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181話 氷界の竜人 (歓迎鍋パーティー)

 



 ◇◇レンside◇◇



「レンー! 野菜切り終わったぁー!」


「わたしも! わたしも終わりましたよ!」


「おう、ありがとう。それじゃあ、この鍋に詰めていってくれ」


 僕がそう指示を出すと、ハルとお初ちゃんはまるで競い合うようにハクさまが作った土鍋に野菜を詰めていく。まぁ、この二人は出会ったときから何かと競い合ってきたみたいだけど今ではすっかり仲良しさんみたいで良いことだ。


 その後ろから僕もメインの豆腐を鍋に投入。後は鶏肉とか鶏肉とか鶏肉とか……うちの家畜は未だに鶏しかいないものだから鶏肉ばっかになるのはいたしかたない。一応、その他にも魔物から取れた肉も入れてるけど圧倒的に鶏肉が多い。


 現在、今日の夕ご飯、豆腐鍋を作っている。決して鶏鍋ではない。


 華憐たちが出て行ったあと、城のリビング用やその他要望があった人用にいくつかコタツを作った後、またぬくぬくとのんびりして、こうして夕食を作りに来た。


 今日はティエラの歓迎会ってことで豆腐鍋パーティーをやろうと思う。メインが豆腐なのはやっと豆腐ができたからだよ。そして野菜は家でとれた白菜、ニンジン、大根、ネギ、春菊、レタス、ニラなどなどの定番を。


 僕、ハル、お初ちゃんで作ってるのは、昆布ベースのダシに醤油味の鍋。だけどもちろん鍋パーティーなんだから、味の種類はこれだけじゃない。


 広いキッチンでは、僕たちのほかにオリアさんチームが味噌味、お料理エルフチームがすき焼き味、カレールチームがカレー味とかほかにも鶏ガラとか鍋パーティーにふさわしく色々な味の鍋が作られてる。


「よしっ! あとはぐつぐつ煮込むだけだしこれで終わりかな? 二人とも、手伝ってくれてありがとう」


 そう二人にお礼を言うと、二人とも嬉しそうに笑ってほかの人のお手伝いに行った。なんだか妹ができた気がして微笑ましい。




 ■■




「わぁ! 今日は鍋だ!」


 夕飯時、華憐たちもリビングにやってきて四人から六人で鍋を囲む。僕と一緒に囲むのは華憐、ミーナ、クルア、ルカ、そしてティエラだ。


 向こうではアーゼさん、ルーナさん、リーアさん、レーアさんのエルフ組。エリュ、アルカ、コロッケ、ポテト、ハル、お初ちゃん、ルン、ポム、ピィナの子供組。シロ様、カレール、シュテン、クロウ、コロネ、マリアの精霊&天使組。アラティ、セッテ、ミライア、トーアの仲良し組とかとかみんな思い思いの場所に座っている。コタツはさすがにこの人数が全員入る大きさのはできなかったから大きめのを何個も作ってそこに味の違味う味の鍋をコタツごとに置いたから食べたい味の鍋がある人は面倒だろうけどそこに取りに行ってもらおう。


 なんでこんなに人がいるにかというと、エリュシオンでご飯を食べるとき、まだ城ができる前は食堂で巨木な我が家に住んでたみんな集まって食べていたけれど、城ができてからはみんな住む場所がバラバラになったために集まることもできなくなった。


 一応、城には食堂もあってそこで自由に食べることもできるけれど、普通王様は従者たちと一緒にご飯を食べないとかなんとか、けれどそんなのつまんないからうちでは夕食はなるべくみんなで一緒にってことで、こうしてリビングという名の宴会場みたいな広さの部屋を作って身内だけでも一緒に食べることにしたのだ。


 トーヤさんにこういう部屋を作ってって注文入れた時は驚かれたけど、やっぱり身分は王様でも気分は庶民だからみんなで食べたほうがおいしいしね。


「今日はほら、猛吹雪でことさら寒かったし、ティエラの歓迎パーティーってことで盛大にしたかったからね」


「なるほどねー。ほら、ティエちゃんも座りな! 蓮くんの作る料理はおいしんだよ!」


「はい。さっきカレンさんたちからお話を聞いてとても楽しみにしてました」


 どうやらティエラとみんなは結構仲良くなったみたいだ、よきかなよきかな。そんなことを思っている間に、クルアとルカが小皿に鍋を取り寄せてくれて、ミーナがお酒やジュースやらと飲み物を運んできてくれてご飯の準備が整った。


「よし、それじゃあみんなちょっといいかな!」


 僕の声にみんなの注目が集まる。


「今日からエリュシオンに住むことになった『氷界』の二つ名の竜人、シャルティエラだ。今日の鍋は歓迎会の意味もあるから、この機会に挨拶でもしてこれから仲良くやってほしい」


