!」
「うーーん、もうちょっと寝てるー」
「おーーきーーろーー」
「いーや」
って言ってペトっとくっついてくるクルア
こいつー、幼児体型になると行動まで幼児になるのか
てか、なんで幼児体型に戻ってるの?
「ほら、おきる!」
僕は無理やりクルアを起こしてやる。
「もー、朝から強引なんだから、まったく」
「誤解生みそうなこと言うな! それよりなんで幼児体型??」
「こっちの方が燃費いいからよ……ウニュ〜〜」
燃費って……てか、伸びの仕方可愛いな
「レンは少女と幼女どっちの私が好き?」
「いや、僕は普通にロリコンではないけど」
「なら、戻るかしらねー」
そう言ったとたん、クルアの身体がどんどん大きくなって、高校生くらいの体形になった。
「寝袋はどうしたんだよ」
「寒かったんだもの、レンの方が暖かかった」
「いや、意味わからんけど……まぁいいや、流石に今日は家入れるだろー」
僕達は橋を渡って巨木な我が家の玄関に移動した。
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玄関に行くと、華憐とミーナが腕を組んで立っていた。
「ただいまー、なんで昨日玄関開かなかったの?」
とりあえず昨日の質問をすると華憐たちはチラりと僕を見て、クルアを見る。
「カレン様、彼女ですか?」
「そうだよ、多分この人」
「彼女はクレアって言って……」
僕がクレアの紹介をしようとすると、華憐とミーナはクレアの腕をガシッと掴んで玄関へ引っ張って行った。
「え? ちょ、なに? え?!」
クレアも突然のことでビックリしてる様子。
僕は何が何だかわからず突っ立っている。
そしてそのまま玄関にクルアを引っ込んでバタン!と勢いよく扉が閉まった。
「え? うそーー」
僕は玄関扉をガチャガチャしてみる。
開かない……
「華憐!! ミーナ!! 僕もいるんだけどー!! おーーーい!!」
その日はもう、僕は玄関の前で華憐とミーナの名前を呼び続けた。
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さて、私はカレン様がダンジョン内でレン様と一緒にいてレン様の首筋に噛み付いていたという女を連れて、61階の誰も使ってない部屋、又の名を尋問室に連れてきました。
連れてくる途中、レン様が私の名前を呼ぶ声がしたが今は振り向いちゃいけません!
カレン様は『カツ丼』とやらを作りにキッチンに向かいました。
部屋には簡素な机を挟んで二脚の椅子と、部屋のかどにも椅子と机があり私の忠臣のリーアが羽根ペンとお鶴さんが作った布の紙を持って座っています。
この女は、この部屋に来る途中、エレベーターを見て「すごいわ」とか「どうなってるの」とか言ってたけれどそんなこともどうでもいいことです。
「さぁ、そこの椅子にかけなさい」
女は私が指示した椅子に座ります。
さぁ、洗いざらい話して貰いますよ、尋問を始めましょう。
ちゃんと威張るような態度をとりませんと。
「まずは、あなたの名前を聞きましょう」
「私はクルア=フォン=スタッドよ」
リーアが話したことをすらすらと紙に書いていく。
ふむ、私と同じく姓があるということは王族か貴族の方ですか、
「そう、じゃあクルアさん、レン様とダンジョンで何をしていたか、あることないこと話してもらいます」
「ミーナ様、ないことは話させてはダメですよ」
リーアの的確なツッコミが入ってきます。
「嘘はつかないでくださいね、私、嘘つきの目はわかるのですぐバレますから」
「えーと、嘘なんてつかないわよ、察するにあなた達はレンの仲間なんでしょ?」
「ええ、そうです、まずその『レン』という親しげな呼び方について詳しくいいなさい」
「この呼び方はレンが『レンでいいよ』って言ってたからよ、だから言われた通り『レン』って呼んでるの」
ふむふむ、確かに私の時も『レンでいいよ』って言われましたね、これはいいでしょう。
「次にあなたのことについて教えなさい、あなたは吸血鬼ですね?」
「そうよ、私は吸血鬼の先祖返りよ」
先祖返りって……吸血鬼ってだけでもかなり危険なのに
「じゃあ、次にダンジョン内で何があったかを聞かせなさい、まずレン様とはどこで出会ったのですか?」
「私がレンと出会ったのは真っ暗闇のちょっと広めの空間よ、そこで瀕死の私を助けてくれたのよ」
なるほど、レン様らしいです、吸血鬼の方も助けようとするのですね
「具体的にどうやって助けられたのですか?」
「私が血を分けて欲しいって言ったらレンが自分の指を切って血を垂らしてくれたわ」
む、嘘は言ってないですが、まだ何かある感じですね
「まだ言ってないことがあるのではありませんか?」
「な、何も無いわよ」
あ、これは嘘です。
私にはわかりますよ、嘘つきの目です!
