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197話 いざ行け! ブリリアント王国! (馬車の様子)

 


 ◇◇レンside◇◇



 ガタンゴトン……ガタンゴトン……チラっ。


 やっとこさエリュシオンを出発した僕たちはのどかに馬車に揺られてる。


 ガタンゴトン……ガタンゴトン……チラっ。


 馬車は二つ連結されていて、御者はオリアさんがやってくれていて、さすがなんでもできるスーパーメイドって感じ。しかもその操ってる馬がエリュシオンに普通の馬なんていないため、華憐の精霊のあの僕にだけ暴れ馬のキュウなんだからなおさら尊敬しちゃう。


 ガタンゴトン……ガタンゴトン……チラっ、チラチラっ。


 馬車は王様が乗るにはみすぼらしいけれど、一般的なものよりも少しきれいな普通の馬車だ、外見が。中はたぶん普通の馬車とはかけ離れてると思う、アーゼさんがそういってたし。


 最初は普通の馬車を作ったんだけど、日本で車に乗り慣れてた僕や華憐はそんな馬車では我慢ならない体になっていたんだ、お尻痛いし揺れるし。


 結果、馬車の内装は魔改造してしまった。具体的には魔物の皮で作った柔らか快適リクリエーションソファーを左右に向かい会うように設置されてて、レバーを引いて背もたれを倒すこともできるし、全部倒せばベットみたいにもなる。さらに、馬車の旅を快適に過ごすために冷蔵庫、電子レンジなどの家電も設置。車輪にはサスペンションはもちろん、皮とゴムを使ったタイヤで大きな揺れなんて起きることがない。僕たちは快適な馬車の旅のために自重することはなかったのだ。


 ガタンゴトン……チラっ、ガタンゴトン……チラチラチラっ。


 そんな魔改造された馬車に前には僕、華憐、ミーナ、クルア、ルカ、ティエラ。エリュとアルカは馬車を行ったり来たりしてる。後ろにミライアたちが乗ってブリリアント王国に向かうため、トンネルを抜けまだ整地されてない草原も魔改造タイヤのおかけで楽々と進んでるんだけど……。


 ガタンゴトン……チラっ、チラチラっ、ガタンゴトン……チラっチラっ。


「だああぁぁぁ! もうなんだよ! 出発してからずっとチラチラと!」


 僕は落ち着かない。ひっじょおおおぉぉーーに落ち着かない。


 折角みんなで座れるようにと馬車の左右にソファーを置いたのに五人はなぜか一つのソファーにぎゅうぎゅうと座って僕は一人でソファーに座ってるし、話しかけてもしどろもどろになられるし、そしてチラチラとこっちを見てくる。


 出発した当初はなにか幻術にかかってたみたいで普通に話せたけど内容はおかしかったし、それが解けたと思ったらこのありさま。ほんと一体何なのだ。


 よし、もう次にチラ見したやつをとっ捕まえてやろう。


「……チラっ」


「今!」


「えっ!? はぅ……//」


「あ、おい。しっかり! ミーナ死ぬなーーー!」


 チラって見てきたミーナをがしっと掴んで目をそらさせないようにしたら、顔を真っ赤にしてぶっ倒れてしまった。


「ふにゃ~……」


 あ、でもどこか幸せそうな顔……なら放置でいっか。しかもこれオリビアさんと同じ反応、城を出てからというもの本当にいったい何なのだ。


「レン。な、なんておそろしいことを……チラっ」


「ま、まさか次は私たち、なんてことを……チラっ」


「こ、殺される……殺されちゃうし! チラっ」


「め、目をつむりましょう……チラっ」


 すると今の所業を見ていたであろう四人が蒼い顔で震え始めた。訳が分からん。


「なぁ、みんないったいどうしたのさ」


「「「「ひぃっ! チラっ」」」」


 そして僕が声をかけると悲鳴を上げるもチラ見は忘れない四人。もう、本当にわけわからん。これはもう一人ずつ問いただすか? 


「……チラっ」


「華憐」


「きゃああぁぁーーー! ありがとうございます! ありがとうございます!」


 次にチラ見をしてきた華憐をとっつかまえたら、ぎゅうっと目をつむってお礼を言いまくるマシーンと化してしまった。だめだ、これはもう使えん。


「あわあわ、カレンさんが……チラっ」


「ティエラ、見ちゃだめよ……チラっ」


「そうだぞ、私たちもああなってしまう、チラっ」


 いや、見てるじゃねーか! って突っ込みはしない方がいいの? 振りなの?


「チラっ」


「ティエラ!」


「はぅ……// そ、そげん近うで見つめらるーと……」


「ティエラ! 目を強く瞑りなさい! チラっ」


「意識を強く保つんだ! チラっ」


「あう……// あう……//」


 残念だ、ティエラも「あう……//」を繰り替えすマシーンと壊れてしまった。なんか少し面白くなってきたかも?


