228話 いざ行け! ブリリアント王国! (『夢』の勇者ノノ)
◇◇レンside◇◇
「……は?」
思わず間の抜けた声を出しまう。慌てて振り向けばノノちゃんはピッと僕の額に人差し指を置いた。
「『ふっとべ』なの~」
ノノちゃんがそういった瞬間、僕の身体はすさまじい速さで後ろへ吹き飛ばされる。
「がっ……っ! はっ……!」
吹き飛ばされた先にはさっきまで何もなかったはずなのに、そこには破壊不能な壁があって思いっきり突っ込む形になる。
衝撃によって肺から一気に空気が押し出されて、一瞬意識が飛びかけるところだった。
「い……ったい、なに……が?」
「この異界はいわばネネの夢の中なの~。つまりネネがそこに行きたいと思えば移動しなくてもそこに行けるし、吹っ飛んでほしいなって思えばあなたは吹っ飛ぶの~」
フワフワと宙に浮かびながら優雅にこっちに来るノノちゃんは余裕綽々という感じだ。
「ほら、頑張って避けないと次はくし刺しになっちゃうの~--『夢ノ幻槍』『ふえて』!」
ノノちゃんがそう言うと同時に、槍が数十本に増殖して一気に襲い掛かってきた。
次々と飛来してくる槍をエリュシオンと体さばきでそらしたり躱していく。
これくらいならば見切ることくらいは造作もない、いつでも反撃に移れるように期をうかがっていると、
「そこに『あな』なの~」
ピシッと指さされた場所は僕の足元で、唐突に地面が無くなったと思ったら僕の体重が一気にずれる。
(………レンっ!)
「なっ……! ぐあぁぁぁ!!」
そうなれば当然、迫ってくる槍を避けきることなんてできない。僕の身体は何とか身体を捻ったり、エリュが神気で障壁を張ったりしてくれてめった刺しだけは避けたものの少なくない怪我を負う。
だが、この一瞬は思わぬ勝機! どうせ避けられなくなるのなら肉を切らせて骨を断つ!
そう思った僕は傾く体重に逆らわず、そのまま地面に手をつく。と、同時に一気に力を入れて身体を押し上げ槍の攻撃から逃がれてノノちゃんがいるところまで跳躍。エリュシオンを振りかぶって切り込む。
「はぁぁぁああ!」
「おぉ〜、すごい身体能力なの〜」
普通ならありえない曲芸じみた攻撃であるのにノノは軽々とそれをかわしてみせた。
くそっ、確実に不意打ちだったはずなのに! でも、これで壁とか穴とか鬱陶しかった地面からは離れた!
僕はそのまま夜明けの翼を顕現し、空中戦へ移行する。
僕は切り下ろした状態から切り上げ→そのまま流れるように切り下ろし→身を翻して大きく切り下ろす。
以上、マーベラスコンビネーション。前に華憐に迫られて練習した連撃コンボ。まさか実戦で使うとは。
当たれば一気にダメージを稼げるコンボだけれど、それは当たれば、だ。
ノノちゃんはヒラヒラと踊るように全撃を躱して見せた。
「くっ……なら! もう一歩!」
何も無い空中だが、そこに地面があるような感覚で踏み込んで、竜の炎を纏わせた左腕の義手をノノちゃんの身体に打ち付ける。
「『破砕衝撃波』!」
義手に付与した内側から砕く魔法も発動させ、これで決める気持ちでいく。
「ほーいなの~」
しかし、そんな僕の気持ち虚しくノノちゃんがふっと後ろに下がって軽々と避けられた。
流石にこんな完全に見切られれば、苦笑いしか浮かべられない。
「くそ、まるで見えてるみたいに避けられるな」
「ん~、そうなの~。あなたの言う通り見えてるの~『予知夢』で」
なるほど、予知夢か……『夢』の勇者の能力、ちょっと強力すぎると思う。
「それよりも、神様の力使わないの~? そうしないと勝負にならないって言ったはずなの~。早くしないと天使さん、手遅れになるの~」
ノノちゃんは圧倒的に有利であるからか、そんな強者の余裕を見せつけてくる。
