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188話 冬が終われば春が来る! (たまには王様業務の束の間の休憩)

 


 ◇◇レンside◇◇



「ふぅ、これでこの書類の確認も終了っと。なかなか骨の折れる仕事だね、王様業務って」


 最後の書類に確認のサインをして伸びをしながら固まった体をほぐしていると、机の上に湯気が立っていい香りがする紅茶が置かれた。


「何言ってるのよ。これから本格的に国の運営をすることになったらもっと激務になるわよ。というか、ほとんどアーゼさんが行っててレンは確認してサインするだけの状態じゃない」


「ごもっともです」


 僕の補佐をしてくれているクルアにそう言われたら全く反論の余地もありません。


 紅茶を一口すすると、すっと体になじむ感じがして穏やかな気持ちになれる。


「クルアは紅茶をいれるのうまいよね」


「そうかしら? エリュシオンの紅茶の茶葉がいいからよ。それに、おいしい紅茶をいれるのは貴族の嗜みの一つよ」


 そう言って何でもないようにしてるけど僕は知っている。


 クルアを見ればいかにもすましたような表情をしてるけどちょこっとだけ口の端が上がってちらりと八重歯がみえた。


 あれは、なんでもない風を装っているけど内心結構喜んでるんだ。


 なんだかその様子が微笑ましくてつい僕もほころんでしまう。


「なによ、にやにやして」


「んー? なんでもないよー?」


 いや~、それにしてもアーゼさんには頭が上がらない思いだよ。本当にアーゼさんが宰相を引き受けてくれて助かってる。やっぱり元王様の経験者は違うね。


 昨日やっとこさトンネルが貫通して、僕の課せられた課題が一つ終わって、華憐には視察ってことでたまにはのんびりしてもらおうとトンネルの向こう側に行ってもらってる。


 それにしても昨日は本当に良かった。今までニワトリしかいなかった我が国についに豚と牛が追加されたんだから。それも、豚は最高級の黒豚! もう、嬉しくて嬉しくて豚を捕まえた時つい乗って連れてきちゃったよ。


 トンネルの向こう側はのどかな草原だったからきっとゆっくりしてこれるはず。


 その間、今まで華憐がやってきたことをたまにはってことでこうやって僕が引き受けてるわけだ。


「それにしても、みんなエリュシオンをいいところにしようとしてくれて嬉しい限りだよ」


 アーゼさんから回されてきた書類のほとんどはエリュシオンの住民からの「○○の建物を作ってほしい」とか、「こういう政策があったほうがいいのでは?」みたいな嘆願書のようなものが多くて、それがこのエリュシオンをいい場所にしていこうって感じがするからなんだか全員で国を作ってるみたいで楽しい。


「そのぶんトラブルもあってザリュたちは忙しそうにしてるわよ」


「まぁ、それは仕方ないよ。異種族交流っていうのはつねにトラブルがつきものさ」


 エリュシオンのほとんどの人が幻獣種で今まで魔物や魔獣だったからか衝突になるとこぶしで語り合うやつが多いんだよね。魔物の世界は弱肉強食、まだその感覚が抜けきってないのかもしれない。


 ただ、幻獣種の人たち全員が全員ってわけじゃなくて、一部の人が熱くなってかーってなるとって感じ。大体の人は華憐の知識を与えられてるからか日本人みたいになるべく穏便に済ませようとするから。


 そのかわり、その弊害か作ってほしいって頼まれるものとか日本にあるものが多いんだよね。なんだかエリュシオンはだんだん日本みたいな感じになって行っている気がする。


 正直、僕としてはもっと異世界異世界してる感じの国でもいいと思うんだけど、まぁなるようになるか。貴族制度の封権主義にしたら貴族の柵みたいのができそうで怖いし。


 あ、そういえば生粋の貴族様がここにいたや。


「……? どうしたのかしら?」


「いや、今のエリュシオンはこんな感じだけど他の国はどんな感じなんだろうって思って。貴族制度とか」


「なるほどね。うーん、そんなに気にしなくてもいいんじゃないかしら? 貴族制度には貴族制度のいいところがあるけれど、エリュシオンはまだできてもない国、きっと必要になれば自ずとそういう風になっていくわよ」


 なんだか、楽観的な感じがするけどそういうもんなのかな?


