193話 いざ行け! ブリリアント王国! (みんなの新衣装)
◇◇レンside◇◇
なんかさっきからごっつい視線を感じる。城の廊下ですれ違う人たちも僕たちが通ると二度見されたり、フラってする人がいたり、しまいには「はぅ……//」ってため息をつかれて倒れたりする人もいるしだいだ。あとみんな普段はもう少しフレンドりーなのに、ていうか僕がそうなるようにコミュニケーションをとってきたのに、今はどこかよそよそしい感じがする。
もしかして、僕の子の格好そんなに似あってなかったりするのだろうか……? 前を歩くオリビアさんも僕とあってから、もじもじと恥ずかしそうに居心地悪そうにしてるし。まさか、僕と歩いてるのが恥ずかしいとか? もしそうだったら超自信無くすんだけど。
(なぁ、エリュ。なんでみんなこんなよそよそしいんだ?)
(…………う~ん、たぶんレンの雰囲気がいつもと違うからだと思う)
(も、もしかしてやっぱり似合ってない?)
(…………それはないから大丈夫。いつものようにしてたらいい)
(まぁ、エリュがそう言うなら)
(…………ん、もうすぐ着くからみんなに手でもふっってあげるべき。たぶん、見送りに集まってるはず)
今は剣となって僕のベルトにささってるエリュの念話の言う通り城の前には僕たちを見送りに来てくれてる人たちが沢山いるようでがやがやとした喧騒が聞こえてくる。
そして、外に出た瞬間視線が一気に僕に集まったのを肌に感じた。
「えっ!? なにっ!?」
さらに、広がる「はぅ……//」っていうため息と、フラっと貧血を起こしたように倒れる女性の輪。一部男性もいるみたいだけど。それはまるで僕を中心とした波のようだった。
「えっと、なにこれどゆこと?」
いったいなにが起きたのかさっぱりだけど、馬車があるとこに華憐たち今回同行するメンバーが見えたからひとまず遅れたことを謝ろうとそっちに向かった。
みんなにだんだんと近づけば遠目からでも見えていたけどより一層みんなの着ている新衣装もが見えてくる。
華憐の服装はアルカとお揃いにしたのか黒色を基調として蒼のツートンカラーのミニスカ軍服モドキ。普段被り物はしない華憐だけど今は軍帽を被っててそれがしかっりと似合ってるから、意外と被り物が似合うことを初めて知った。
クルアは裏地が赤い黒のローブと三角帽子を被っていかにも魔法使いって格好だ。もちろんそんじゃそこらの質素なローブとは違って気品を感じる優美な装飾が施されていてクルアの大人びた雰囲気にとてもよくあってる。しかし悲しいかな、大きく開いた胸元からはその存在を主張するはずの……いや、これ以上は何も言うまい。
ルカの服装だけれど……う~ん、こじらせてるなぁって感じ。ゴシックメタル風な服装で背が高くてスタイルのいいルカにピッタリなんだけど、腰についてるチェーンとか、なぜか片手だけつけてるハーフフィンガーのグローブがいかにも中二病な感じ。けど、かっこいいなぁ……あれ、こう思ってる僕も拗らせてる? ちなみに、どういう構造かは知らないけどルカの服は羽根を隠すことができるようになっていてはたからみれば天使族には見えない。
次にティエラの服装はシンプルなノースリーブのワンピースだ。ティエラは竜人だからそもそも体が普通の人間と比べてだいぶ丈夫だし、本人が動きやすい格好がいいらしい。けれど、ティエラの儚さを助長していてこれで正解だと思う。
最後にミーナだけど、なんで鼻血出して倒れてるんだ? 暑かったのかな? いや、ミーナの服装はそんな暑そうには見えないけど。ミーナの服は緑色のミニスカートに袖なしのトップス。五人の中だと一番露出してるけど決して下品な感じはしない。でもおへそが出ているのはエロいと思う。ぶっ倒れてるから台無しだけど。
そんな感じでみんなのもとに向かいながらみんなの服装を見てみたけど、みんな美少女だし似合ってて百点満点だと思います!
まぁ、そんなことよりまずは遅れたことを謝ろう。それで、許してもらえるようにしっかりとみんなを褒めるんだ!
