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176話 氷界の竜人 (ババ抜きと大富豪)

 


 ◇◇レンside◇◇



「さぁさぁ、華憐よ。ええんか? 本当にそれでええんかぁ?」


「むむむむむ……これでいいもんっ! っあ?!」


「バーカバーカ! そっちがジョーカーなんだな」


「くっ……でも、まだ! さぁ、蓮くんどっちを引「こっちだ!」……あっ!!」


「はい、あ〜がり! 僕の勝ちー!」


「また、負けた……」


 そうして、華憐はコタツにぐったりとする。


 それもまぁ、仕方がない。何故ならばもうかれこれ華憐は十回以上負けているのだから。


「カレンは表情に出すぎなのよ」


「そうそう、ポーカーフェイスが大事!」


「カレン様は素直すぎるんです」


 と、クルア、ルカ、ミーナの三人。


「なんで三人は今日初めて教えたのにそんなに強いのよさ……」


 まぁ、しょうがないでしょう。この三人はクルアは吸血鬼貴族、ルカは天使族でも上位の位の『熾天使(セラフィス)』、ミーナは元エルフの王国の王女様。三人ともいわゆる政治の駆け引き見たいのでそこら辺は鍛えられているのかもしれない。


 対して僕と華憐はそんなことは微塵も感じられない普通の一般人の生活を送ってたんだから、何かあれば表情に出てしまうのは不可抗力だ。


 ただ、それにしては華憐は些か表情に出すぎな気がするけど。僕も自分では無表情のつもりだけどあの三人には表情に出ているのが分かるみたいでこうやって華憐とタイマンになるわけだけど、さすがに華憐よりは出ていないと思いたい。


 そう、僕達は今、みんなでトランプのババ抜きをやってる。


 ちなみに、エリュ、アルカ、レオ、レアも最初はやってたけど、コタツの温もりで気持ちよくなったのか眠気が襲いはじめたようで今はエリュとアルカとレオは寝ている。レアだけは、そんな三人が風邪ひかないようにしたり僕達にお茶を出してくれたりとお世話してくれてる。ありがたい。


「うがー! ほか! 他のゲームやろう! 大富豪とか! それなら、負けないもん!」


 と、さすがに五人で初めてから一度も勝てなくなったのに耐えられなくなったのか華憐がそんなことを言い始めた。


 最初に寝てる人も含めて全員でやってた時は、レオも中々に表情に出る性格みたいで二人していい勝負してたんだけどね。


「まぁ、いいけれど。その大富豪? って、どうやるのかしら?」


「えっと、大富豪っていうのは……」


 華憐がルールを知らない三人に大富豪を教えていく。ちなみに、さっきのババ抜きもルール説明したんだけど、その時は華憐の『命名』で生まれたエリュとアルカは華憐の知識を持ってるから、四人でデモンストレーションをして覚えてもらった。


