185話 冬が終われば春が来る! (ピィナとチュン)
◇◇ルンside◇◇
ルンは今、ルンの人生史上最高にどうでもいい戦いに巻き込まれそうスラ。
「さぁ、今日こそニワトリとスズメ、どっちのほうが優れているのか赤白決着をつけるよ!」
「お~~! 頑張れ~~! ピィナちゃんファイトプリ!」
そう意気揚々と対面の人物にビシッと指をさして宣戦布告するのはピィナ、そして応援しているのはポムだプリ。
「いいチュンよ! チュンもピィナとは決着を付けたいと思ってたチュン!」
それに対抗するのは、こげ茶の髪に小柄でどこにでもいそうなどこか愛嬌のある親しみやすい顔立ちの女の子のチュンというスラ。
彼女は、ミーナの魔物呼び寄せの歌で呼び寄せられたオオスズメという、ピィナの巨大ニワトリ状態と同じくらいの大きさのスズメの魔物で、カレンにチュンという名前を付けられて幻獣種となり擬人化したエリュシオンの住民スラ。
それで、チュンが擬人化を解いてオオスズメになったときに、大きくて、人を乗せて空を飛べるということでピィナが自分の存在意義が脅かされると思ったのが事の始まりスラ。
つまり、キャラ被り問題スラ。
「いい覚悟だね! ちなみにルンちゃんはどっちにつくの?」
あ~、やっぱり巻き込まれたスラ。ちなみに、ルンは最初から味方するほうは決めてたスラ。
「ルンはもちろん、チュンにつくスラよ」
「「えぇ~~~?!」」
ルンがそう言うと、ピィナとポムの二人がすごい驚いた顔するスラが、逆に何でルンが二人のほうにつくと思っていたのかが理解不能スラ。
「ふふん! さすがルンはチュンのことを分かってるチュン!」
「なんでっ?! ルンちゃんはピィナと仲良しじゃないの?」
「そうだプリ! もう短い付き合いじゃないのに薄情者プリ!」
「そんなこと、自分の胸に聞いてみるがいいスラ! 二人はいつもいつも部屋を汚す常習犯スラ! ピィナは羽毛、ポムはプリン、掃除をするルンの身にもなってほしいスラ!」
こういうときは日ごろの恨みを言う絶好の機会スラね。
「しょうがないじゃん! 抜けちゃうんだもん!」
「そうプリ、そうプリ! 出てきちゃうんだからしょうがないプリ! 生理現象とおんなじプリ!」
「なら、気づいたときにゴミ箱に入れるスラ! それが常識スラよ!」
そう、この二人の部屋はいつも汚いんスラ。
それに比べて、チュンはしっかりと綺麗にしてるスラ。そして、綺麗好きというのも知ってるスラ。それで気が合ってよく二人で街の清掃活動とかもしてるスラから、ルンはチュンとは結構仲が良かったりするスラ。
まぁ、光物を見つけたら他のものに目もくれず収集する癖は玉の輿スラけど。だから、ルンは味方をするならチュンだスラ。
「まぁ、ピィナの挑発に乗ってる時点で同レベルの馬鹿だとは思ってるスラが……」
「え?! ルン、ひどいチュン! チュンはピィナみたいに三歩歩けば度忘れするような鳥頭じゃないチュン!」
「ちょっと! ピィナはもう三歩じゃ忘れないよ! 五歩になったもん!」
「あんまり変わらないチュン。やっぱり鳥頭チュンね」
「むぅ! そんなこと言ったらチュンだってスズメなんだから鳥頭だよ!」
「「ぐぬぬぬぬぬ!」」
至近距離からメンチをきってにらみ合う二人、ほんとめんどくさいスラね。
「それで、勝負の内容はどうするのプリ?」
「ポム。そんなの決まってるチュン。ピィナとチュンがかぶってるのは本当の姿が大きな鳥で空が飛べることチュン。なら、どっちが早く、長く飛べるかの優勢が付けばいいチュン。そして、人を乗せるなら乗りごごちも大事チュン、つまり……」
「プリンの大食いだね!」
「「「いや、それ空飛ぶこと関係ない(プリ!)(スラ!)(チュン!)」」」
「はぇ?」
全く、自分が今日キャラ被りの赤白つけるって言ったのにまったくキャラがかぶってない大食いで勝負しようとするとか、ほんとうにバカは困るスラ。
