209話 いざ行け! ブリリアント王国! (キャンベルさんの謎、深まる)
◇◇レンside◇◇
「おい、ちょっと教えてほしんだが……」
「ひぃえっ! ぼ、僕そんなにお金持っていないッス~~~!」
「いや、そうじゃなくて……はぁ……」
あ、また逃げられてる。あそこまで必死に逃げられると流石に悲しいわな。
「ジャックさん、あれで逃げられたの何人目ですかね?」
「八人目くらいじゃないかしら?」
「あそこまでくると流石に同情してくる」
「かわいそう……」
「ジャックさん、悪いことなんてできない根はいい人なのにね。人は見た目がっていうのを実感するね」
僕たちはカチヤさんにランクスキップ制度を受けることを頼んで指定された席に座ってまっってるところだ。
その間、手持ち無沙汰になったジャックさんが入った時にギルド内がなんかピリピリしてた理由を聞いてくるわって言ってそこらへんにいる冒険者たちに声をかけに行ったんだけど、みんなの言ってる通り現在八連覇中。ジャックさんが声をかけた人達は一人残らずギルドから撤退していった。今残ってる人もいつ自分に来るかびくびくしてるし、これはギルド内から人が今くなる気がしてきた。
「そういえば、ミライアはどうしたの?」
「彼女なら、早く王都を見たそうにうずうずしてたから今は待機の状態だし言ってくるように言ったらさっそく飛び出していったわよ」
いつの間にか見えなくなってたミライアのことを聞いたらクルアがそう教えてくれた。僕ももっと気を使ってあげば良かったな。
「あ、また逃げられてる」
「九人目ですね」
そんな感じにジャックさんがまた若手のまだまだこれからだぞ! って感じの冒険者の少年に声をかけて逃げられた時、僕たちの後ろから声がかけられた。
「すまない、待たせてしまったね。君たちがレンたち御一行かい?」
「はい、そうですけど」
返事をして振り返ると、ダンディなおじいさんがいた。
「手紙は見させてもらったよ。キャンベルが言うにはなんだか曰く付きのようだね」
曰く付き? まぁ、曰く付きっちゃあ曰く付きか、たぶんミーナたちの種族のことを言ってるんだろう。
「まぁ、そうですね。ところで、あなたは?」
「ああ、挨拶がまだだったね。私は冒険者ギルド、ブリリアント王国総長のガウルだ。君たちのランクスキップ制度の試験の試験官は私が勤めることになった。以後よろしく頼むよ」
あ、この人がキャンベルさんの知り合いのガウルさん……って、今すごい肩書じゃなかった?
「ね、ねぇ蓮くん。ブリリアント王国総長ってブリリアント王国の冒険者ギルドで一番偉い人じゃないの?」
「あ、あぁ、たぶんそうだと思うけどキャンベルさんって一体何者なんだ……この国の冒険者ギルドの一番偉い人に軽い感じで手紙を渡せる人がただの末端の受付令嬢であるとは思えないんだけど」
ガウルさんは顔はしわが多く高齢に見えるけど、逆立て気味の茶色い短髪にガッチリとした体格からどこか若々しく感じるおじ様系が好きな人ならたまらなくドストライクのような人だ。
この人がブリリアント王国の冒険者ギルドの元締め。だからさっきカチヤさんはこの人に会うのは胃がキリキリするって言ってたのか。カチヤさん、まだまだ新人ぽかったし。って、よく見ればガウルさんに隠れてたけど後ろの方でやり遂げたような顔してるわ。
そういえば、僕たちの挨拶がまだだったな。
「えっと、初めまして、蓮です。隣が華憐、それからミーア、クルア、ルカ、ティエラです。よろしくお願いします」
僕が代表して挨拶をして、それに合わせてみんなもぺこりと頭を下げる。
「そう固くならなくてもいいぞ。それより、みんな綺麗どころだな。レンはハーレムを作ってるのか? はっはっは!」
「あはは……」
やりにくい……こういう年上な感じの人はやりにくいよ。そしてまた否定しにくいから苦笑いしかできない。
「さて、ランクスキップ制度だったな。一応キャンベルの手紙で実力は十分、試験なんてしなくても分かり切っているから総長権限で上げるよう書いてあったが、やっぱりそんなことをすれば他の冒険者に角が立とう試験は受けてもらう」
あー、まぁそうだよね。いくらキャンベルさんでも試験ナシで問答無用のCランクまで昇格にはならないか。
「ま、そんなことは建前で私がお前たちの実力が見たいだけだがな! では、さっそく行こう! 天使族や竜人族の実力、どんなもんか楽しみだ!」
そう言ってガウルさんは「ついて来い」って言うと、冒険者ギルドの奥の方に向かっていった。
「なんか、すごい豪快な人だね」
「そうね、とても総長とは思えないわ」
「ふふ、我の実力が見たいか……いいだろう! 刮目せよ!」
「うちも、頑張る!」
「ん~、私はそんなことよりキャンベルさんが何者か気になります」
華憐とクルアはガウルさんの人柄について言いながら、ルカとティエラは気合十分なようで、ミーナはキャンベルさんについて考えながらガウルさんの後をついていった。
かくゆう僕もキャンベルさんが何者なのかとっても気になるけど、もう一つ気になることがある。
「ガウルさん、ガウルさん」
「ん? どうした?」
「つかぬことを聞きますが……ガウルさんもキャンベルさんに睨まれたら逆らえない口ですか?」
「あっはっはっは! なんだそんなことか。そんなの、当たり前だろう。あの瞳に睨まれると、なぜか逆らう気力が失せてしまう。キャンベルとはかれこれ長い付き合いになるが、あの子が幼い時は良く睨まれておもちゃとかを買わされたよ」
あ、この人も例外じゃなかった……。どこか遠い目をしてる気がする。冒険者ギルドの総長を睨んで言うことを聞かせる受付令嬢……キャンベルさんは本当に何者なんだ。もしかしたら僕たちはかなりすごい人と知り合ったのかもしれない。
それから、ガウルさんについていった冒険者ギルドの奥は日本の学校にある体育館くらいの大きさのフィールドだった。
さすが、王都の冒険者ギルド。こんな広い施設があるんだね。これはランクスキップ制度が王都でしか受けられないのも納得。
「ここが、君たちに試験を受けてもらう場所だよ。本来ならほかの冒険者たちも観戦するして実力を測るんだが、君たちは種族が訳アリだからな、今回は私一人だ。安心して存分に戦ってほしい。もちろん、君たちの種族やここで見たことは多言しない」
あ、そういうところ気を使ってくれたんだ。すごくありがたい、ティエラとかの種族がバレれば騒ぎになるかの盛大だし。
「ルールは分かってると思うが今から現れる魔物を討伐すればいい。して、君たちはパーティーで試験を受けるそうだが、その場合出てくる魔物もそれに見合って個人よりも多く、強くなるが構わないかね?」
「はい、それで大丈夫です」
「そうか、それじゃあ存分に戦ってくれたまえ。楽しみにしている」
ガウルさんはそう言うと、離れたところにある何かの魔道具らしきものに触れて、腕を組んで僕たちを見極めるように視線を向けてきた。
すると、突如地面に大きな魔方陣が現れ、そこに光が集まり形を作っていった。
かくして、ランクスキップ制度の試験が始まった。僕たちの実力を存分に見るといい。