「……それに、私は貴族なんて好きじゃない」


「うん? 何か言った?」


「いや、なんでもないわ」


 なんかボソッと言ったような気がするけど……まぁ、クルアがそういうならいっか。


「そういえば、ルカとティエラとエリュになにを頼んだのかしら?」


「ん? あぁ、精霊探しかな」


「精霊探し?」


「そっ、精霊は精霊でも準精霊だけどね」


 今、珍しくエリュは僕のそばにいないで、ルカとティエラと一緒に巨木な我が家に行ってもらってる。


「たぶんだけど、見つけられたら巨木な我が家をいい感じにリフォームできると思うんだ」


 巨木な我が家の改築は前々からやろうと思ってたんだけどいかんせんこんなのどうすればいいのか皆目見当もつかない。燃やす? ぶっ壊す? いやいや、そんなことをしたら巨木な我が家の魔法的な機能が失われてしまうってことでトーヤさんやアウラに却下された。


 まぁ、それをやってもこの巨木な我が家は一応植物みたいだから壊れたら自分で修復していくと思う。前にレオが襲ってきたときに火球が直撃したけど焦げたところも何にもなかったように治ってたから。


 それで、ふと思い至ったのが巨木な我が家の原点は神の種こと柿ピー。それなら、柿ピーをくれたあまちゃんに聞けば何とかなるかなって思って電話したんだけど、なんか最近忙しいみたいで出てくれず昨日もその通りだったからどうしたものかって愚痴ってると、それに答えをくれる人がいた。


 それは、ハク様、カレール、シュテンだ。三人が言うことはなんてことはない、考えてみればその通りかもって感じのことで、巨木な我が家にいるであろう準精霊を見つけるってことだった。


 ハク様、カレール、シュテンの三人はそれぞれニギリメシコシヒカリの木、カレーのルーの木、お酒の木と柿ピーを使って植えて僕の神気で成長させた少々特殊な木の準精霊で同じ条件で植えられた巨木な我が家にもいるだろうってこと。


 だから、そのまだ見ぬ準精霊を見つければきっと巨木な我が家の改築もできるのではないか? と考えたわけ。僕も実にその通りだなって思った。


「なるほど、確かにありえなくは無さそうね」


「そうでしょ。ただ、いるかどうかわからないけど。クルアは向こうで生活してた時そういうの見たことはある?」


「うーーん、ないわね」


 まぁ、そうだよね。たぶん、華憐も見たことないだろうし、いたらラッキーって感じで待ってよう。


 残りが少なくなってきた紅茶を最後に飲み干すと、まるでそのタイミングに合わせたかのように扉がこんこんと柔らかくノックされた。


「はい」


「失礼します」


 クルアが僕の代わりに扉を開けて中に招いてやってきたのはミーナのお母さんで、今はアーゼさんの補佐をしてくれてるルーナさん。ミーナに似ていて美人なエルフさんだ。


「あっ、ルーナさんお疲れ……さま?」


「はい、お疲れ様です。これは私が持っていきますね。それと、こちらが追加です。しっかりと確認しておいてください。それじゃあ、失礼します」


 そう言ってルーナさんはサイン済みの書類の束を持って、新たに書類の束を置いて部屋を出ていった。


 なんと有無をも言わせぬ速さ。きっとアーゼさんで慣れてるんだろうなぁ……。


「それじゃあ、続きをしましょうか」


「……うん、そうだね」


 王様ってみんな大変なんだ。


 それから、そのあとも何回か繰り替えしルーナさんが書類を持ってきて陽が沈むまで僕は頑張った。


 華憐ってもしかしたら毎日こんなことしてたのだろうか? しかもこれから、他の国との交易が始まったり、他の国から人がやってきたりするともっと大変になるのは目に見えてる。


 トンネルも終わったことで僕の負担は減ったから、これからはもう少し華憐の負担が減るようにしようと思った。


 ただ、その華憐が帰ってくるとまたとんでもない情報をもらってくるとは思わなかったけど。






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