199話 いざ行け! ブリリアント王国! (都市アムニス)
◇◇レンside◇◇
「おぉ……」←レン(*゜Д゜*)
「おぉ……」←カレンฅ(*°ㅁ°*ฅ)
「「おおおおおぉぉぉぉぉ……!! すんばらしいっ!!」」
僕と華憐は今、目の前にある景色を見て猛烈に感動している。
かなーり出発に時間がかかったけど、エリュシオンからブリリアント王国に向かって旅を始めた僕たちは、襲ってくる野生の魔物などもいたけれど、エリュシオンに現れるのよりも雑魚雑魚すぎて特に危なげもなくブリリアント王国の国境をまたぎ、本来数十日かかる道のりをキュウの馬力と魔改造馬車によって三日にまで短縮して冒険者登録をする予定の最もエリュシオンから近い都市であるここ、アニムスという都市に来た。
僕と華憐は馬車で入場を待っているのがじれったくて、馬車はオリビアさんたちに任せて先に歩行者用の入り口から都市の中に入ったわけだ。
「わぁ~! 蓮くん! ファンタジーだよ、ファンタジーな街並みだよ!」
「そうだな! こんなの日本じゃお目にかかれないぞ、めちゃくちゃテンション上がってきた!」
中世ヨーロッパ風な建物が並んでいて、ここは入り口の前だからかフリーマーケットみたいに地面に商品が置かれていたり屋台があったりしてる。そして、それに集まる人も大勢いて、その人たちが来ている服装は冒険者の格好、騎士の格好、町娘風の服を着ている子もいるし改めて異世界に来たって感じがあふれ出てくる。
「あのあの、レンさんとカレンさんはいったい?」
「あ~、ティエラさんはあの状態になった時のレン様たちを見るのは初めてでしたか。まぁ、二人の癇癪みたいなものです」
「そうそう、ああなった時の二人は放置が一番」
「…………ん、ルカの言う通り」
「羞恥。あの状態のカレンとは一緒にいたくない」
「そうね、特にこんな場所だと余計に。周りの目が痛いわね、田舎者丸出しじゃない」
後ろから何か聞こえて来たけれど、テンションの高い僕たちの耳には届かない。
「あ! 蓮くん! あれはいわゆる吟遊詩人ってやつじゃない?」
「たぶん?」
華憐が指さす方を見てみれば人が集まってるところがある。そこでは、リュートってやつかな? を弾いて旅装飾をしたお兄さんが歌っている。
「行ってみよう!」
「あ、ちょっと二人とも! まだオリビアたちが来てないわよ、勝手にどこかに……」
華憐はクルアの声は聞こえてないみたいで、僕の腕を弾いて吟遊詩人のお兄さんのもとへずんずんと向かっていく。
「わぁ~! リアル吟遊詩人だよ。異世界の有名な曲かな?」
「聞いたことない曲だしそうじゃないか? って、華憐?」
華憐はいつの間にか僕の隣から離れて、吟遊詩人のお兄さんの目の前に行って、そこに座って聞いてた子供たちと一緒になって聞き入っていた。
あんなに、目をキラキラさせているのを見ると本当に興奮してるのが伝わってきて、もっと早く来ればよかったなって思えてくる。
「エリュシオンも周知されればああいう旅人とかも来るのかな?」
吟遊詩人のお兄さんはリュートを弾くのも歌うのもうまいからぜひエリュシオンにも来てほしいね。
しばらくすると、吟遊詩人のお兄さんが歌い終わって、立ち止まって聞き入ってた人たちが拍手を送る。その時に、足元に逆さに置いていた帽子の中にお金を入れてる。ストリートミュージシャンみたいだ。
その様子を見ていた華憐も自分の財布を出して金貨を投げ入れてた。
吟遊詩人のお兄さんはほとんどの人たちは銀貨か銅貨なのに華憐が金貨を入れていたのに驚いた様子だったけど、すぐに嬉しそうに笑って胸ポケットに刺さっていた花を華憐にプレゼントしている。
「蓮くん見てよ! 綺麗なお花もらちゃった! ちょっとぎざったいのが異世界人ぽくていいね!」
戻ってきた華憐は嬉しそうにしてる。