 今は二人は気持ちよさそうに寝てるから起こすのは忍びない、ってことでやりながら覚えてもらうことになった。


 そうして、何回かお試しみたいな感じでローカルルールとか特に無しでやって、慣れてきたらそこら辺も加えてやり始めてからしばらくたった。


「おらおら、愚民はカードを差し出すんだな!」


 僕は大富豪に相応しく傲慢な態度をとって、華憐から差し出されるカード二枚を奪い取る。


「あっ……いやっ、私の……私のスペードのカード、二枚が……」


 華憐は今にも散ってしまいそうな悲壮な表情で僕に奪われたカード二枚を名残惜しそうに見つめる。


「ちっ! 二のカードも持ってないのかよ、まったく使えないぜ……おらっ! 貴様にはこのカードがお似合いだよっ!」


 そして、僕はまたまた傲慢な態度で適当にいらないカードを華憐に投げつける。


「きゃあっ! い、今に見てなさいよ……絶対に返り咲いてやるんだから!」


 華憐は瞳に敵意を向けるように上目遣いで僕を睨む。


 そんな感じに僕は大富豪、華憐は大貧民となって数回ゲームが続いてた。


「ねぇ、私たちは何の茶番を見せられているのかしら」


「はい、これが私の中で今一番強いカードをです。いつもの事じゃないですかクルアさん」


「おおっ! 今回はついにレンを越すことが出来るかもしれない! 気にしたら負けだよ平民!」


「あなたも大概よね……」


 ちなみに、ルカが富豪、クルアが平民、ミーナが貧民だ。


 さて、みんなトレードも終わったことだし早速始めるとしよう。


「それじゃあ、まずはハートの九」


 今回僕の手札は良くも悪くもって感じ。大富豪での僕の基本スタイルは最初は自分の手札の一番要らない三の数字以外の一番弱いカードを出す。


「じゃあ、私はパスかな」


「スペードのクイーンよ」


「ハートのキングだ!」


「えっと、私もパスでお願いします」


「僕はハートの二。ジョーカー出す?」


 まぁ、出さないよね。ってことで、また僕からスタートっと、とりあえずジャックが邪魔だからイレブンバックすることにしよう。


「そいじゃあ、ハートのジャック……」


 それを出した時、僕はチラッと華憐がニヤリと笑ったのに気がついた。なんだか嫌な予感がする……。


「くくくっ、はっはっはっ! あーーっはっはっは!」


 そして、案の定華憐が笑いの三段階をして、高笑いを始めた。


「それを待ってたんだよ蓮くん! もう君の時代は終わり! 蓮くんも地面に這いつくばって少しでも強いカードを欲するようになる時代が来たよ!」


「ふんっ! 出来るもんならやってみろ、愚民が!」


「言われなくてもその大富豪の座から引きずり落としてくれる! 秘技! 八切っ! かーらーの、革命っ!」


 あっ、それはまずいかも……カードの場には六の全種のカードが、あれ僕が華憐に渡したカードだ……積んだ。


 それから、革命返しなどのどんでん返しなんて起こるもなく、僕は華憐に大富豪の座を奪われたのだった。


 ていうか、華憐の手札が弱すぎた。四とか五とかばっかなんだもん、革命起きたら無敵手札。


「ふふん! 頂点から底辺に落ちる気分はどうかしら? さぁ、早くカードをシャッフルなさいな!」


 そして、華憐の傲慢タイムが始まった。


 僕達の中でカードをシャッフルするのはビリの人がやることになってるから大富豪だと大貧民になった僕がやることになってる。


 僕はカードを集めてシャッフルをして配り始めた。


「そうそう、やはり大貧民はシャッフルする姿がお似合いですこと。おーーっほっほっほ!」


 なんだろう……僕も華憐と同じようなことやってたんだけど、華憐がやると演技力があるからか僕がやるよりも腹が立つ気がするのは気の所為だろうか……。


「さぁ、早くこの私に最高のカードをご献上なさいな!」


 うわっ、自分に敬語を使うという昔の日本の貴族みたいなら事を言い始めた……そして、僕が華憐に渡さなきゃいけないのは大富豪最強のジョーカーとハートの二。


「くっ……無念」


「あらあら、まぁまぁ! それじゃあ、私の方からはこれを差し出すわ、せいぜい感謝する事ね!」


 っと言って、華憐が渡してきたのは四と五のカード、チョーいらね。


 しかし、しかしだ! この華憐から送られてきたカード以外は意外といいのが揃ってたりする。だから、上手くやれば今すぐにでもまた大富豪に戻ることも出来るぞ!


「悪の大富豪! いい気になっていられるのも今のうちだ! せいぜい首を洗って待っていろ!」


 ピシィっ! っと、指を向けて、僕は宣言した。


「はぁ……。本当にいつまでこの茶番は続くのかしら? 合わせてると疲れるわ」


「いいじゃないですか、楽しいですし」


「そうだよ、クルア。この二人がおかしいのはもうずっとわかってたことじゃん!」


 そうした、三人の呆れたような声に反応したのか、その時今まで眠ってたレオが突然ガバッと起き上がった。それと、レアも窓の方を見て少し険しい顔をしてる。


「お姉ちゃん、これって……」


「あぁ、どうやらあたしの縄張りに無言で踏み入れるような奴がいるようだな!」


「ちょっ、お姉ちゃん?!」


 レオはそう言うと、今まで眠ってたのが嘘のようにコタツから飛び出して、寒さも気にならないのか一気に廊下に飛び出していった。レアもそれに続いて外に出てく。


「レオさんとレアさん、どうしたんだろ?」


「さぁ……?」


 置いてかれた僕や華憐、他の三人もみんな困惑した表情をしてる。


 けれど、すぐにレオたちが出ていった理由が僕にもわかった。


「え……こ、これって……」


 感じたことある感覚だ。何か超越的な存在が迫ってきてるような感覚。そう、まるでレオがここに攻めてきた時のような……。


「………レン!」


 エリュもその存在に気がついたのかいつの間にか起きて僕の手を握ってきた。


「あぁ、僕達もすぐに行こう!」


 そうして、エリュを連れて僕もレオたちの後を追って部屋に飛び出した。




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