191話 いざ行け! ブリリアント王国! (出発準備)
◇◇カレンside◇◇
「みんなで行けることになって良かったですね!」
「そうね。まぁ、私としてはアーゼさんのいうレンかカレンが残った方がいいっていう意見もわかるけれど」
「そんなこと言って、実はクルアがみんなで一緒に行けることになって嬉しいって一番思ってるの幼馴染の私にはわかっちゃう……わ~! やめてやめて! 羽根引っ張らないで!」
「ふんっ、行くときにはちゃんとこの羽根隠しなさいよ」
「うふふ、皆さんとちょっとした旅。楽しみばい」
「カレン様? さっきからしゃっべってませんけど、どうかしましたか? もしかしていくの嫌だったり……」
「うぅぅぅぅ~~~っひゃっほ~~~う! 異世界の国だよ、異世界の国! しかも王国! それに冒険者にもなれる! なんかやっと異世界に来た! って気持ちになる!」
いや、確かに今までも人間以外のひとにあったり、動物が擬人化したり、魔法が使えたり異世界なんだなぁって思ってたけれど慣れとは恐ろしいもので既にいまの生活が日常なものになってきてたわけさ。
それに、エリュシオンがだんだんと日本みたいになってきてるせいでだんだんと現実味が現れてきたっていうか、マンネリ化してきたっていうか……とにかくなんだか生活に刺激が欲しかったの!
そんなことを思ってた矢先にみんなで他国に行くっていうイベント! まぁ、戦争に参戦っていうのはあるけど、やることが終わったら私は普通に観光がしたい!
そもそもの話、私と蓮くんが放り出された場所が何にもない森だったのがおかしいと思うの。こういうのって大体始まりの町みたいな初心者向けのところから始めるものだよね?
それにしても、ブリリアント王国はどんなとこだろう? 街の雰囲気は? やっぱり昔のヨーロッパみたいなかんじかな? お城とかあるのかな? サンクランド帝国に行ったときは街の様子を見る余裕はなかったから本当に楽しみだなぁ。
「カレン……カレンっ!」
「あ~楽しみだなぁ~、ん? どうしたのクルア?」
「楽しみなのはわかったから準備を手伝いなさい」
「あっ! ごめんごめん! ついつい浮かれちゃって」
あ~、なんていうかやっぱり、オタクとしてはテンション上がっちゃうのはしょうがないんだよ許してクルア。
昨日、私とルンちゃんが持ってきた情報からエリュシオン会議を行い、そこでブリリアント王国が侵略されないようサンクランド帝国とブリリアント王国の戦争に介入することが決まった。ただし、ただ参戦するのではなく身分を冒険者として参戦する。それで、戦争に勝った後に改めてエリュシオンの主権を認めてもらうということになった。
ブリリアント王国に行くメンバーも昨日のうちに選定して、向かう人は私、蓮くん、ミーナ、クルア、ルカ、ティエラ、ミライアたち、ストラトスさん、オリアさんに決まった。
アーゼさんは私と蓮くんの両方が向かうことに難色を示してたけど蓮くんと二人で頑張って説得して二人とも行けることになった。ただ、私は戦争には参加せず常にこのメンバーで一番強いティエラと一緒にいることっていうのが条件で。この条件は蓮くんが出した条件だった。
たぶん本当は蓮くんも私には来てほしくないと思ってるんだと思う。戦争っていうのもそうだけど、戦う相手が私の寝る友のネネちゃんになる可能性が大だからだと思う。それでも私の気持ちが良くわかるのか連れて行ってくれる。やっぱり蓮くん優しい!
