40話 クルアは強引
「さて、じゃあそうと決まれば早速いきましょ」
「おーけい、道案内よろしくー」
僕達はダンジョンの最奥へ向かうべくクルアに道案内してもらうことになった。
「じゃあ、ライト消すね」
「え?」
クルアがフッと手を振ると光の玉が消えて空間を暗闇が包んだ。
ちょっとまって! 僕何も見えないんだけど! クルアどこだー!
僕は暗闇を手探りでクルアを探す。
「クルアー? どこだー……ん?」
なんだか手に柔らかいものが……
「きゃあっ!! ちょっとどこ触ってるのよ!!」
あれ? もしかして僕やっちゃった??
とりあえず、灯りを…
「神気解放!!」
再び赤金色のオーラが僕をつつみ、周りを少しだけ明るくしてくれる。
そこには胸を抑えて顔を真っ赤にしてる下着姿のクルアがいた。
「ちょっ、なんで下着?!」
僕は慌てて後ろをむく、ついでに神気解放も解いておく。
「服がボロボロだったから着替えようと思って灯りを消したのよ! それに暗闇の中でそこだけ光ってたら魔物がよってくるでしょ!!」
「な、なら最初にそう言ってよ! 僕、暗闇だと何も見えないんだって!」
「それくらい察しなさいよ! む、胸をまさぐられた……もうお嫁にいけないわ……」
「そ、そんな大袈裟な……」
「大袈裟なんかじゃないわ! レン、責任取りなさいよね!!」
そんな理不尽なぁー、僕まだ嫁を貰うほどの覚悟できてないし、クルアのこともよく知らないし好きな訳でもないし
「でも、ほら、クルアは別に僕のこと好きじゃないでしょ、だから結婚しないって!」
「?? 貴族の結婚に好きとか好きじゃないとか関係ないわよ」
え? なにそれ……あ、政略結婚みたいなやつ? でも僕普通の人なんだけど、てかやっぱり名前聞いて思ったけどクルア、貴族だったんだ
「それは貴族同士の結婚だろ! 僕は普通の身分だぞ! 平民だ!」
「まぁ、それもそうね、なら他の方法で責任とってもらうわ」
えー、なにそれ、なんか怖いんだけど。
女の人が責任とか言うのって恐ろしいよね
「はい、もう着替えたからこっちみても大丈夫よ」
うーん、そんな事言われてもクルアがどっちいるかなんて暗すぎてわかんないんだけど……
てか、今思ったんだけど服とかどこから出したのかな?
「なぁー、服とかどこにあったんだ?」
「あはは!……レン、誰に話しかけてるのよ、私はこっちよ、服は空間魔法の『宝物庫』って魔法で空間に収納してるわ」
うわっ! なにそれ便利! ぜひ使いたい!!
「クルア!! その魔法僕にぜひ教えて!!」
「だからレン、誰に話しかけてるのよ、私はここよ」
「暗くて何も見えないんだって! なんでクルアは見えるの?!」
「私? 私は吸血鬼のスキルで『夜目』を持ってるからよ、そうレンは本当に暗闇が見えないのね…ふふ」
夜目だと!? ずるいぞー! あとなんか怪しい笑い声した!
「ねぇ、レン? 私はどーこだ? ふふ」
「ちょ、クルアさん?! ……うわぁっ!!」
僕は後ろからいきなり押さえつけられた。
「ふふっ、さぁ、さっき私の胸をまさぐった責任をとってもらうわよ………カプッ」
さっきのは僕にも非があるからそう言われると強く出れない
「いてっ、あぁ、あんっ/// あぁぁぁぁ!!!」
僕はMじゃないけど暗闇で可愛い女の子に押し倒されるってなんか背徳感あって目覚めそう、抵抗できないし……
って、ダメだダメだ! 僕はエムじゃない……Mじゃない……僕はMじゃない……
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「レン、ちゃんとついてきなさいよ」
「わかってる、わかってるからもう少しゆっくり」
僕は今、クルアに手を引かれて真っ暗なダンジョンの中を進んでる。
クルアの手冷たいな、吸血鬼だからか?
