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192話 いざ行け! ブリリアント王国! (レンの新衣装)

 


 ◇◇レンside◇◇  



 準備の終わった次の日。


 昨日は持っていくものをすべて詰め込んだ後は次の日から馬車の旅が始まるため、その日は自由時間となりそれぞれ各々の時間を過ごしてリラックスしていた。


 その甲斐があってか今日の寝起きは普段よりもよくすっきりとした気持ちで朝を迎えた。


 流石に今日はミーナもルカも僕の布団に潜り込むことはなかったよう。もう、毎回毎回潜り込まれるたびにどこから侵入してきたか探してつぶしているのに一向になくならないから僕もやめさせるのは半ばあきらめかけている。別に害があるわけではないし。


「エリュ、おはよう」


「……ん、おはよ」


 寝室から出るとすでに起きていたエリュに朝の挨拶をする。彼女は僕の剣なので今回の旅は当たり前のように同行する。


「もう持ってくものの準備はできてる?」


「……ん、エリュの荷物はそこまで多くない。レンがエリュのお手入れセット忘れて無ければ大丈夫」


「ちゃんと持ってるよ」


「……それならいい。そういえば、さっきカレンが来てこれを置いていった。着替えて来てって」


 エリュが指さしたところには丁寧にたたまれた服一式が置いてある。


 そういえば、昨日いい機会だからみんなで新しい服装になろうって言って急遽お鶴さんにみんなの分の服を頼んでたっけ。


 僕としてはいつも通りの服でもいいと思ってたんだけど、流石に作ってもらったのに着ないのは失礼か。それに流石に外に出るのにいつも通りのこの格好じゃ冒険者になるにしても、王様になるにしても示しがつかないと思うし。


 あまりこういう話はしなかったけど、普段の僕の格好は高校生御用達のお店にありそうなパーカーに紺のジーパンっていう僕が一番楽だと思える格好。最近は暖かいからポロシャツに上着って感じだけど、どっちもエリュシオンでならともかくこの世界の別の国なら浮くような服装だろう。


 考えてみなよ。その服装で剣とか持ってたり王冠とかかぶってたりしたらミスマッチすぎて二度三度見はする自信がある。悪い意味で。まぁ、僕は楽な服装が好きだからあんまり気にせずお鶴さんにすぐ作ってもらったけど。


 あ、ちなみにオシャレじゃねぇ~とか思ったやつ。流石に彼女とデートとかの時はそれはもう気合入れていくよ? ネックレスとかつけたり、髪の毛セットしたりして。じゃないと相手に恥かかせちゃうからね。相手のためを思えばオシャレなんて苦じゃないんだよ、わかったか男子ども! まぁ、オシャレなんて最近五部沙汰だったけれども。


「せっかくだし、今日くらいとびっきりオシャレしてあいつらをびっくりさせてやるのもいいかもしれない。新しい服もあるし」


 こっちに来てから一回も髪のセットなんてしてなかったからね。たまにはやらないとやり方忘れちゃうしちょうどいい。


 ということで、僕は今日はオシャレをすることにした。



 ■■



「よしっ! これで満足!」


「……やっと終わったの? レン時間かけすぎ」


「しょうがないじゃん、いきなり決めたことだったから」


「……それにしても、何回違う違うって繰り返したと思ってるの。それで、どんな感じに……」


 しょうがないじゃん、髪型のセットっていうのは自己満足なんだから。こんなもんかな? じゃ、ダメなんだよ! って、言い訳しようとエリュの方を向いたら、なんかフリーズしてた。


「どうした? おかしいかな?」


「…………………」


 あれ? 結構自分の中ではいい感じにきまってると思ったんだけど……そんな反応されると不安になってくる。


「……えっと、驚いた。すごくかっこいいと思う」


「まじ? ならよかった」


 いつもより長い沈黙の後にちょっと頬を赤らめてるエリュだから、嘘じゃないだろう。久しぶりのセットだから不安だったけど安心した。


 一応改めて姿見で自分を見てみると、自画自賛だけど結構いけてるんじゃね? って思う。


「ていうか黒いなぁ、服装」


 華憐からもらった服装は、ロングコートとズボンとブーツ、グローブ。黒い生地が基調で紅で差し色が入っててツートーンデザインだ。ロングコートにはさらに左腕のところに王冠の模様が入っていて、僕が王様ってことをアクセントとして表してるみたいだ。


 この世界で着ていても違和感はないと思うし動きやすく普通に僕もかっこいいと思う、なんか上級冒険者! って感じ。どことなく見覚えがあるのは華憐がなにかのアニメの主人公の服装をお鶴さんに伝えたんだろう。


 素材はいいものを使っているようで着心地はいいし、アウラたちの付与魔法もついてるからそこら辺にある下手な防具よりは身を守ってくれるはず。


 ちなみに髪型はいつも降ろしてる前髪を上げて、ピアスのある左側のもみあげは耳にかけてみた。野暮ったい感じはなくなってさわやかになったと思う。自分でいうのもなんだけど。