ミライアたちを連れていくのは彼女たちがブリリアント王国の出身だから案内をしてもらおうと思って。彼女たちは前にデモゴルゴンとかいう悪魔に誘拐されていたところを助けた子たちでやっと里帰りさせてあげることができる。まぁ、本人たちに言うと私たちは既にエリュシオンの人間です! っていわれるけどやっぱり一度は帰らせてあげないと。
あと、ストラトスさんはいつも通り連絡係でオリアさんはみんなのお世話係。いつもお世話になってます。
この十二人が今回ブリリアント王国に向かうメンバー。アーゼさんは護衛を付けるべきだって言うけれど、私としては大丈夫だと思うんだけどなぁ。それにそういうのは正式にエリュシオンの人間として向かう時でいいと思う。
いつもならピィナとポムちゃんに運んでもらうため二人もつれていくけど、今回は戦争っていうことで二人には教育上良くないだろうってことで連れていかないことになった。だから移動はトンネルの試し運転もかねて馬車で行くことになる。
ティエラに乗っていくっていうのもあったけど、ティエラが竜になると周囲の天候に影響が表れて、姿が見られるとパニックになるだろうっていうことで却下になった。
それで、今はブリリアント王国に行くための準備をしている。
もし、向こうで交易がすぐに始まることになった時のため、エリュシオンの特産品として野菜や果物などが主だけど、他にもお鶴さんたちが作った洋服とか、アウラたちが作った魔道具とかも持っていく予定。
「クルアさん、マヨネーズは入れましたか? 入れましたよね? 絶対入れてくださいよ!」
「わかってるわよ。ちゃんとたくさん入れてるから安心しなさい」
「マヨネーズならブリリアント王国でもバカ売れ間違いなしですからね!」
「ほら、私のカレーも持っていきな。私が調合した特性カレールーだ。向こうのお偉いさんたちがとりこになるの間違いなしだよ」
「なんのなんの、ちゃんと酒も持っていくのじゃ! わらわたちが作った酒じゃ、そんじゃそこらの安酒と比べるのもおこがましいのだからしっかりと高値で取引してくるのじゃぞ」
「わかったわ、わかったからゆっくり入れていきなさい!」
クルアの周りには大量の木箱がどんどんどんどん積み重なっていってクルアだけが使える大容量の収納魔法に収められていく。
「ねぇ、カレンおねーちゃん」
私も詰め込むのを手伝っていると、くいくいっと裾を引っ張られた。引っ張ってるのはピィナだ。
「どうしたの? ピィナ」
「本当にピィナは行ったらだめなの?」
「もしかしたら、危険なことになるかもしれないから連れてけないよ」
「むぅ……」
いつもはつれっててるからなぁ~、ピィナも不満なんだろうな。でも今回はあきらめてもらうしかないんだよ。でも、なんだかこのままだとルカを助けに行ったときみたいに勝手についてきそうな気がする。どうしたものかなぁ?
「う~ん……そうだ! お土産買ってきてあげるから、おいしいもの」
「お土産?!」
「うん、いい子に待っててくれたら買ってきてあげる」
「ほんと? やった~! カレンおねーちゃん楽しみにしてるね!」
「ちゃんといい子にしてなきゃだめだからね」
不満げだった顔がよだれを垂らして今からお土産が待ちどおしくて仕方ないって顔になった。本当にピィナは食べることが好きだよね。
「あ! そうだ! ピィナもクルアおねーちゃんに何か渡そう!」
「え? ピィナ?」
すると、ピィナはクルアが交易品を詰めているのをみんながクルアに何かプレゼントをしているのと勘違いしたのかそんなことを言って巨木な我が家に向かって飛んで行った。
「何か渡すっていったい何を……なにか嫌な予感がする」
そして数分後、巨木な我が家の空中庭園から巨大な卵型のシルエットが、否! 巨大な卵そのものが飛んできた。
「クルアおねーちゃん! ピィナの卵も持って行っていーよ!」
それは、前にプリンパーティーをしたときに使ったピィナが産む卵。また産んでたなんて私知らなかった。
「え、カレン? これも持っていくのかしら?」
「えーと、さすがにこれは……」
「いや、いいんじゃね?」
そういったのはいつの間にか私たちのところにいた蓮くんだ。
「ピィナの卵、でっかいからインパクトあるしお近づきの印にってかんじで渡せば」
「レンがそういうなら、一応持っていきましょう。まだまだ、『ガレージ』には入るから大丈夫よ」
ということで、ピィナの卵は持っていくことになった。でもこれ、確かすごく硬くなかったっけ? 向こうで割ることとかできるのかな……?