「あれ? ここは……?」


「あ、ミーナ起きた?」


「レン、さま……? はぅ……//」


「あ、また倒れた」


 さっき倒れたまま僕の膝に置きっぱなしだったミーナは再び眠ってしまったよう。きっと倒れるを繰り返すマシーンとなってしまったんだろう。ただ少し目を合わせただけなのにみんなおかしくなっている、あとの二人はどうなるんだろうか。


「チラっ、あれはなにか楽しんでるときの顔じゃないか?」


「こら! 見たらだめよ! チラっ」


 あ、クルアと目が合った。


「そう言ってクルアは見てるじゃん、チラっ」


「目、目が……目が合っちゃったわ、うぐぐぐぐぐ……」


 クルアがプルプル震え出したと思ったら何かを耐えるように歯を食いしばってる。もしかして、チラ見を我慢してる、とか?


「チラっ。あ、クルア、こっち……レンがクルアのこと見てるぞ」


「え? チラっ。あっ……」


 クルアとまた目が合った。本当にチラっと一瞬だけのことだけど僕は見逃さない。


「クルア、あとで我もみんなのようになるだろう。だから安心して先に壊れてくれ、チラっ」


「い、嫌よ! 私はあんな……あんな風に壊れたくないわ! チラっ」


 確かにあの三人みたいに壊れるのは嫌だけど、チラ見は止められないのか……ていうか、なぜチラ見をするのか問いただすつもりだったんだ。


「なぁ、クルア」


 僕はゆっくりとジーっとクルアを見つめる。


「ひゃ、ひゃいっ! やめて、私と目を合わせないで……私はまだ壊れたくない」


 いや、僕はメデューサか何かなのかよ……。


「いや、だからさなんか今日みんなおかしいよ? どうしてチラ見ばっかするのさ」


「え……本当にわからないの?」


「うん、わからん。だから理由を教えてほしんだけど」


「わかった! 教えるわ! 教えるから、だからそれ以上は勘弁して! 向こう向いてて! もう、さっきから頭がくらくらして……」


「ああああ! レン、早く向こうを向くんだ! このままだとクルアが壊れてしまう、チラっ」


「わかった、わかったよ。わかったから今朝からの僕の疑問を解消してくれ」


 僕はじりじり近づくのをやめて全く別の方向を向いた。


「はっ!? 私はまた倒れて!? はぅ……//」


「ありがとうございます! ありがとうございます!」


「あう……// あう……//」


 うーん、こいつらは治るんだろうか?



 ■■



「つまり?」


「「ギャップ萌え!」」


「え~~、まじかよ」


 クルアとルカは城の前にいたギャラリーやみんなの状態がおかしいこと、さらに馬車に乗り込むときの布を被されておかしな乗車をすることになった理由を話してくれた。


 要約すると、曰く、僕がかっこ尊すぎて直視ができないのだとか。そう思われて悪い気はしないけれど、やっぱり意味が分からん。


「いや、華憐にもらった服着てちょっと髪を整えただけだよ? そんなんで変わるかな? そんな大袈裟な」


「変わるわよ! 大袈裟じゃないわよ!」


「そうだそうだ! レンはもっと自分の容姿に責任を持つべき!」


「んじゃー、ちょっとワックス落としてくる」


「「それはだめ!」」


「えーー」


 クルアとルカにグイって腕をつかまれて止められた。それならどうしたらいいんじゃい。


「わ、わかったわよ。頑張って直視できるようになるわ」


 僕がどうしたもんかなって思ってると、チラっとこっちを見たクルアがそれに気が付いたのかそんな宣言をする。


「ふ~、心の準備をするから少し待って頂戴」


 やっぱり、大げさすぎやしないかい? いったい僕がこの服を着て髪を整えたらなんの補正がかかるんだよ。


「そじゃあ、ゆっくりとこっち向いて?」


 そう言われて、僕は言われた通りゆくっりと振り返ってクルアを見つめる。


「お? なんだクルアは大丈夫……」


「……………」


「……じゃないな」


 クルアはほかの三人みたいにぶっ倒れたり同じ言葉を繰り返すことはなかったけど、よく見ればわかる。クルアの目はどこか虚ろでそこには意思は感じなかった。クルアは静かに、でもしっかりと壊れてしまったよう。


「それじゃあ最後にルカだけど……」


「刻む心音、揺らめく篝火、その幻想は夢から覚めた。すべての秒針は真実を失い、深紅の蛇竜がむさぼり食らう。暗き棺の主が誘う、戸惑いには嘲笑を、絶望には微笑みを。戻るには遠く足跡もなく、もはや光は消え失せた。揺り籠の中の黄昏、大地の響き、囁くような死の輪唱。円環の外を歩む者よ、常闇に沈む第三の眼を開け。赤き私怨に其の眼を灯せ……」


「うん、いつの間にか壊れてる」


 呪詛のように何かを早口で僕の方を向きながら永遠とぶつぶつつぶやいてた。なんだかっとても恐ろしい。


「ううん……?」


「あ、ミーナおはよう」


「ひゃっ、はぅ……//」


 バタン。


 もういいや、なんかみんな撃沈しちゃったし髪の毛直すか。この髪型はもう当分やらないことにしよっと。


 馬車はゆっくりと確実にブリリアント王国に向かって進んでくのだった。




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