それにしても、この都市を見てる感じじゃとても戦時中とは思えない賑わいだな。本当は戦争なんて起きてないのかと思っちゃう。たぶん、距離が離れてるからあまり影響がないのかもしれないけど。
「あっ! やっと見つけました! 皆さーん、こっちですよ~!」
そんなこと思ってると、ミーナが僕たちを見つけて駆け寄ってきた。
「…………ん、勝手にどこかに行かないで」
「同意。全く、誰かに襲われたらどうするの? 私がいないとカレンは無力なんだから」
エリュとアルカがちょっとむすっとした顔で僕たちの手を取ってきた。
「ごめんて、エリュ」
「こんな街中で襲ってくる人なんているとは思えないけど?」
「カレン、それは甘い。こういうとこらだからこそ油断はしちゃいけないのだ」
「そうね、ルカの言う通りよ」
まぁ、確かに人が集まるのところは物騒だからな。年長者の忠告はしかっりと聞いておこう、こんなこというと二人に怒られるけど。
「それじゃあ、さっそく冒険者ギルドに行きましょうか」
「あれ? オリビアさんたちは待たなくていいの?」
「はぁ、あなたたちがどこかに行ってるときにとっくに都市の中に入ったわよ。今は先に宿をとってもらいに行ってるとこよ」
「「それは、すみませんでした。恐れ入ります」」
流石に、迷惑をかけたなって思った僕と華憐は声をそろえて謝った。
■■
ということでやってきました冒険者ギルド!
「「おお~!!」」
僕たちの前には開けた場所に周りの建物よりも大きな市役所みたいな建物が建ってる。その建物に出入りしてる人はみんな冒険者の格好をしていて、ここが冒険者ギルドなんだと改めて思わされる。今出てきたパーティーらしい人たちはこれから仕事なのかな?
「さて、それじゃあさっそく……」
「待って!」
行こうと足を動かしたところでクルアに呼び止められた。
「注意事項を言うからしっかり聞いてちょうだい。冒険者の仕事は素材収集、魔物の討伐、戦争時の傭兵など依頼によって多岐に渡るわ。当然、常に危険と隣り合わせでいつ死んでもおかしくない仕事なの」
いつになく真剣な表情で話し始めたからなんだろうと思ったのだけど、そんな基本的なことで今更どうしたのだろうと僕はその意図が読み取れなかったんだけど、華憐は何かを察したようでふむふむと頷いてる。
「つまり、アレがあるんだね」
「そう、あるのよアレが。だから怯えても逃げ出しちゃだめよ。逃げ出したらその時点で冒険者にはなれないわ。逆に激昂して殴りかかってもだめ、もしそうしたら相手も本気で殴りかかってきて負けたらギルドから放り出されて、もし勝てたとしても協調性がないとしてパーティーを組みにくくなるし冒険者キャリアが傷つくことになるわ」
「ふむふむ、なるほど。ありがとうクルア、教えてくれなかったら私、びっくりして逃げ出してたかも。でも、来るってわかってたら全然大丈夫! というか、すっかり失念してたよ。アレがあること」
「ならいいわ、それじゃあ入りましょうか。ふふっ、ここのアレはいったいどんなことを言ってくるのかしら? ちょっと楽しみね」
そんなことを言いながら二人は冒険者ギルドに向かって歩き出す。
なんか二人だけわかりあった感じなんだけど、冒険者ギルドにあるアレって何? なんか聞いた感じだととっても大事なことのように思えるんだけど?
「なぁ、ミーナたちはあの二人が言ってることわかるの?」
「さぁ? でも、クルアさんは儀式みたいなものって言ってましたけど。というかレン様は知ってるだろうって言ってましたよ?」
えー? それじゃあ、僕が忘れてるだけってこと?
「あれ? レン知らなかったの? 私もてっきりレンも分かってるのかと思ってた」
「じゃあ、ルカは何か知ってるの?」
「知ってるよ。いわゆる冒険者になるための洗礼ってやつ。私もここの人がどんなこと言うのかちょっと気になってる」
チリンチリ~ン♪
ルカがそう教えてくれた時にはもうギルドの中に入っていて、左目に傷のある大柄な強面の大男が立ち上がった時だった。