「まぁ、これならエリュを持っても違和感は無いね。それじゃ、みんなのところにいこうか。たぶん、またせちゃってるよなぁ」


「……ん、完全に遅刻。でも、その姿見せれば大丈夫だと思う」


 さあ行こう! と、久しぶりに開けた化粧ポーチをバックにしまってエリュと一緒に部屋から出ようと扉に手をかけた時開けるよりも先に扉がノックされた。


「レン様、準備は終わりましたでしょうか?」


 声の主はオリビアさんだ。今回はオリアさんがいるからオリビアさんは居残りだけど僕が遅いから呼びに来てくれたんだろう。


「すみません、準備に手間取っちゃって」


 そう言ってドアを開けると予想通りオリビアさんがいた。


「あ、レン様。カレン様たちが待ちくたびれて……」


「うん、今行くよーって、オリビアさん?」


「……はいっ!?」


「大丈夫?」


「だ、大丈夫です。そ、その格好とてもよくお似合いですね!」


「そう? ありがとう。それじゃ、早くいこ」


「ひゃっ、ひゃいっ!」


 なぜかいつも凛としているオリビアさんがしどろもどろになってるのを不思議に思いながら僕は城の前に向かった。



「……レン、恐ろしい子。あの姿で微笑まれたら誰でも堕ちちゃう」



 ■■



 ◇◇カレンside◇◇



「遅い……」


「遅いですね」


「遅いわね」


「おっそいし」


「遅いです」


 何がって? 蓮くんがだよ!


 今日出発っていうのちゃんとわかってたのかな? かれこれもう一時間くらい待たされてるんだけれど、どういうこと? 今オリビアさんに様子を見に行ってもらってるけど、もしまだ寝てたりしたら……。


「……まさかっ!?」


「どうしましたカレン様?」


「いや、前にもこんなことあったなって。ほら、蓮くん全然起きてこなくて一か月寝てた時があったじゃん? もしかしたらあれとおんなじじゃないかと思って」


 実際は寝てたんじゃなくて神様とゲームして遊んでただけなんだけどね!


「確かに、あの時と状況が似てるわね」


「ふん、もしそうならレンには裁きを受けてもらう必要があるな」


 そうだね、ルカの言う通り。今度はどんな裁きを受けてもらおうか……。


「あの、あの時とは?」


「そういえばまだティエラが来る前だったわね。ちょうど雪が降り始めたころなんだけど……」


 ティエラにあの時のことを説明しつつも、私はもし本当に同じことだったら嫌だなって強く思う。


 だって、せっかくの異世界の王国に行くのにみんなと行けるのはいいけど、やっぱり蓮くんがいないのは寂しい。蓮くんと異世界の町を一緒に歩ているところを想像するだけで顔が緩みそうになるし、昨日はそのことを考えただけでなかなか眠れなかった。


 それに、今朝渡した服。私が提案してお鶴さんとネクさんがデザインした服を着ている姿も楽しみにしてたのに。私の格好だって見てもらいたいのに。


 そして何より、あの神様はなんで蓮くんとゲームしてるのよ! 私だって一緒にゲームしたりアニメ見たりしたいのに! ずるいずるいずるいっ!


 そう内心悔しがっていると、私たちを見送りに来てくれてたエリュシオンのみんな、とくに女性が城の入り口を見て、顔を赤らめて「はぁ……//」とか「はぅ……//」ってため息をついたり、凝視や二度見、いや三度見したり、中には鼻血を出して倒れる人も現れ始めた。男性のほうもそこまで顕著で環ないけど目を見開いてる人も多い。


「えっ、なに? みんなどうしたの?」


 私が周りの異常事態に気づいて声を出すとみんなも気が付いたのかなにが起きたのかと身構える。


「これはなにか攻撃を受けている……? クルア、何か感知は?」


「いえ、特におかしな魔力が流れてることはないわ」


「私もおかしな神気は感じない」


「皆さん、お城の方を見てませんか?」


「そうですね。向こうの方に何かあるのか……はぅ……//」


「み、ミーナ!? ちょっとしっかり!」


 ミーナが城の方を向いた瞬間、周りの女性たちと同じように鼻血を出して倒れてしまった。


「こ、これはいったい何なの!? この世界には『はぅ……//病』でもあるの?」


 私はパニックになりつつみんなに声をかけるけど、誰も返事を返してくれなかった。


 いったいどうしたのかと思って、みんなを見ればある一点を見つめて目を大きく開いて固まってる。その視線は城の方に向けられていて原因はその方向にあるのは明らかだった。


「ええい! 向こうにいったいなにがあるの!」


 意を決して私もそっちを見ると、


「っ……!? はぅ……//」


 そこには、息を飲むほどかっこいい王子様がいた。




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