22話 誘拐
◇◇レンside◇◇
「お米と小麦をお願いします! えいっ!」
華憐さんとコロッケと水田に戻って柿ピーを植えにきた。ハルとミーナは濡れた服を着替えに行ってる。
華憐さんは可愛らしく掛け後をしながら植えてるけどそんな声にださなくても……いや、可愛いしいっか。
「大丈夫ー? 次はニギリメシユメピリカの木とか生えない?」
「蓮くんとは違うので大丈夫ですよ! しっかりと小麦とお米を願いました!」
「いやー、でも、華憐さんけっこう抜けて……ゴホンゴホン……おっちょこちょ……ゴホンゴホン……なとこあるからなー」
「はいそこ! 聞こえてますよ! まったく私がいつヘマしたと」
わぁお、地獄耳だなー、いや<知能>の力かな?
「えー? 結構やらかしてるよな?」
コロッケに聞いてみる、最近華憐さんはコロッケたちクマっ子たちの方が一緒にいるから僕はわかんないけど、それはそれは生活にボロを出してるんじゃないかな?
ベッドが出来てからさすがに華憐さんと同じ部屋で寝るのはよくないよなーってことになって、僕は九十四階に移動することにしたから今はほとんど一人でたまにハルが潜り込んでくるくらい。
「おう! この前なんてカレン姉ちゃん、レン兄ちゃんがお風呂上がってきたと……」
「わあああぁぁぁぁー! なんでもないよ! なんでもないからね蓮くん!」
おー、なんかすっごい慌てて口調が変わった。華憐さん、普段敬語っていうか丁寧語みたいな感じで喋るけど普通に砕けた口調で話してくれた方がいいな。
「ほら、そろそろ戻りましょ! エルフさんたちのお手伝いしないと」
露骨な話のそらし方だけど、しょうがないから聞くのはまた今度にしよう。お風呂の時にでもコロッケから。それに、華憐さんの言う通りエルフたちは今日もベッド作りとその他の家具を作ってくれてるから僕たちも任せっぱなしじゃなくて手伝わなきゃ。
そして、僕たちはエルフたちの手伝いをするため戻ることにしようとしたその時。
「レン! ミーナが……ミーナが……」
ハルが物凄い勢いでかけてきた。顔は泣きそうになっていて、パニックになってるのか話の要領を得ない。でも、その雰囲気からたぶんなにか不測の事態が起きたんだろうことはわかる。
僕はしゃがんでハルと目線を合わせて何とか話を聞き出そうとする。
「ハル落ち着いて、なにがあった?」
「あのね、ミーナが攫われて、それで犯人が森に逃げて、それで……」
「なっ……」
ハルが言ったことは、僕が危惧してた事態の一つ。ミーナには注意を向けていたつもりだったけど油断した。
「あっ、蓮くん!」
僕はハルから何があったのか聞いたあと、全力で森の方に駆け出した。昨日の今日で早い気がするけどたぶんここに来た時に後でもつけられたんだろう。
大丈夫、僕は陸上部だ、すぐ追いつく! でも、助け出したらもう少し事情を詳しく聞いておいたほうがいいかもしれない。
後ろから華憐さんが呼ぶ声が聞こえたが止まらず<才能>の力を使って走る。
■■
◇◇ミーナside◇◇
「へっ、やっと見つけたぜ姫様よぉ」
「……………」
油断しました、まさかもうここまで来てたなんて……。
私はレン様たちと泥だらけになった身体を清めて服もびちょびちょになったのでレン様と別れてハルちゃんと服を着替えに行きました。
そのあと、エルフたちの様子を見てレン様の所に行こうとした時森の中にキラリと光るものが見えたのでなんだろうと思い、近寄ろうとしました。
それが油断でした。
森に近づいたら、いきなり頭に麻布を被せられ抱えられました。
近くにハルちゃんがいて大声を上げてくれたので家具作りしていたエルフは気づいたかもしれません。
ただ、私を攫ったこの男、私と同じハイエルフです。
それに結構な手練だと思います。
私を担いでかなりのスピードで走ってましたから、それに敵は一人のようじゃないですし。
「おいおい、だんまりかよ」
「隊長、こいつも贄っすか?」
「あー? そうだな、なんてったってこいつは本当の髪の色を隠してやがるが忌み子だぜ? 絶好の生贄になるだろうなっ! っと!」
「きゃあっ!」
ハイエルフの男にお腹を殴られました、あまりの痛さに声が漏れてしまいます。
「へっ、いい顔すんじゃねーか、忌み子のくせになっ!」
私は普段は魔道具で金髪に隠してますが本当の髪色は銀髪です。
そのせいで、生まれた時から忌み子と嫌われ、どこでも後ろ指を刺されてきました。
私には兄がいましたが、その兄にはよく殴り蹴られ暴力を受けてました。
それでもお母様とお父様は私を普通の子のように愛してくれて、国を襲撃されたときも一番最初に逃がしてくれした。
そうだ、お母様とお父様はどうなったの?
「……お母様……とお父様は」
「あー、お前のママとパパはいっちばん最初に死んでったぞ、ははははは! あたりまえだろ? 忌み子を産むような親だ、いい生贄になってくれたんじゃねーか?」
予想は着いてました。
でも、きっと生きていると信じたかったのです。
ああ……お母様、お父様………。
はっきりと死を知らされると涙がポロポロとでてきました。
きっと私のせいだから。
「あ? 忌み子のくせに何泣いてんだよ、気持ちわりーな」
「隊長、あのネックレスが魔道具じゃないすか?」
エルフの男が私の胸元をまさぐって魔道具のネックレスをひったくってくる。
すると、金髪がたちまち銀髪に変わっていく。
この髪のせいで。
「うえ、まじで忌み子じゃないっすか」
「ふん、気持ち悪いさっさともとにもどせ」
「えー、いやっすよ、触りたくないですもん」
男たちがなにか話してるけど全く耳にはいってこない。
だって、きっと私のせいでお母様とお父様は生贄にされた。私の愛した国が襲撃された。きっともう国も残ってないでしょう。
私が銀髪のエルフだから、私が忌み子だから、私が生まれてきたから。
ごめんなさい。
「私なんて生まれて来なければよかった……」
「やーーっと、見つけた!」
そのとき、最近よく聞く声が私の耳に聞こえたました。




