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18話 エルフとニギリメシコシヒカリの木

 


 ◇◇レンside◇◇



 僕は華憐さんの興奮を抑えるためにと失礼に当たると思ったから口を抑えてる。


「あああーー! えうう!! えううあーー!!!」


 掌にちょっと吐息が当たってくすぐったい! けどこのまま華憐さんに突っ込ませたら相手さんはドン引きだ。第一印象が最悪になってしまう。


「華憐さーーん! 落ち着いてーー! 気持ちはわかるけど!! 落ち着いて!! どうどうどう」


「えんうん!!えううえうよ!! えうう!!」


「あーーもう!! なんで抑えてるのに口動くの!! ちょっと静かに!! 鎮まれ〜鎮まれ〜」


「レン! こっちくるぞ!」


「え? まってまって、今それどころじゃない!」


 謎の集団から、三人がこっちに向かって歩いてきた。


 近づいてくると遠目でも見えていた特徴的な耳がよく見える、流れるような金髪に綺麗な碧眼。


 うん、やっぱりエルフだよね?


 いや、まてまて、ラノベのエルフは気難しい存在というのが定番。ただのエルフまだいいけど、もしハイエルフとかだったら「エルフだ!!」なんて言ったら失礼かもしれない。


 とりあえず、華憐さんを何とかしよう!


「鎮まれ〜鎮まれ〜鎮まれ〜」


「あ、あのぉー? 」


 お、おおう、エルフさんもうこっちきてたのね。


「ちょっと待ってください! いま取り込み中なので!」


 いつの間にか目の前にいた金髪の美少女さんに苦笑を返しつつ僕は華憐さんを抑えることに集中する。


「は、はい……ですがその、抱えてる方は……」


「むーー!! ギブ……蓮くん……ギ…ブ……」


「レン兄ちゃん、カレン姉ちゃん、苦しそうだぞ」


「え? あ、華憐さんごめん、大丈夫? 深呼吸して〜」


 おっと、つい無心になって締め上げてたらやりすぎちゃったみたいだ。白目一歩手前。


「ヒッヒッフー……ヒッヒッフー……」


「ううん、それは出産の時のだよ、はいスってーー、はいてーースってーーはいてーー」


「スーーーハーーースーーーハーーー」


「落ち着いた?」


「はい!」


 おおう、締め上げられてたにしては意外と元気いっぱいだな。まだエルフさんを前にして興奮冷めやらぬのだろうか?


「あの、大丈夫ですか……?」


「ああ、すいません、もう大丈夫です。つかぬ事を聞きますがハイなエルフ様ですか?」


「ハイなエルフ……??」


 はっ! しまった! ハイなエルフじゃ、ヒャッハーー!! なエルフになっちゃう!!怒られるかな?


「ハイエルフのことなら、私はハイエルフですが、他のみんなは普通のエルフです」


 よかった、怒られなかったー。


 この人だけハイエルフか、たしかに他の人たちも美人だけどこの人だけ飛び抜けてるしなー。


「それで、どうかしましたか?」


「はい、どうかお願いしたいことがございます。私たちを匿って欲しいのです」


 うん、まぁ、そんなことだよね。だって後ろにいる人みんな何かしら荷物を持っていて、いかにも逃げてきました! 訳アリです! って感じだもん。でも、僕たちにとってこの世界に来て初めてのヒトとの会合だし、あまり邪険に扱うのも悪いだろう。