「えっと、みんな少し、いやかなり待たしてごめん。それと全員よく似合ってるよ……ってあれ?」
全く反応が返ってこないから訝しんでみんなの顔をみてみるとみんな僕を見て固まってるみたいだ。
「お~い、華憐? どうしたの? ていうか、なんでミーナは倒れてるの?」
「「「「「……」」」」」
「お~い、クルア? ルカ? ティエラ?」
「「「「「……」」」」」
みんなの前で手を振ってみても石になったみたいに反応しない。けど、僕が移動すれば視線だけは動いてくるっていう謎の空間が出来上がっていた。
「いったいなんなんだ……。華憐! 華憐目を覚ませ!」
「……………はっ! ありがとうございます! ありがとうございます! もう十分満足ですごっつぁんです!」
「え、何言ってるの?」
がくがくゆすってやっとフリーズ状態から動いたと思ったら何かわけのわからん事を叫ばれた。
「はっ! 蓮くん」
「はいはい、蓮くんだけど、みんなどうしたの? 固まって動かないけど」
「そ、それはだってあまりにも蓮くんがかっこよ……ひゃうんっ!」
みんなの方を向いて華憐に質問したら、答えようとしてくれたから華憐の方を向いたのに、向いた瞬間猫がしっぽ踏まれたような声を発してすぐに目をそらされた。
「いったいなんだってばよ……」
その間にも、ギャラリーが一人また一人と倒れてっているようで、もう何が何だかわからん。
「れ、蓮くん。ちょっとあっち向いてて? 私たちにはまだ刺激が強すぎるから。その間にみんなの再起を図るから。ね? このままだと私たち天に召されちゃうから!」
「わ、分かりました」
ギュッと目をつむって必死な様子の華憐にそう言われて、城の方を向いたらアーゼさんがやって来るところでちょうどいいと思って彼と話をすることにした。
「おお! レン様、すごく立派に見えますぞ!」
それって普段の僕は立派に見えないのだろうか、頑張って威厳があるようにふるまってたつもりなんだけどなんだか悲しい。
アーゼさんは僕が振り向いたときにちょっとびっりしたように目を見開いたけど華憐たちみたいにフリーズすることなくにこやかに会話してくれた。
なお、振り向いたときにまた数名の女性が黄色い声をあげて倒れたのは言うまでもない。
■■
◇◇カレンside◇◇
「はっ……はっ……はっ……」
だめだ、あの姿の蓮くんは私たちにはインパクトが強すぎる。直視した瞬間まるで魂を抜かれるような……そして、そこにいると無意識に目を向けちゃう衝動にかられちゃう……でも、その衝動に負けて見てしまうと魂が抜けて……ああああああぁぁぁぁぁ!
「ふぅ……ふぅ……ふぅ……やっと、落ち着いて、来た……」
心臓はバクバク言ってるけど、とりあえず大丈夫。後ろから「きゃあ!」っていう声が聞こえて振り向きそうになるけど振り向いちゃいけない。私はみんなを助けなくちゃいけないの、意思を強く持なさい! 華憐!
「クルア。クルア目を覚まして!」
「はぅ……//」
だ、だめだ……完全に蓮くんに釘づけになってる。心なしか瞳がハートに見えるような……。
「クルア! 起きなさい!!」
「はぅ……// はえ? 私は、なにを……ちょ、カレン!?」
クルアの目に正気が戻った瞬間、視線が再び蓮くんの方に動いているのが見えた私は、クルアの視界を両手でふさいで後ろに振り向かせた。
「クルア、冷静に。いまの蓮くんを直視すると簡単に魅了されちゃう。まずはこのまま蓮くんを見ないようにしながらルカとティエちゃんを起こそう」
私がそう言うと正気に戻ったクルアは瞬時に状況を理解して決して蓮くんを見ないようにしながらルカを起こしに行った。
「それなら私はティエちゃんを起こそう」
ティエちゃんはクルアと同じように心なし目がハートになっているようで、しかも今にも倒れそうでフラフラとしてた。
「ティエちゃん! 目を覚まして!」
「はぅ……// かっこよかかっこよかかっこよか……」
うん、ティエちゃん。その気持ちは私も良くわかるけど今はそれどころじゃいの。今の蓮くんはそう、歩く魅了モンスター。私たちが何とかしないとこのままじゃ全世界の女の子たちが再起不能に陥っちゃう。あれは私たちが生み出した魔王なのだからわたしたちでなんとかしないと。
「好いとーなぁ好いとーなぁ好いとーなぁ……」
「ティエちゃん! おっきろーーーー!」
「はぅ……// うぎゅっ!?」
ほっぺぐにぐにしても肩をぐあんぐあん揺らしても起きなかったから、ティエちゃんもってる私たちの中で最強のものを鷲掴みしたらやっと戻ってきてくれた。
「か、カレンしゃん……む、胸ばそげん風にやらる~と……」
「いいじゃないかよぉ、減るもんじゃあるめーしぐへへへへ」
っち、やっぱり私より大きい……それになんて柔らかくて張りのあること。こんな小柄なのに卑怯だよ! もうっ!
「ひゃんっ// カレンしゃん……」
っく、儚い……ティエちゃんにそんなふうに涙目でみつめられると、すごく悪いことしてるような気がして、そしてもっと犯したくなってしまう衝動にっ!
「……痛ったい!?」
「カレン! ティエラの胸を揉んでないでレンをどうにかするわよ! あなたが言ったんでしょう」
と、ぱこーんと頭を叩かれてそっちを見るとクルアと正気に戻ったルカがいた。
そうだった、ついつい現実離れしたティエラのおっぱいに夢中に……あれを本物の魔乳というのかもしれない。




