178話 氷界の竜人 (やっぱりコタツは最高)
◇◇レンside◇◇
僕はかなりの高度から落下してくる人を受け止めるために全力で飛行する。
だんだんと近づいていって、華憐が言っていたように女の子であることが分かった。
意識を失っているのか落下の制御はできていなくて腕や足や首がバッサバッサのきりもみ状態でこのまま落下したら即死は確実だろう。
ていうか、なんでこんな上空から女の子が落ちてくるんだ? しかも、さっきまでレオと別の竜が戦ってた中心地のような所に……。
「あ、もしかして、もっと上の方で飛空挺みたいのが飛んでてそこから落ちて来たとか?」
レオがめちゃくちゃに暴れていたのに巻き込まれたのかもしれない、なんだか申し訳ないことしたな。
そんなことを思いながらあまちゃんのとこで練習したように超高速で飛んで、落下少女の真下に来た。
「『ライジング・ストーム』!」
上空に向けて竜巻を放つ魔法を使って女の子の落下速度を緩める。
「……っ?! おおう……なんちゅう美少女や……」
落下速度が落ちて緩やかになった女の子を受け止めるてその子を見ると思わず見惚れてしまった。
純白のどこか神秘的な髪に、雪の様にきれいな白い肌、目を閉じてる姿は儚く可憐でまるで雪の妖精……いや雪の妖精はうちにいたわ……えっと、精霊! そう精霊みたいだ! まあ、つまりなんていうかミーナやクルア、ルカたち異世界の美少女に見慣れたと思っていた僕でもつい息を飲むほどの美少女っていうこと。
とりあえず、この子がどこから来たのかはわからないけどこのまま放置するわけにもいくまいし華憐たちの元に戻るとしよう。
僕は女の子を抱えて城の前まで飛んで戻った。
城の前まで戻ってきたんだけど華憐たちは見当たらない、たぶん街の様子でも見に行ったのだろう。
着地をしたその時、抱えていた女の子が少し身じろぎしてうっすらと目を開けた。着地した時の振動で起こしてしまったのだろう。
「おーい、大丈夫か? うちのレオがすまないな」
「ばり……タイプばい……」
「え?」
心配して声をかけてみたら、なんか場違いな言葉が聞こえたような気がして、ついキョトンとしてしまう。
けど、女の子はすぐにまた目を閉じて眠ってしまったからきっとまだ混乱してるんだろう。
と、その時、上空からバッサバッサとレオが降りてきて「グオオオオ!」と勝利の雄たけびか一鳴きしていつもの人状態に戻った。なんだか少し嬉しそうにしてこっちにやってくる。
「レン〜! 見たか! わたしも強くなったんだぞっ!」
そう威張ったようなレオに、スタタタタ! っとやって来る人影が、
「お姉ちゃん! そんなことよりこの惨状どうするの! 暴れすぎだよっ!」
と、いつものように姉妹のやり取りがはじまった。どんやらみんなも戻ってきたみたいだ。
「蓮くん、その女の子は?」
「…………ん、レンの腕の中でぐっすり?」
「むむっ?! 新たなダークホースの気配がします!」
「うむ、この子は我とシンパシーを感じるぞ! これは運命に導かれし出会いなのかもしれない!」
「そんなわけないでしょう。竜人ね、めずらしいわ」
「驚愕。なんでこんな所に?」
みんなこの女の子がきになるのか顔をのぞき込んだりしてる、クルアはさすがというべきかこの子のことがわかるみたいだ。でもまあ今はとりあえず、
「あーもー! お前らワイワイするな寄るな! とにかく戻るぞ、寒いっ!」
猛吹雪が止んだとはいえその余波で寒さはそんなに変わらない。それになんだか女の子がすごく冷たいし、早くコタツに入ってぬくぬくしたい僕は群がってくるみんなを引きずって自分の部屋に戻ることにした。
■■
「ぬはぁ~……やっぱりコタツは最高……」
うん、やっぱり冬に外に出るべきではないと思う! すっかり冷えてしまった体にコタツがすごく気持ちいい。僕はもう今日はあとご飯とお風呂と寝るとき以外はコタツから出ないことに決めた。
「蓮くん、それはとても共感するけど今の声はすごく中年臭い」
華憐のそんな言葉が聞こえてきたけど言っとけ言っとけ、今の僕はそんなことよりぬくぬくに飢えてるんだ。