 そうティエラを紹介して僕の役目は終わり。いただきますを言うのは昔から華憐の役目だからね。


「みなさ~~ん! 飲み物は持ったか~~! それじゃあ、今日も一日お疲れ様でした! &ティエちゃんとの出会いにかんぱ~~~~い!!」


「「「「「「「「「「かんぱ~~~~い!!」」」」」」」」」」


 そんな華憐の音頭で今日はいつもよりも賑やかな夕飯が始まった。


「ティエラはたぶん初めて食べるものが多いと思うけど、どれもエリュシオンでとれたものだから安心して食べてね。あ、薬味はいる? 一応、ネギ、大根おろし、ゴマ、唐辛子、レモンとか色々用意したけど。僕のおすすめはさっぱりするレモンだよ」


「えっと、それじゃあそれでお願いします」


「私は大根おろし!」


「ゴマってもらえるかしら?」


「う~~ん、こういうのは大体全部入れれば最強な気が……」


「鍋でも断然マヨネーズですよね!」


 なんだよ、僕がティエラに気をきかせてやったのにみんな横からどんどんとってきよって! ていうか、百歩譲ってルカは何が最強なのか以外は分かるけど、ミーナよ……鍋にまでマヨネーズはどうなんだい……。


「……蓮くん、鶏ばっかなんだけど、豚ないの?」


「残念だけど、うちには鶏しかいないからねぇ」


「うぅ……あんなに大きい家畜小屋作ったのに、未だ鶏だけなんて……残念」


 華憐は本当に残念そうに鍋をつっつく。僕も残念だよ、豚とか牛とかいればもっと料理のレパートリーが増えるのに。


「それじゃあ、カレン様。春が来たら豚を探しに行きましょう。そして、シャルティエラさん。お初にお目にかかる、エリュシオンの宰相、そしてミーナの父のアーゼと申します」


 と、アーゼさんが僕たちのコタツにやってきた。ティエラに挨拶しにやってきたのだろう。


「シャルティエラです。こちらこそよろしくお願いします」


「一つ聞いてもよろしいですかな?」


「はい、なんでしょう?」


「ここ最近、このあたりの気温が低かったのはシャルティエラさんの影響でしょうか?」


 ん? どゆこと? 確かに、なんか今年の冬はこの辺りは平均より寒いみたいなこと言ってた気がするけど、それがティエラの影響って?


「えっと、はい。たぶん、そうじゃないかと思います」


「やはり、竜人というのは凄まじいですな。レン様、朗報ですよ! 明日から春が来ます!」


「えーーっと、どゆこと?」


 よく分からず聞き返したら、物知りなクルアが教えてくれた。


「レン、竜人がなんで人がいない北の果てや南の島、東の火山や西の古城とかにいるか知ってるかしら? それはね、彼女たち竜人が竜状態(ドラゴンフォーム)になるとその魔力の強大さゆえに何もしなくても天候が変わったり、地形が変わったりして天変地異が起こるのよ。それで、ここ最近吹雪が起きたりしていたのは」


「はい。たぶん私が、竜脈をたどってここに向かっていたからだと思います。ご迷惑をおかけして申し訳ありません。で、でも……今日からは人の姿でレンさんと暮らしていくので、もう大丈夫だと思います」


 途中からティエラが引き継いで説明してくれたけど、暮らしてくって同じ城でってことだよね? なんかそんなにもじもじと言われると他意がありそうな気がするんだけど……もしかして、すでに何かしら華憐に影響を受けているんだろうか? これは、また残念な人間にならないように、この儚い少女を守らなくては……頼むから、ティエラはそのままでいてくれ!


「ていうか、それじゃあ明日からもう雪も降らなくなって、徐々に暖かくなっていくってこと?」


「ええ、そういうことよ。よかったわね、ここ最近ずっと寒いっていっていたし」


「本当に申し訳ありません」


「いや、そんな謝らなくて大丈夫だよ! 不可抗力だったんだし。けど、そっかぁ~、明日から暖かく……」


 そう思うと、自然と顔が緩んじゃう自分がいる。だって本当にここ最近の寒さや吹雪には辟易してたから……ジャックオーフロストとか何であんなに楽しそうにできるのかわけわかめだったから。


 それから、アーゼさんが去って行ったあと、他に自己紹介がてらティエラに挨拶に来る人がいたり、ルカに連れられて他の机の鍋を食べに行ったり、ミーナがティエラのために歌ったり、華憐がお酒の匂いに充てられてほろ酔い気味になったりして、最初は少し緊張気味だったティエラも夕ご飯が終わるころには楽しそうにしていたからとてもいい鍋パーティーになったと思う。


 僕も明日から春がやって来ると知らされていつになく浮かれて楽しめた。その後、お風呂に入って明日からやって来る春に思いをはせながら就寝した。




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