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227話 いざ行け! ブリリアント王国! (悪夢の呪檻)

 


 ◇◇レンside◇◇



「……ルカが負けたってどういうこと?」


 ルカがいくら不利な条件であってもそう簡単に、ましてや五分ちょっとで負けるとは思えない僕は、つい聞き返してた。


「信じられないの~? なら、直接見てみるの~。この壁ももういらないの~」


 そう言ってノノちゃんが手をパンッと叩けば、僕が殴ってもビクともしなかった壁が地面に沈み込むように消えていった。


 壁の向こう側が見えると、そこには地面に倒れたルカがいた。


「ルカっ!」


 僕はルカに駆け寄ると、すぐに様態を確認する。


 ルカは特に外傷は見えないものの、揺らして声をかけても目を覚ます気配はなく、時折「いやっ……いやっ……」っと声が漏れたり、悲痛そうに顔を歪めたりしてる。そして何より涙を流してた。


「これは、どういう……?」


「『悪夢の呪檻(ポベートール)』、それがこの天使さんにかけた呪いなの~」


 そう言ってノノちゃんはなぜか申し訳なさそうな表情をしてどんな呪いなのかを説明してくる。


「この呪いは、かかった人をその人にとっての悪夢に閉じ込めて実体験させ続ける呪いなの~。ノノが使える呪いで一番強力で危険、これにかかったら抜けださない限りいつまでも絶望を見ることになるの~。そうして最終的には生気を失うことになるの~」


 イグリス砦では夢と現実がごっちゃになったような兵士たちがいたけど、それとは違う呪いのようで、こっちの方が凶悪そうだ。


「……かけた時に天使さんの夢を少し覗いたけれど、ちょっとやりすぎたなって思ったの~……。同じ女として、あんな地獄のような体験をいつまでもするのは流石に可哀そうと思ってるの~……天使さんの過去を甘く見てたの~」


 ルカの見る悪夢は、想像に難くない……。胸糞悪いことだけど、デミゴルゴンの時のことだろう。実際に助けてからしばらくは寝るのが怖いって言ってたくらいには悪夢を見ていたようだし、僕も数日の間……うっ、思い出そうとするだけで寒気がしてくる。


 と、その時少しだけルカの翡翠色の髪の根元が黒く染まった。同時に羽根も根元からじわりじわりと黒くなっていくのが分かる。


 思い出すのは黒髪で真っ黒な翼を持った絶望感漂う助けた当時のルカの姿。もう、あんなのは見たくない。


「……申し訳ないと思ってるなら、今すぐにでも呪いを解いてくれ」


 思わず、自分でも思ったよりも平坦な声が出た。


 呪いをかけた張本人だ、解除することもできるはず。けれど、


「……ごめんなの~。この呪いはノノ自身でもそう簡単には解けられないの~、唯一の抜けだし方は天使さんがこの悪夢を乗り越えることなの~」


 帰ってきた返事はそんな無慈悲な言葉だった。


 ルカがアレを乗り越える。……そうできれば何よりもいいと思うけど、アレは一生もののトラウマだ。ルカを信じてっていうのは簡単だろうけど、彼女にとっては酷なことなはず。


 それに、徐々に黒く変色していくルカを見ればその希望は薄いことは容易だ。


「ルカっ! 目を覚ませ! 絶対にそんな奴に屈するな!」


 それでもだ、もしも少しでも声が届くことを願って僕はルカに声をかける。


 どうにかしてルカの呪いを解かないと……。ノノちゃん自身でもそう簡単には解けれないとは言ってたけど、絶対に解くことはできないとは言ってない。ってことは、やっぱりノノちゃんなら他の方法があるんじゃないか?


 そんなことを必死に考えていたからか、ノノちゃんがぽつりと言った言葉を僕は聞き逃さなかった。


「……まぁ、ノノがいれば他に方法が無いわけではないの~」


「それなら、はやくそれをっ……!」


 藁にも縋る思いで振り向けば、目の前にはノノちゃんの槍が向けられていて、それ以上の言葉は封じられた。


「でも、だからと言って手を貸すつもりは毛頭ないの~。忘れたの~? あなたたちとノノは敵同士、その天使さんを起こせば今の有利な状況を手放すことになるの~。いくら可哀そうに思ってもそれは変わらないの~」


「なら、ルカを起こしてくれれば投降する。それならいいかな?」


 オルトさんやブリリアント王国には悪いけれど、僕の中で一番大切なのは身内だ。そこはどうしても譲れない。


「何を勘違いしてるのかわからないけど、そんなの信用できるわけないの~。ネネはあなたを知っていたようで甘いところがあったれど、ノノはあなたのことを知らないし情けをかける必要も感じないの~」


 それもそうだ。全く持ってノノちゃんの言う通りだ。僕はこの期に及んでどこかこの戦いを甘く見ていたらしい。


「…………」


 僕は情けなくも何も言えず黙ることしかできなかった。


 そんな僕を見かねたのか、僕の目の前にあった槍を手元に戻したノノちゃんは、


「ノノはこのまま逃げようかと思ってたけど、しょうがないからチャンスをあげるの~。ここであなたがノノとネネに勝てたら天使さんの呪いを解くのを手伝ってあげるの~」


 と、そんな条件を提示してきた。


「……僕が負けたら?」


「その時は、あなたはノノに服従してもらうの~。ノノも鬼じゃないし天使さんの呪いを解くようにはするけど、優先順位は低めだから後回しになるの~」


「どうしてそんな条件を? 僕の方が好条件な気がするけど」


「そんなの後々の面倒を先に潰すために決まってるの~。ここで逃げても、あなたはその子を助けるためにノノをストーカーしてくるのは目に見えてるし、それで睡眠時間をたっぷりとれなくなるのは嫌なの~。それなら今ここでやっちゃう方がいいの~。それに……」


 そこまで言うと、ノノちゃんはニヤリと笑う。


「これはあなたにとって全く好条件じゃないの~。むしろノノにとって好条件なの~。ね! ネネもそう思うでしょ~?」


「………zzzZ」


 ノノちゃんがネネちゃんに相槌を求めるも、当のネネちゃんはいつの間にか真っ二つに分かれたはずのベットに潜って寝息を立てていた。


「……もうなの~。でもまぁ、いいの~、ネネはさっき頑張ってくれてたしノノ一人でも問題ないの~。さぁ、早く構えるの~」


「悪いけれど、もう本当に時間をかけられなくなったから最初から本気で行かせてもらうよ」


 僕はエリュシオンを握り直し、ノノちゃんに向かって構える。


(エリュ、分かってると思うけど……)


(………ん、全力でしょーー『神気解放:才気煥発』!)


 エリュが念話でそういうと、エリュシオンが淡く赤金色に輝く。


 これで準備は整った。


「……いいの~? 神様の力を借りなくても? それ使わないと……」


 じっと構えてると、次の瞬間に僕の耳元でノノちゃんの底冷えする声が聞こえた。


「……すぐ終わっちゃうの」





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