21話 泥遊び
◇◇レンside◇◇
異世界にきてついに一週間、今日も今日とてお鶴さん製名前入りTシャツを着て農家生活。
さぁ! 美味しいお野菜つくるぞー!!
うーーーん、僕の異世界転生、お野菜作るのが主旨じゃないんだけどなーー……。
でも、まぁしょうがない。僕のせいでニギリメシコシヒカリになっちゃったんだし、今日は水田をしっかり作ってあげよう。エルフの人たちも手伝ってくれるみたいだからいつもよりは早くできそうだし。
よしっ! この辺一帯を金の稲穂の絨毯にしてやるぜ!!
てなかんじで、ニギリメシコシヒカリの木の周りを拡張して水田を作っていられたのは水田作りを始めて数十分だけだった……。
「レンー、こっち向いてぇー」
「ん? どうしたー? 」
ハルに呼ばれ、僕は無警戒に振り向いてしまったのだ。
「えいやっ!」
╰( ¨̮ )╮-。・*・:≡=͟͟͞͞✹(´・д・`)
「ぶぇっ!」
「あはははは! どろんこぉー!」
水をひいてたらハルに泥をかけられた。しかも顔面にクリーンヒット。僕の顔は今、見るも無残な姿だろう。
まったく、ガキだなぁーハルは、でも僕はやられたことをやり返す主義。それががきんちょでも決して容赦はしない。
やられたらやり返す……倍返しだっ! うん、古いね。もう使うのやめよっ。
「やったな、ハルー! 幼稚園のとき泥の貴公子と言われた僕を敵に回したことを後悔させてやろう……くらえっ!!」
╰( ¨̮ )╮-。・*・:≡=͟͟͞͞✹ ( ˙꒳˙ 三 ˙꒳˙ ) *・:≡=͟͟͞͞✹.∵・(゜ε゜)
「ぶべぇっ!」
あ、はずした。そして、その後ろにいたころっけがちょうど振り返っていて今度はコロッケの顔面にクリーンヒット。
「あ、コロッケごめん」
「やーい、はずしてやんのぉー!」
ハルよ、君はいったい誰に似てしまったんだ……お兄さん、そんな煽り能力を教えた覚えはありません!
「レン兄ちゃんやったなー!」
「あーーー! 悪かったって! やめいやめい!」
コロッケが泥団子をもって追いかけてくる、逃げる僕。けれどコロッケ、さすが森の鉄クマさん、泥の上だというのになかなか走るのが早い。
「いやだ! 許さん! どりゃあっ!」
迫る泥団子、さすがの僕でも泥の上で突然の回避行動なんて取れば足をすくわれて転倒、そして泥団子をかぶるよりひどいことになりかねない。かくなる上は、
「みなさん何やってるんですか?」
「あ、ミーナいいとこに!」
「え?」
╰( ¨̮ )╮-。・*・:≡=͟͟͞͞✹ Σ(゜ロ゜;) ( ˙꒳˙ )
「ひぎゃっ!!」
今度はミーナの顔面にクリーンヒット。ミーナが乙女にあるまじき声を出した。
「あははは! ミーナもどろんこぉー!」
「ミーナ、ナイス壁だ!」
「………レン様?」
うわっ、なんか背中がぶるってきたよ……。ちょうど僕の前に出てきたから僕の壁になってもらっただけなのに、すごく底冷えする無機質な声が聞こえてきた。
恐る恐る、ミーナの顔を見てるみる……あらあらどろんこ。
「えーと……や〜〜い、どろんこぉ〜……」
ピキィ#
あ、これアカンやつや。ほら、アニメとかで額に青筋立てて怒りを露わに空気が一瞬固まるやつ、あんなかんじ。
「てったいぃーーー! 全軍逃げろぉー!」
僕は逃げた、全力で。ああなった人間は恐ろしいのだ。
「レン様まちなさぁぁーーーい!」
ほら、とっても大きな泥団子片手に鬼の形相で迫ってくる。さながらゲームの青鬼のよう……。
それからミーナに追いかけられ、泥を被って、ハルに泥をぶっかけてとみんなで泥遊びをたのしんだ。
ハルは終始笑顔でコロッケは本気でポテトは巻き込まれないように息を潜めてた、ミーナは最初はガチおこっぽかったけど次第に笑顔に。
最後はみんなで泥だらけになった姿を見て笑いあった。
出会ったときからどう見ても高貴な出で立ちのミーナだ。きっとこんな異世界でいう農民のようなことをして泥だらけになることなんて一度たりともなかったはず。僕がやった事はどう考えても不敬なことだ。それを、激高せずさらには一緒に楽しんでくれた。きっと心の広い子なんだろう。
それに、ここに来てから笑ってないわけじゃなかったんだけれど、どこか心の底から笑ってる感じはしなかった。たぶん、事情があって心の底から笑ったりできないんだろうけど、今見せてくれている笑顔は本気の笑顔だと思う。僕ってそういうの敏感に感じちゃうんだよね、自分がそういう時があったから。でも、無理に聞こうとは思わない。
だからせめて僕たちといる間くらいはそんな風に笑ってくれればいいのに。可愛い子が笑うと泥がついてても綺麗でキュンってするしね!
■■
「まったく、何やってるんですかそんなに泥だらけになって」
「あ、カレン様! 泥遊びって楽しいですね!」
僕達が泥を落とそうと湖で水を浴びようとしているところに華憐さんが来た、あきられたかな?
「そういうことするなら、なんで私のことも呼んでくれなかったんですか!」
あ、違うやこれ拗ねてるやつだ、華憐さんこういうの好きそうだしな、意外とアグレッシブだから。
「それより、蓮くん! 今回は柿ピーは私が植えますからね!」
そうなのだ、昨日から華憐さん「私が植えます!」って言って聞かないの。まぁ、しょうがないか僕が植えたやつは決まって狙い道理にならないから今回は譲ろう。
「じゃあ、はやく植えに行こー、よいしょっと」
「「え……」」
「うわー、レン兄ちゃん腕太いな!」
「ん? そうかー? まぁ最近畑ばっかで腕ばっか使ってるから筋肉ついたのかな?」
僕が痛シャツを脱いだらコロッケがそんなことを言うので力こぶを使ってみると、たしかに太くなったなー。今まで腕はあまり鍛えたりはしていなかったからこういう機会に鍛えてみるにもいいかもしれないね。
ていうか、華憐さんとミーナが顔赤くしてるけど大丈夫かな? 顔の前で手をヒラヒラしてみる。
「おいおーい、大丈夫かー? 二人とも」
「い、いえ……大丈夫です」
「れ、レン様のお体は逞しいですね」
うん、女の子に体を褒められて悪い気はしない。特にかわいい子だと猶更ね!
「そうー? ありがとー、柿ピー植えにいこー」
そう言って、僕が歩き出すと二人はなんかモジモジしながら着いてきた。初心かよっ!