……もう、なりふりかまってられないか。覚悟を決めよう。反動がなんだ、そんなのは後にどうにでもなる。ルカは今、もっとつらい目に合ってるんだから。
「すぅーー……はぁーー……」
大きく深呼吸してから、あの不思議な空間にある六畳間の畳の上でソシャゲに興じるあまちゃんの姿を思い浮かべる。
最近連絡来ないけど、いったい何をやってるんだか……。まぁ、いいや、また今度会ったときにでも聞こう。とにかく、あまちゃん、力をお借りします。
「『神気解放:天照大神』!」
力を開放した瞬間、僕を中心に眩い七色のオーラが広がり、エリュシオンの刃が、僕の髪と瞳が何色にも見える七色の輝く燃えるような色合いに変わっていく。
見える世界が、聞こえる音が、感じる空気が普段のそれとは次元が違うような気がして自分が一歩、神に近づいた気持ちがしてくる。
「おぉ~、すごい綺麗なの~。それになんだか敬いたくなるような気がしてくるの~」
「それはどーも。けど、そんなことはいいから、早くルカを何とかする方法を教えて欲しいな」
僕がスッとエリュシオンを構えると、どこかうっとりしていたノノちゃんは慌てて槍を構えなおす。
けれど、そうするのはあまりにも遅すぎる。
「悪いけど、もう切ったよ? 僕が構えた時は既に」
「? 何を言って、え……ぁ……」
ノノちゃんが不思議そうな顔をした瞬間、目のハイライトが消えてノノちゃんの身体から血が噴き出し無数の切り傷が生じた。
流石は神様の力というか、さっき言った通り僕は構えた時にはもうエリュシオンを振っていたんだけどノノちゃんはあまりの速さに何かされたことさえわからなかったわけだ。
とりあえず、これでノノちゃんは倒した。
まずはこの力でもルカを救い出せないか試してみよう。それでだめだったら、ちゃんと死なないようにはしてあるからノノちゃんのけがを治して聞くしかない。
ルカはまだ全部が変色はしてない。まだ、完全に絶望してない。なら大丈夫だ。
それを確認してルカに近づこうとして、
「はぁ……はぁ……。まだ、終わってない、の」
ノノちゃんの声がした。
まじか、この神様の力も対外だけど、勇者も勇者でとんでもないな。さっきのは出血多量で気を失ってもおかしくないのに……
「……は?」
この世界魔法をかけられて何度目だろう、驚かされたのは。
そこにはさっきまで血を噴き出して倒れたはずのノノちゃんが息も乱れて冷や汗をかきながらも、全くの無傷でそこに立っていた。
おかしいだろう、さっきは確実に切った。手ごたえもあったし、目の前で彼女は倒れたはずだ。なのになぜ……。
「ふぅ~、落ち着いてきたの~。まったく悪夢なんて久しぶりに見たの~、ノノが切り刻まれる悪夢」
「悪夢……さっきのは夢だったってことか?」
「お~、察しがいいの~。そうなの~、さっきノノは確かに切り刻まれたけど、それは悪い夢……にしたの~。『邯鄲の夢』、起きたことを夢に、つまり無かったことにする能力なの~。言ったでしょう? この世界はノノの夢だって」
お久しぶりです!
今までなるだけ継続して投稿してましたが、新作が書きたくなってお休みしてました。
お待たせしてしまい申し訳ありません!
ラブコメ書きたいなぁって思って書いてみたら思ったより楽しくてですね。
というわけで新しく『異世界から帰ってきた先輩のカノジョになりました!』という題名で新作を考えてみました。
内容は題名のまんま、できたてほやほやカップルがイチャイチャする話です! 初めて書くのでラブコメになってるかはちょっと自信ないですけど、一応自分の中ではそれっぽくなってると思うので、なんか甘々なの読みたいなって思ったら読んでみてください!
なろうを初めて一年たって誤字脱字もないと思いますから! ぜひっ!
https://ncode.syosetu.com/n0104gm/
これからもよろしくお願いします!