「嘘はわかると言ったでしょう、正直にいいなさい」
「ほ、本当に何も無いわよ!」
まだ、しらを切るつもりですか、まぁいいです、これはあとにしましょう
「はんっ、どうだかです、とりあえずこれはあとにします、それで? 助けて貰ってどうしたのですか?」
「それから私はレンにお礼がしたくて、私に出来ることならなんでもするわって言って、なら一緒にダンジョンを攻略しようって言われたのよ、たぶん私の身の内の話と3ヶ月間ダンジョンに潜ってたことを伝えたから同情してくれたのよ」
ふむふむ、なるほど、ここもレン様らしいですね
「身の内とは??」
「それは、私が先祖返りの吸血鬼で……」
それから私はクルアさんの身の内の聞いて、レン様は同情なんかではないなと思いました。
「ふむ、クルアさん、たぶんレン様は同情なんでそんなことを頼んだんじゃないと思いますよ」
「そんなこと、わかってるわ、私が勝手にそう思っちゃうだけよ」
「そうですか、ならいいです、それでそのあとはどうしたのです?」
「そのあと、とりあえず私の服は傷だらけでボロボロだったから着替えようと思ったらレンに胸を触られたわ」
はい?? 今なんと? 胸を触られた……?
「ダウト!! 嘘です!! あのヘタレン様が胸を触ってくるわけありません!!」
「嘘じゃないわ、私、初めて胸なんて触られたから責任とって貰ったし」
せ、責任?! 一体何を……
「何を! 一体何をしたのですか!! 」
「何って、血を吸わせて貰ったわ」
よかった、責任を取るってただの吸血行為でしたか……って! そこじゃなくてほんとに?!ほんとにレン様に胸を触られたんですか?! ありえない!!
「やっぱり嘘ですね! レン様が女性の胸を触ることなんてできるはずありません! さぁ、ホントのことを言いなさい!」
「だから、さっきからホントのことを言ってるじゃない」
くっ……なかなか口を割りませんね、まぁいいでしょう、これも後で要尋問です。
「まだ納得したわけじゃありませんが、進まないので次に行きましょう、それでそのあとは?」
「そのあとは、ガーディアンの近くまで行って、万全な状態で戦うのが好ましいから、私のせいだけど血がなくなりすぎてフラフラしてたレンを休ませたわ、寝袋が一個しかなかったからレンに使わせたかったのだけど、私が使えの一点張りだったから二人で入って無理やり使わせたわ」
なるほど、血を吸いすぎたというのと同衾というのはいただけませんが、レン様のために無理矢理でも休ませるのはちゃんとレン様のことを思ってのことで好ましいですね。
「ふむふむなるほど、レン様を無理やり休ませるのはいいでしょう、でもなんでクルアさんまで同じ寝袋に?」
「寝袋は一つだけで、私のなんだから私が使いなさいって言われたのよ、なら私も使うから文句ないでしょってことで」
「これもまだ言ってないことがありますね、しっかり言いなさい」
「あ、あの、えと、その日レンが慰めてくれて、それでレンの温もりが感じたいなぁと」
「それで? 具体的にはどのように慰めてもらったので?」
「えっと、一番言われたい言葉を言ってくれて頭をポンポンって……」
レン様らしいですわね、私も同じようなことがありました。
レン様のそういう所が好ましいのでこれは許しましょう。
「それで、起きてからはどうしたのです?」
「私が最初に起きて、レンを見つめていたら胸を触られて強めに揉まれたわ」
なっ、強めにもまれた?! そ、そんなこと……
