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198話 いざ行け! ブリリアント王国! (馬車の旅、一日目終了)

 


 ◇◇レンside◇◇



「もう! 何で戻しちゃダメって言ったのに戻してくるのよ!」


「そうだそうだ! 今のレンじゃさっきにレンの十倍は違うぞ!」


「蓮くん、かっこわるー」


「私は今のレン様もいいですけど、やっぱりさっきの方がいいです」


「みんなひどくないですかっ!」


 みんなが壊れて再起不能になった後、僕はオリビアさんに頼んで水辺の近くに降ろしてもらい、髪のワックスを落としてきて飛んで馬車に帰ってきた時のみんなの言葉がこれである。


 確かに僕自身も今の髪型とさっきのキメた髪型なら断然今よりさっきの方がかっこいいとは思うけども、そんなど真ん中のストレートに言わなくてもいいじゃないか。


「でもでも、さっきの髪型は本当に良かったですけど、今の髪型も落ち着いてて、その……うちは、十分に……か、かっこよかて思うよ……?」


「うっ……儚い……」


 こんな儚い子に上目遣いでもじもじと恥ずかしそうにそんなこと言われるとキュン死にしちゃうよ。なんか、ティエラをすごくアイドルにしたい。ティエラのためならハチマキつけてはっぴ羽織ってサイリウムを振り回すのも苦じゃない。うん、こんど考えてみよう。


「こ、ここで点数稼ぎ……」


「あの子、自分の見せ方が分かってるのかしら?」


「いえ、クルアさん。たぶん無意識だと思います」


「な、なんだと……ティエラ、なんて恐ろしい……」


 後ろで四人が戦慄してる。


 よし、決めた。僕はこの四人の、正確には華憐から伝達する毒牙からティエラを守ろう。この儚さが無くならないように。


「とはいえ、あの髪型はもうやらないからね」


「「「「「えええええーーーー!」」」」」


「えーって、だってみんな再起不能になるじゃんか」


「それは蓮くんが常日頃からきっちりした格好しないからだよ!」


「「「「うんうん!」」」」


 この華憐の言葉にはみなさん同意のようで誰も僕を擁護してくれる人はいなかった。僕、普段そんなにだらしない格好してるかな? いや、冬の時はしてたかもしれない。


「わかった、じゃあ特別な時とかだけね」


「特別な日って?」


「うーん、例えば結婚式とか?」


「「「「「結婚式……//」」」」」


 みんな僕が結婚式って言ったとたん少し上をみてにやにやとしてる。なんだ? まさか僕と結婚する妄想でもしたのか?


「レン様! 今のは遠回しなプロポーズですね! 私、感激です!」


 あ、やっぱし。


「え、嘘……蓮くんやっと私を見てくれて……」


「ち、違うよ! 例えば! これは例えばの話で」


「あら? まさかレン、今のが嘘だった。なーんて言うわけかしら?」


「レン、乙女の心を弄んだのか?」


 こ、この年長者二人組なにか謀ってるな。これはさっきの僕の迂闊な発言の言質を取る気満々だ。さっきの妄想のニヤニヤじゃなくて悪い顔のニヤニヤになってやがる。


「そ、そんな……レンさんひどか……鬼畜! 下種! 女ったらし!」


「ぐはぁっ……!」


 ティエラのルンに負けず劣らずの毒舌が一番心に刺さる……僕のライフは残りわずかだ。


「さぁ、レン? 私たちに言うことがあるでしょう? その言葉、聞かせて頂戴?」


 じりじりと詰め寄ってくる。ミーナはとっても嬉しそうに、華憐は目を潤ませて、クルアとルカは悪い顔でニヤニヤと、ティエラはプンプンと怒り顔で。


 心にダメージを負って床に項垂れてた僕は這いずるように後ろに下がるしかない。しかし、残念かな。ここはあまり広くない馬車の中、あっという間に追い詰められてしまう。


「そ、そんな何か言うことなんて……」


「「「「「ううぅぅぅん?」」」」」


 こ、怖い! 女子にすごまれるの怖い! 違うと思います! こういうのは違うと思います!


「さぁさ、レン様。一思いにパッとです!」


「蓮くん、ちょっとだけ。ちょっとだけだから」


「ぼ、ぼぼぼ、僕と……」


「「「「「僕と?」」」」」


 ぎゃ、ぎゃああああぁぁぁ! 口が、恐怖で口が勝手に!


「け、けけこ、ん、けっこ……」


 言わされる! 後戻りできなくなる言葉を! 言わされちゃう! このままだと……だ、誰か助けてえええぇぇぇーーー!!


