196話 いざ行け! ブリリアント王国! (やっと出発)
◇◇レンside◇◇
「なぁ、レン! やっぱりあたしもつれてけ連れてけよ~」
「嫌だよ、レオ連れてったら何しでかすかわからん」
「別に変なことはしないぞ? それにこれから敵と戦うんだろ。ならなおさらあたしが行くべきじゃないか」
「それがすごく不安なんだよ」
レオが暴れたりなんかしたら最悪ブリリアント王国が壊滅しかねない。気分屋なレオのことだ、またむしゃくしゃして王城を壊しにかかるとも限らないし。
「そうですぞ。それにレオさんは仕事が溜まっていたでしょう? レオさんの担当する幻獣種総合からの報告書を私が見た覚えはないのですが、そこはどうなっているのでしょうかね?」
アーゼさんがそう言うとレオはバツが悪そうな顔をする。おかしいな、この前もアーゼさんに催促されてたはずなのに。
「あー、もう少し待ってくれ。あたしにはああいうの合わないんだよ。後でレアに手伝ってもらってやるからさ、な?」
「な? じゃないですぞ。レアさんの苦労が思い起こされますな」
「あら? あなただって昔はよく執務を放棄していたでしょうに」
「ルーナ、それは……」
と、今度はアーゼさんが妻のルーナさんのお言葉にバツが悪そうな顔をするのであった。僕もさぼってたらなんか言われそうだ……ルーナさんには要注意っと。
「と、ところでそのレアさんはどこに?」
アーゼさんは秘技:話そらしを使った。
「レアならほら、あそこでなぜかぼーっと突っ立てるぞ」
レオが指さす先には確かにレアがいた。ただ、周りの女性たちの様に茫然自失みたいになってるけど。
まさかのレアまで謎の「はぅ……//」現象がおきていたのか。というか、いつ出発するんだろう? 華憐にあっち行っててって言われたけどもうかれこれずいぶんと時間がかかっている。最初に遅刻してきたのは僕だから強くは言えないけどそろそろ出発するべきでは?
ちょくちょく華憐たちの方を見てみると話し合いをしてるっぽいし、あと「チラっ、チラっ」って視線を感じる。まぁ、なにか話し合うことでもあるのだろう。
「でももうかれこれ三十分以上だしそろそろ終わったかな?」
そう思って再び華憐たちの方を向いてみると、どうやら話し合いは終わったようで僕たちの方へと歩いてきていた。
「もう、出発できるの……ん?」
なんだろう、全員どこか様子がおかしいような。僕を見る目が普段とは違っているような……。
「ご飯くん! お待たせ!」
「……ん?」
なんか今、どこかおかしくなかった?
「お味噌汁しゃん、なんてよか匂いと……ジュルリ」
あれ? いまティエラさんジュルリって……。
「あぁ、血がtomatoを欲してるわ」
クルアさん。目が輝いてる。それはもう爛々紅々と。
「これは、未知との遭遇。一体どんな味がするのか」
そんな手をワキワキさせないで、ルカさんよ。
「ちゅ~~~」
あぁ、これはミーナがマヨネーズをしゃぶってる顔だ。
なるほど、分かったぞ! これは僕が食べ物に見られてる目だ!
「いや、なんでだよ! 準備できたならいこう?」
そう言って馬車に向かおうと歩き出した途端、場面は一気に移り変わって行くことになった。
「tomatoが動き出したわ! 総員、確保~!」
「え? 何?」
「白米には何も振りかけない方がいいと思うの~!」
華憐が突然意味不明なことを言ったと思ったら、僕に布が被せられ視界が見えなくなった。瞬間、今まで固まっていた集まっていてくれた人たちの黄色い声も聞こえてきた。それから、背中を押されて訳が分からないまま歩かせられる。
「それではお父様、お母様。行ってまいります。後のことはお任せいたしますね」
「おい! 何やってるの? ねぇ!」
「いいから、そのまま黙ってつい来るのだ未知の果実よ。あ、こら! 布を取ろうとするなし!」
「すみません、道を開けてください。離れて、離れてください」
なにがなんだかわからないから僕に被さってる布を取ろうとしたらルカに押さえつけられた。
直ぐにまたみんなに被せられてしまったけど少しだけ見えた外の様子はなんか阿鼻叫喚ものだった。
さっきまで固まっていた女性たちが嘘のように動き出して「レン様! お顔を見せてください!」「あぁ、まだ行かないで! もっと眺めていたいの!」とかなんとか言って僕たちの行く手をふさいで来ようとしてくるのをティエラがドラゴン自慢の怪力で押しのけて道を作り、僕の四方を他の四人が押さえて近づけられないようにされていた。
いや、本当に何がどうなってるの?