「それよりもどうしてここに竜人が来たのかしら? しかもあの竜人『氷界』の二つ名をもつ実力者よ。まあ、そんなのを倒しちゃうレオもレオだけれど」
クルアの言葉を僕と同じように「ぬはぁ~」って声をだしてコタツに入ろうとしていたレオに聞こえたようで、
「はっはっは! そうだろそうだろ! さっきも言った通り、レンに負けてからあたしも修行して強くなったんだ!」
と、威張り始める。ただまあ、そんな調子に乗るようなことを言っていると……
「お姉ちゃん? お姉ちゃんが突っ走っていかなかったら家が壊れたりしないでしない竜人さんってわかったら話し合いで済んだかもしれないんだよ? そこのところちゃんとわかってる?」
「し、仕方ないだろう……あたしの縄張りを踏み荒らしに来たと思ったんだから」
「エリュシオンはお姉ちゃんの縄張りじゃなくてレン様たちの縄張りでしょう。それにもう少し慎重に行動しなさいってこと! 本当にどうしようもない姉ですいません皆さん」
「どうしようもないってなんだ、どうしようもないって! あたしは偉大な竜だぞ!」
「お姉ちゃんはどうしようもないでしょう! 本当に身内の恥なんだから!」
とまあ、またいつものようにじゃれあいを始めた姉妹は置いといてあの女の子のことについて考えよう。
女の子はとりあえずまだ目を覚ましそうになかったから僕のベットで寝かせてある。
それでここまでの情報だとあの女の子は有名な竜人でレオと戦っていたのはあの女の子ってことだよね。クルアも言ってたようになんでこんなとこに来たのだろうか?
「またラテスト王国の何かの策謀とかじゃないですか?」
同じことを考えていたのかミーナがそう言った。確かにまえにレオを使って僕たちを攻めさせて、その混乱隙にミーナを誘拐をしようとしてきたな。
「でも、わたしが知る限りではラテスト王国は竜人と交流は無かったような……」
う~ん、人間族に詳しいルカがそう言うならラテスト王国の策謀ではなさそうだ。
「あの子がエリュシオンに来た理由はあの子が起きたら聞こうよ。もしかしたら通過するだけのつもりだったのかもしれないし。それより被害が出たところとかはどうしよう……」
華憐の言う通りそれもそうか。実は今回の竜同士の戦いでレアが流れ玉とかから街を守ってくれていたんだけれどさすがに一人ではいくらレオの妹のレアでも限界があったみたいで家が数件吹き飛ぶ被害が出ていたりする。まだ建設途中の家でだれも住んではいなかったから死人は出ていなかったけれど、もし誰か住んでいたらゾッとする。だからまあレアはあんなに小言が多いわけで。
「いっそあの辺は建て直さずに公園みたいのにするのはどう? 竜激突記念公園みたいな」
大きさもそこそこ大きくていい感じだし市街の中心だから作ればみんなの憩いの場になりそうだ。僕が今パッと浮かぶのはそのくらいなんだけれど……。
「うん! いいんじゃないかな? 竜激突記念公園。なんか強そうな公園だね」
「それじゃああとでお父様とトーヤにはそのように伝えておきますね!」
「……ん、アルカ。どんな遊具を作るか考えよう」
「賛成。アルカたちが考えればきっと面白い公園ができる」
特に反対意見は無いようで僕の案が通ってしまった。まあ、エリュとアルカが楽しそうにしているし良しとしよう。僕的にはバスケコートとかサッカーコートとかが欲しいからあとで二人に提案しておこう。
「それじゃあ話は仕切り直しね。レンは『氷界』をどうするつもりなのかしら?」
「う~ん、どうするもこうするも別にエリュシオンにいてもらってもいいんじゃない? 僕はこの国に住んでくれる人は来るもの拒まずだよ」
まあでも、もし害意のあるような人だったら困るから少しは警戒しておいたほうがいいかな?
「あ、あの……すみません、ここはどこですか……?」
その時、寝室の扉が開いてそんな声が聞こえてきた。どうやら女の子が起きてきたみたいだ。
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このすばが次刊で終わっちゃうのが悲しい……