ダンジョンなのに光を使わないのはここの魔物は光に寄ってくるかららしい、そう言われたら僕も神気解放は使えない。
だから、夜目が使えて道案内してくれるクルアが先導中。
それ以外にも今の僕は顔が真っ青でちょっとフラフラしてるらしい、血を飲まれすぎたみたい、逆にクルアは生き生きしてる。
「ごめんなさい、ついつい美味しくって飲みすぎちゃったわ」
「うん、まぁもうそれはいいよ、それよりガーディアンの部屋はまだ?」
「もうすぐよ、たしかここを曲がって……あ、あったあった、あそこよ」
うん、あそこよって言われても僕見えないんだって、まぁーついたならいいや。
「それじゃあ、さっそく倒しに行こーう!」
「何馬鹿なこと言ってるのよ、私のせいだけどレン今の状態じゃ戦えないでしょ、少し休むわよ」
「大丈夫だよ、それに仲間たちは今日中にかえってくると思ってるだろうし、早く帰ってあげなきゃ、あとがちょっと怖いし」
「だめよ、ほんとに今のレン、ブルーオークもびっくりの真っ青人間なのよ? そんなんで帰った方がそのお仲間さんたちを心配させるわ」
「え、でも……」
そのとき僕のお腹が『ぐうぅー』って鳴った。
「ほら、お腹は素直じゃない。私、保存食持ってるから、休憩するわよ」
「はぁー、わかったよ、ちなみに光は?」
「だめよ、ここの魔物は光に寄ってくるんだからそんなのつけたらずっと戦闘になるわ」
しょうがない、僕もずっと戦闘はやだから言うことを聞いておこう
「『防御幕』、はい、結界を張ったから当分は安全よ」
「それも魔法??」
「そうよ、結界魔法は魔力を圧縮して作るのよ」
「へー、僕にも教えてよ、ていうか神気で同じことできないの?」
そう、僕には魔力は使えないけど神気はまぁまぁ使える、一応毎日寝る前に少しだけ訓練してるから。
「できるわよ、できるけど神気は魔力の上位互換みたいなもの、いきなり神気でやろうとすると制御出来なくて暴走を起こし大爆発するからやめときなさい」
うわ、なにそれこわっ! たぶん<才能>の力でなんとかなると思うけど失敗しない訳では無いから辞めておこう。
「魔法を使いたいなら、まずは魔力制御を完璧にする事ね、魔法を使う時の基本で究極よ、名のある魔法使いたちはこの魔力制御が普通の魔法使いと比べてずば抜けてるわ……はい、保存食だけど食べときなさい」
クルアは僕の手になにか固いものを載せた、大丈夫だよね? 変なものじゃないよね?! ちょっと怖いなぁ
「ありがとう、それじゃあクルアもずば抜けてるの?」
「当たり前じゃない、魔法は魔力制御とイメージ力でできるわ、それを補助するのが詠唱よ」
「でも、クルアは無詠唱じゃない?」
「私の場合は初めて魔法を使った時から無詠唱よ、私、一応、吸血鬼の先祖返りなのよ」
ほえー、先祖返りってすごいやつじゃなかった?
クルアによると先祖返りは普通の吸血鬼とは違って、魔力の適性が生まれつきすごく高くて、魔力制御も一級品、無詠唱は当たり前、さらに魔力が続く限り自動回復もするらしい、
僕が言うのもなんだがとんだチート吸血鬼だ
「ただ、それを快く思ってない人も沢山いるのよ、先祖返りだからこれくらいできて当たり前って無理難題押し付けてくる奴がいたり、努力してないくせになんでも出来ていいわよねって冷たい目で見られたり、私だって頑張ってるのにいろいろと、このダンジョンに来たのも頑張りを認めてもらおうと思ってだし」
んー、先祖返りの吸血鬼にも色々と苦労があるんだなー
気持ちはよくわかるなー、僕も部活とかでよくそういうこと言われた。
お前はこれくらいできて当たり前、こんなことで喜ぶなもっと努力しろ、だとか逆に出来ないと、なんでこんなこと出来ないんだ努力が足りないんだよまったくとか、ネチネチネチネチ
だから、そういうときなんて言われたいかもわかる。
認めてあげればいいんだ。
「クルアは頑張ったね、3ヶ月もかけてこんな暗闇の中をたった1人でこんなとこまで来て、まぁだから、なんだしっかりとここの最奥にあるものを手に入れて、私はこんなに頑張ってこれを手に入れたんだ、お前らにこんなこと出来ないだろって胸張って自慢してやればいいんだよ」
って、言いながら僕はなんとなくそこにいるなってわかるクルアの頭を撫でてやった。
「う、うん、そうね! って、何頭撫でてるのよ! そんなことされても嬉しくないわよ!」
はいはい、なんか子供っぽいなー、妙に大人っぽいところもあるのにー
僕はなんだか無性になでなでしたくあげたくなって、もっと撫でてやる。
「ちょ、ちょっと撫ですぎよ! まったく、ほら、寝袋だしたからレンは横になって休みなさい、ほんとに顔真っ青よ?」
「いや、いいよ、僕は見張りしてるから、それにクルアだって瀕死だったんだから無理しなさんなー」
「はぁー、暗闇で見えないのにどうやって見張りするのよまったく、魔物が来たら私が分かるから大丈夫よ」
「んー、でも寝袋一個だけなんでしょ? ならクルアのなんだからクルアが使いな」
「わかったわよ」
そう言って寝袋の入る音がする、そしてパンパンって布団を叩くような音がした。
僕がぼーーっと何も見えない暗闇を見つめていると、またパンパンって音がする、クルアが寝袋叩いてるのかな?
「あ、そっか見えないんだったわね、レン、寝袋の隣開けたから、その……は、入ってきなさいよ」
「へ? いやいやいや、だめだよ!」
恋人でもないのに同衾はダメだって!! なんか華蓮の時もこんなことあったな、デジャブ……
「う、うるさいわね、私がいいって言ってるんだからいいのよ! へ、変なことしたら責任とってもらうわよ!!」
変なことなんてしないよー、まず同衾しない! よし、ここは無視で行こう!
僕はジーッとしてることにした、そもそも見えないから動けないし
「『念動力』……」
「え?! ちょ、なになに?! 身体が勝手に……」
突然身体が勝手に動いて、寝袋に入れられた。
「レンがワガママ言うからよ、私には魔法があるからレンの身体を操るくらい簡単なのよ」
えー、なんだそれ! ほんとに体動かないし!! 魔法って怖い!!
すると、背中にピトッと柔らかい感触を感じた。
「クルア??」
「レンはあったかいわね」
クルアが僕の背中に抱きついてきた。
僕は動けない、もう降参、どうせ身体も動かせないし、クルアのされるがままになってよう。
僕は諦めてクルアと一緒に休むことにした。
ちなみにクルアがくれた保存食、色も形も分からなかったけど食べたら鉄の味がした。
絶対成分血液じゃん!!