それから、ピィナがチョウチョを追いかけてる間に三人でピィナとチュンの勝負内容とルールを決めたスラ。今更ながらピィナの勝負なのにルンたちが勝負内容考えるとはこれいかに……スラ」
■■
「う~ん? ポムちゃん、もう一回説明して?」
「いいプリ? ピィナちゃんはまず、チュンちゃんを追いかけて捕まえるプリ。その際にポムのことを落としたり……」
今、勝負内容とルールが決まってポムがピィナにもわかるように説明してるところスラ。もう四回……今ので五回目の説明だからいい加減覚えてほしいスラ……。
「………チュンはちゃんとルール覚えてるスラか?」
あのピィナの馬鹿さを見てルンはつい、同じ鳥であるチュンもちゃんと覚えているか心配になって聞いてみるスラ。
ちなみに勝負内容はあまり複雑なやつだとピィナが覚えられないから単純に空中鬼ごっこになったスラ。ルールは長く逃げ回っていたほうが勝ちスラ。これは空を飛ぶ速さスラ。それと、ルンがチュンに、ポムがピィナに乗ってルンたちが落ちた場合も負けスラ。これは乗り心地スラ。という感じになったスラ。もしルンたちが落ちてしまってもルンたちはスライムだから打撃系のダメージは受けないから死ぬことは無いスラから安心スラ。
「ルン、チュンはちゃんとカレン様の<知識>の力を受けてるチュン。同じ鳥だからってピィナの同じように思わないでほしいチュン」
「いや、うん。ごめんスラ」
いつも思うけどなんでピィナだけあんなにバカになったんだスラ? ルンたち幻獣種はカレンの『命名』によって、名前を与えられることでカレンの<知識>を与えられて、長い年月を過ごしたことと同じになり幻獣種に進化できるスラ。だから、総じて『命名』された人は頭がいいはずスラ。
やっぱりピィナはルンたちと違って魔物じゃなくて動物だからスラ? でも、ナスとキュウリ、それにそこにいるポムだってプリンなのに頭はようなってたスラし……。
「うん! わかった! ポムちゃんを落とさないようにチュンちゃんを捕まえればいいのね!」
「そうプリ! やっとわかってくれたプリ! ルンちゃん、チュンちゃんお待たせプリ」
おっと、ルンの馬鹿な原因を考えてたら、あっちの準備も終わったみたいスラ。
「それじゃあ、十秒数えたらスタートスラ」
「わかった! ひーふーみー……」
いや、なんで昔の数字の数え方スラ!?
驚きに包まれながらも、ルンたちも空を飛ぶスラ。
「チュン、ルンはある程度アクロバティックな飛行も大丈夫スラから全力で逃げていいスラ」
「わかったチュン。しっかり捕まっててチュン」
そのままチュンは大気の流れに乗ってどんどんピィナ達と距離を話していくスラ。
「そろそろ、十秒たったス……げっ?! チュン! 右に緊急回避スラ!」
ルンが後ろを向いたら、
「きゃあああああああ! ピィナちゃん、ゆっくり! ゆっくりぃぃぃぃいいい!」
ポムが語尾にプリを忘れるくらいの速さでルンたちに迫ってたスラ。
が、この描写を説明してる間にチュンが避けてピィナたちはルンたちを通り過ぎていったスラ。
「ぴ、ピィナがガチすぎるチュン。そんなにチュンとキャラ被りが許せないチュン?」
「いや、あれは単に馬鹿正直にまっすぐに全力なだけスラ。とにかく、また突っ込まれる前に向こうのほうに逃げるスラ。ルンはピィナが突っ込んできたときに教えるスラ」
それからルンたちは、時に急ブレーキをかけて避け、ポムの悲鳴を聞き。時に急旋回をして避け、ポムの悲鳴を聞き。時にルンたちも全速力を出して避け、ポムの悲鳴が……聞こえない?! あ、ピィナの上で白目を剥いて気絶してるスラ……ご愁傷様スラ。
そんな、とにかく直線の飛行速度が凄まじいピィナとテクニックで華麗に飛行するチュンの空中鬼ごっこはなかなか勝負が決まらず、ルンたちはいつの間にかかなり遠く離れたところまで飛んできてしまったスラ。
 