 それから、いと尊きハイエルフさんから自己紹介と事の事情を聞くことにした。


 彼女の名前はミーナさん、本名はもっと長いらしいけど難しいらしいからミーナでいいらしい。


 ミーナさんたちはあるエルフ国の人達で、最近ミーナさんたちのエルフの国が別のエルフの国に襲撃され、そのまま命からがら逃げてきたらしい。


 なるほど、よくあるフラグだな、しかもハイエルフって言ってたし、絶対やんごとないお方だろこの人。


 まぁ、いっか困った時はお互い様だし。


「レンさん……この人……この前いた」


 と、ポテトがミーナさんの後ろに立つ人を見る。


「ああ、彼女はリーアでレン様たちのことを見つけて、ここまで連れてきたくれたのです」


「なるほど。まぁ、事情はわかりました、ただ部屋は大量にあるんですがベッドとがなくて不便をおかけしちゃいますけどいいですか? 」


「はい、それくらいなら問題ないです、いろいろお手伝いもしますし、ベッドなら作れますし」


「え?! ほんとですか?! ぜひお願いします! ミーナさん!!」


 やっほ~~! ベット、布が全然なくて作れなかったんだよね。


「はいっ! お任せ下さい、それと私のことはミーナとお呼びください、それと言葉も砕けた感じでいいですよ!」


「ん? そうですか? じゃあミーナ、これからよろしくねー」


「はいっ! よろしくお願いします!」


 ミーナとがっしり握手する。なんだか、僕の思ってたエルフ像とは違って結構気さくな人だ。これから長い付き合いになりそうな気がするし、仲良くなれそうでよかった。


 その様子を不満げに見る人が一人……。




 ■■




 それから一旦家にミーナ達を案内する。


 ミーナたちはまず、巨木な我が家に驚いて、玄関ホールに驚いて、エレベーターに驚いていた。


 まぁ、自慢の家だし、いい意味で驚いてくれるなら育てたかいがあるものだ。


 ミーナと挨拶に来た時に後ろにいたリーアさんとレーアさんには九十二階を使ってもらって、他のエルフの人たちにはホテルのようなところを一部屋二人で使ってもらうことにした。


 それからお風呂やキッチンなどを案内した。


「じゃあ、案内した部屋なら好きに使ってくれて構わないよ。僕は華憐さんたちのとこに戻ってるから」


「はい、なにからなにまでありがとうございます! あ、果物の収穫ですよね? 手伝いますよ」


「そう? じゃあお願い」


 それからミーナはエルフたちに荷物の整理とベッドの制作の指示を出して畑に向かった。


 ベッドの材料は家の前に大量に積んである丸太を使ってもらう。



 ■■




 果物の収穫は僕がミーナたちに家の案内をしてる間に終わってたみたい。


 華憐さんたちが収穫したものをまとめてた。


「任せきりにしちゃってごめん、華憐さん収穫したのどう?」


「はい、野菜とかと一緒で種類たくさんだけど個々の量は少ない感じです、だから食用と種用に分けました」


「レン兄ちゃん、これ全部食べれるのか?」


「レンー、これトゲトゲぇー」


 食べ盛りでよだれでもたれさせそうなコロッケとパイナップルをもってくるハル。それにしても、うーん季節バラバラすぎて、なんだか気持ち悪い。


「蓮くん穀物のほうも『開花』させましょ! お米食べたいです!」


 ということで穀物をと植えた水田にきた、もちろん芽はでている相変わらず成長はやいなぁー。


「レン兄ちゃん、またのびのびダンスするのか?」


「やろぉー! のびのびダンス!」


「うーん、わかったよー、せいれーーーつ!!」


 コロッケとハルにせがまれてのびのびダンスすることにする。


 だだ、エルフさんたち見てるよ? 恥ずかしくないのかな、僕は恥ずかしい。


 と、思ったらエルフさんたちも並び始める。あら? エルフさんたちもやるの?


「ミーナはこっちで見てましょ」


「え? は、はい?」


 ミーナも並ぼうとしてたのを華憐さんが引き止めた。くそー、見世物にしようとしやがって!!


 そこからはいつも通り、踊る。


 エルフさんたちも踊る。


 そして、セリフを叫ぶ。


 夢だけど夢じゃなかった。


 盛り上がってきたら僕は『開花』能力を発動!


 僕が金髪になって、金色のオーラが広がる。


 驚くエルフ、尻もちをつくエルフ、はしゃぐコロッケとハル、そして伸びる木…………木?!


「あっれぇー、おかしいな稲が生えると思ったんだけど……」


「蓮くん? あれはなんですか?」


 華憐さんが指さすのは木の上のほう、僕は華憐さんが指さすのものをとった。さぁ、なんて説明しようか、えーと、あっ! あのセリフだ。


「華憐の元気がでるように、まじないをかけてつくったんだ。 おたべ」


 と、言ってニギリメシコシヒカリを渡してみる。


「……………」


「……辛かったろう。さぁ、お食べ。」


 華憐さんはニギリメシコシヒカリを一口、もぐもぐと食べ。


「で、なんて願ったんですか?」


 あぁ、どうやらごまかすことは無理なよう。え、あきらめるなって? こういう女子は素直に白状したほうがいいんだよ。


「えーとぉ……私はニギ〇ヤミコ〇クヌシ、これはニギリメシコシヒカリって呟いて、〇ク様がコシヒカリのおにぎり持ってるのを想像して植えました」


「はぁー……私、お茶碗にのったご飯たべたかったのに……」


「ご、ごめんね? てへぺろっ!」


「……………」



 ………デュクシッ!!



「ああぁぁー、目がぁー目がぁ!!」


 お昼はみんなでニギリメシコシヒカリをたべました。




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