 きっと、僕の心の言葉が聞こえたんだろう。


「…………みんな、今日はここまで。野営の準備するって、あれ? みんなどうしたの?」


 きゅ、救世主だ! 救世主がやってきた!


「え、エリュ! ほら、みんな! 僕たちも外出て準備しないと!」


 僕はエリュが来たことで生まれた一瞬の隙をついて五人の包囲網を抜けだして、心の安寧のエリュを連れて馬車の外へ飛び出した。ここに僕の平和は戻ってきたのだった。




 ■■




 ◇◇カレンside◇◇




「逃げられてしまいましたね、残念です」


「エリュ、なんていいところに」


「でもでも、結構いい線いってませんでした?」


「そうね、もう少しだったわ。今のはタイミングが悪かったと見るべきよ」


「それと蓮くんの弱点も分かったね! ティエちゃんの言葉は蓮くんを一時的に行動不能にするくらいの威力だった」


「でも、少し言い過ぎちゃったかもしれません……はっ!? 嫌われてしまったらどうしましょう……」


「そんな心配しなくても大丈夫だよティエちゃん! 蓮くんはそんなんで嫌いになったりしないって」


 でも、ほんとに惜しかった! エリュちゃんさえ現れなければ蓮くんは屈してたかもしれないのに! 


 そう、今馬車で行われてたのは完全なる茶番。旅に出る前にみんなで考えてた蓮くんの言質を取るプランの一つ。正直無理やりはどうかとも思えなくもないけれど、あんまり気長に待ってても蓮くんは振り向いてなんかくれないのだ。なりふり構わずガンガン行かなければ! 恋する女の子は強いんだよ!


「でもまぁ、それはそれとして私たちも野営の準備しに行こう。仕事はしかっりとしないと」


「そうね、行きましょうか」


 ということで、私たちも外に出て野営の準備を始める。


 といっても、そこまですることがあるわけでもない。かまど作ったりする力仕事は蓮くんとストラトスさんがやってくれるし、女子チームはテントはったり今夜のご飯の下準備とかそんなものかな?


「カレンさん、そっち持ってもらっていいですか?」


「うん、いいよー」


 私も今はティエちゃんとテントを張ってるところ。


「それじゃあいきますね、さんの~が~はいっ!」


「へ?」


 いっせいのーせってくると思ってたら予想と違くてつい動き出せなかった。そういえば博多弁ではそういうんだっけ?


「あれ、カレンさんどうしました? 何かおかしなところでも……あ、もしかしてこっちのほうでは言わない……?」


「そうだねー、私はいっせいのーせっていうのが慣れ親しんでるかな」


「あぅ、頑張って方言出ないように気を付けてるのに……」


「なんでよ、ティエちゃんの言葉遣い可愛いよ?」


「そうですか? でもやっぱり、少し田舎臭い感じがしますし……」


「そんなことないって! ほら、いくよ~! さんの~が~はいっ!」


「さんの~が~……って、カレンしゃん! 今絶対馬鹿にした!」


「え~? そんなことないって~」


「すらごとばい! 絶対すらごとばい!」


 ティエちゃん、今も現在進行形で訛ってるのに気づいてるのかな? 気づいてないっぽい? ティエちゃん、興奮したりすると訛りが出てくるからね、そこがまた愛らしんだけど。


 そうやってティエちゃんをからかってながらもテントも張り終わって、周りを見れば野営の準備もあらかた終わっていて、オリビアさんと蓮くんが夕ご飯を作ってるとこだった。


 火がかかったかまどに吊るされた鍋から、ぐつぐつという音と美味しそうな匂いが漂ってくる。


「う~ん、いい匂い! やっぱりキャンプっていったらこれだよね!」


「もうすぐできるから、近くに座って待ってな」


「はーい!」


 そうして私がわくわくして待ってると蓮くんがよそって持ってきてくれた。


 あたりにスパイシーないい香りが広がる。


 そう、今夜の夕飯はキャンプの定番カレーライス! しかもカレールさんのつっくたルーだからおいしいこと間違いない!


「なんだか、こういう感じの初めのころを思い出すな」


 ふと、隣に座った蓮くんが感慨深そうにつぶやいた。


「確かに。でも、もう二人だけじゃないから賑やかになったね」


「そうだな。たまには初心に帰ってこういうのもいいかもしれない」


「うん! 私も同じこと思ってた!」


 こうやって、好きな人と同じ気持ちを思うのは何とも幸せで楽しい。


 それから、私たちは明日の出発に支障が出ないくらいの時間まで話し込んで馬車の旅の一日目は終わった。




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