「ダウト!! 嘘ですね!絶対嘘です! レン様がそんなことできるはずがありません! ホントのことを言いなさいって言ってるでしょう!!」
「だから、ホントのことを言ってるじゃない」
「嘘です!! 私には嘘がわかると言ったじゃありませんか!!」
舐められてはダメです、威圧です威圧感
「嘘じゃないわ」
まだ言いますか!! しょうがないです、まずは全部吐かせましょう
「まぁいいです、後でじっくりねっとり聞きますから、それでそのあとは?」
「そ、そのあとはえっと……お、おぼえてないわ!」
む、怪しいですね、これも後で要尋問です。
「なら思い出したら言ってください、それでガーディアンは倒したのですか?」
「それならバッチリよ、レンがそのゴーレムをぶっ倒したわ、そのあとお土産にするって言い出した時はビックリしたけど、まぁレンだし血も吸わせてくれたからしっかり持ってきたわ」
なるほど、そこからの話は概ねわかります。
カレン様がずっと見てましたから。
さて、ここからは怪しいところの尋問ですね、まずは最初の
「じゃあ気になったところを聞いていきます、まず指から血を垂らしてくれたところ、まだ何かありますね?」
「う……わ、わかったよ、そのレンの血があまりに美味しくてつい、理性を失ってレンの指にむしゃぶりついて、それでも足りなくて首筋に噛み付いて襲っちゃったのよ!!」
………なるほど、それは私でも言いたくないですね、赤裸々すぎます。
「だけどっ! だけどねっ! レンは、無理やり噛み付いた私を受け入れてくれたのよ!! 嬉しかったなぁ〜〜」
レン様らしいですね、でも惚気は聞きたくなかったです。
まぁ、これはいいでしょう、では次です。
「では、次に気になるところ、『服を着替えてる時胸を触られた』これは、うそですね?」
「いいえ、嘘じゃないわ」
バァン!!
私は思いっきり机を叩きます。
ここが正念場です、相手を脅すのです、すーーっと深呼吸して
「嘘を言うなぁー!!」
と、全力で叫んでみます。
「……………」
クルアさんはぽかんとしてます、これはカレン様が言ってた無言でやり過ごそうとするやつですね!
そうはさせませんよ!
「なんとか言ったらどうですか?」
私が顔を近づけてちょっとがんを飛ばして睨みつけるように言うとクルアさんはみるみる物理的に小さくなって幼児体型になってしまいました。
え? あれ?! 私やりすぎた??
「…………う、嘘じゃないもん……」
クルアさんは涙目になっています。
ほんとにやりすぎちゃったかもしれません。
どうしたらいいか分からずおろおろしていると
扉が開いてカレン様が来ました。
「ミーナ、熱くなりすぎ、ちょっと来なさい」
私はカレン様に呼ばれて廊下にでます。
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「カレン様、私やりすぎちゃったでしょうか?? 鞭役」
「うんー、まぁ少しだけね、でも最高の演技だったよ! あとは私に任せて」
この尋問はレン様粛清大作戦の一環です。
レン様を探しに行って帰ってきたあの日カレン様と考えました。
カレン様によると尋問とは飴と鞭、私は鞭役でカレン様は飴役です。
「カレン様、その格好はなんですか??」
「刑事といえば茶色いスーツって決まってるの、お鶴さんに至急作ってもらったの、似合う??」
「はい! お似合いですよ」
「ありがとう、じゃあ飴のターン行ってくる!」
「頑張ってください!」
カレン様は尋問室に私はその隣の覗き室に行きました。