「なぁ、華憐、これは?」
「ご飯くん、出てこないで。いまのあなたは外の人たちにおいそれと見せられる姿じゃないから。このまま馬車まで行って出発するよ」
おいそれと見せられる姿じゃないって、僕はいったいどんなにひどい姿をしてるんだ。普段と違ってきっちりとした格好にちょっとおしゃれしただけなのに。でも、姿は見えないけど聞こえてくる女性たちの声を聴けば違わないのかも?
「あれ? でも、なんか出発前のスピーチとかするんじゃないの?」
「だめ! そんなことをしたらさらに収集が付かなくなって死人まで出てきかねないよ!」
「そんな大袈裟な~、そんなんで人が死ぬわけ……おわ!?」
すると華憐がいきなり布の中に入ってきてきた。
「いい!? 今のあなたはそれくらいの殺傷力をもった魅力を放ってるの! もう少し自分の容姿を確認して! 絶対ここから出てきちゃだめだよ! それと後でそのご飯食べさせてね!」
「お、おう……」
あまりの強い口調に反射的にうなずいてしまう。というか、華憐はいったい僕が何に見えてるんだ……どこにもご飯なんて持ってないんだけど。
結局何もかも訳が分からないまま馬車の前まで連れてこられた。その間ずっと布を被せられていて、気分は犯罪を犯した人気芸能人がマスコミから顔を隠しながら移動するときのようだったよ。
(レン、オリビアから手荷物受け取らないと)
と、腰に差したエリュから念話が伝わってきた。そういえば出てくるときに持ってもらったんだった。
エリュに教えてくれたことに感謝を言って、オリビアさんから荷物を受け取ろうとちらっと外の様子を眺めれば、群がってくる人たちを華憐たちが必死に抑えていて、隅の方に追いやられたオリビアさんが僕の荷物を持っておろおろしてるのが見えた。
「オリビアさん、オリビアさん」
「ひゃ、ひゃいっ!」
布から顔を出してちょいちょいっと手招きすると、やや挙動不審ながらもこっちに荷物を持ってきてくれた。
「……………」
けど、近づいてきてくれるとさっきみたいに再びぼーっと僕の顔見ながら固まってしまう。
「あの~、荷物をください」
「……あっ、はっ、はいっ!」
やや上ずった声で緊張したように渡してくれる。けど、やっぱり何をいまさら緊張することがあるんだろう? もう結構長い付き合いなんだけど。まぁ、いっか、取り合えずお礼を。
「ありがとう。それじゃあ、行ってくるねって、あれ?」
「ひゅ~……もう、だめ……です」
すると、オリビアさんはタコがゆでられたように真っ赤になって倒れた。そして、さっきまでわいわいがやがやしていたところも静かになって、かわりにドサッと人が倒れる音が頻発する。
「あ、気を確かに持ってください」
「はぅ……//」
「あっ! クルア、ミーナが幻術が見えているはずなのにまた倒れた!」
「こうなったらさっさと出発するわよ!」
「あーもう! 絶対出ないでって言ったよね! ほら早くオリビアさんはそこに置いて馬車に乗って!」
「え? このままここに放置したらよくないでしょ? 他の人たちもあんなに倒れてるのに……あ、まさか誰からか攻撃されてる?」
「もう! ほんとに何もわかってない! ご飯くんがそこにいると被害が増えてくの! みんなの安然のためにも早くいくよ!」
「いや、だからそのご飯くんって何なんだよ! いったい何が起きてるんだよぉぉぉぉお!!」
そうして、華憐たちに馬車に詰め込まれてやっとこさエリュシオンを出たのだった。
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ゆっくりとだけど確実に増えていくのを見るとやる気につながりますね!
これからもよろしくお願いします!




