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173話 氷界の竜人 (やっと見つけた!)

 


 ◇◇三人称視点◇◇



「もうすぐやて思うっちゃけどな〜」


 エリュシオンから北の方角の上空にその竜はエリュシオンに向かって接近していた。


 美しい白銀の鱗を煌めかせて飛翔するする姿は雄々しいけれど、その姿は残念ながら豪雪に呑まれて地上からは愚か上空からも見ることが出来ない。


 それは季節的なものもあってか、それとも彼女の潜在能力が凄まじいためか……とにかくとても晴れやかな快晴でも、彼女がその上空を飛べばたちまちその地域は視界が遮られるほどの猛吹雪が起こる。


 彼女の名前はシャルティエラ。この世界の北の果てに住む竜人族の一人娘。


 竜人族という種族は死の危険や寿命の心配が少ない生物故に繁殖力が低い為に人口は少ない、そんな良くも悪くも珍しい種族であるため滅多のことでは人間のいるような所にはやってくることは無い。


 住んでいる場所も家族単位の人数で到底人間がやってこれるような場所ではないためにお目にかかれることも人間の一生ではほとんどないだろう。


 そんな竜人であるシャルティエラが何故人間の国が近いこんな所を飛んでいるのかというと、


「うーん、だいたいこらへんから神気ば感じたっちゃけどな〜」


 そう、今から数ヶ月前。まだエリュシオンにエリュシオンって名前がついてない頃、レオがレン達に襲撃をしてきた際に、レンは瀕死になりながらもアマテラス神の力を借りて特殊な神気解放をし撃退することができた。


 その時にレンから漏れ出た膨大な量の神気をシャルティエラの祖父でエンシャントドラゴンのジークフリートが感知。そして、僅かながらもシャルティエラもそれが感じることが出来た。


 シャルティエラはその感じた神気にどこか惹かれるものがあり、すごく興味を持つ。


 そして、その神気を発した者に直接会ってみたいと思ったシャルティエラはジークフリートに頼み神気が感じられた場所に向かう許可をとることが出来た。


 ジークフリート自信、この異常な神気の発生原因はなにかエンシャントドラゴンとしては確認せねばならぬと思っていたところに可愛い孫娘であるシャルティエラが神気が感じられたと言ってきたものだから、成長を嬉しく感じ息子と義娘の許可も取らずに送り出してしまった。後から咎められたことは言うまでもない。


 まぁ、そんな経緯を得て、感覚的なものを頼りにやってきたシャルティエラはまだ未熟なため確実な座標が分からず少々遠回りしたり方向音痴なのか別の方向に向かったりしながらもついにエリュシオンにたどり着こうとしていた。


「あれ? こん気配は……」


 ふと、シャルティエラは強大な気配、しかし神気ではなくて、自分と同じ竜種の気配が二つある事に気がついた。


 そして突如、シャルティエラ目掛けて巨大な火球が飛んできた。


「わっ! びっくりした!」


 と、声ではそう言っているも実際はそこまで危なげなく避けるシャルティエラ。


 そして先程感じた竜種の一体が己に向かって飛んできていることも気が付いた。


 どうやら、ここら一帯はこの二体の竜の縄張りであることを同じ竜であるからか理解したもよう。


 しかし同時に自分が探していた神気の持ち主のような気配も感じている。


「やった! やっと見つけた!」


 数ヶ月前に感じた時とは出力も弱く少し違うような気もするが本質的には似ているし同じような暖かい感じもする。


 さすがに冬が開けても見つからなければ一度祖父の元へ戻ろうとも思っていたためにその見つけた時の嬉しさと言ったら思わず咆哮をしてしまうほど。


 早速その方の元へ向かおう! そうシャルティエラは思ったものの、自分に対面するように黒緋の鱗を持つ竜が立ち塞がる。


「むぅ! ちょっと邪魔ばい! どいて!」


 シャルティエラは少しイラついたようにそういうも帰ってきたのは底冷えするような咆哮だった。


 なるほどっと、シャルティエラは理解する。自分の対面にいる竜は竜人である自分とは違い魔物の竜であり幻獣種であることに。


 竜人と幻獣種の竜、同じ竜であり見た目も似通っているがその本質は違う。


 竜人は竜になれる人間、幻獣種の竜は人になれる竜。違いとしては人型状態の時に竜の特長が出るか出ないか。竜の特長がでるのは幻獣種の竜だ。


 戦闘能力で言えば幻獣種の生きた年数によるけれど、人型なら竜人が竜型なら幻獣種が多少有利であったりする。


 シャルティエラは相対するこの幻獣種の竜はきっと自分よりも強いだろうと、そう思う。相性は自分は氷で相手はさっきの攻撃から考えるに炎、まったく真逆の性質なため良いも悪いもないだろう。


 つまり、今この幻獣種と戦えばいくら竜人のシャルティエラでも無傷ではすまない。


 しかし、もはやここまで来てむざむざ逃げかけるなどシャルティエラは竜人の誇りにかけて出来るはずもない。


 そして、いかに相手が強いとはいえ、今この冬は自分を後押ししてくれるし、奥の手を使えば何とかなるかもしれない。


 ということは引く必要もないわけだ!


 シャルティエラはブレスを吐くために口内に極寒の冷気を蓄える。


「凍ってしまえ!」


 触れたものはたちまち氷像に変える冷たい青のブレスが幻獣種に向けて放たれた。


 こうして、氷界の竜と空の王者の竜同士の規格外の戦いが幕を開けるのだった。




 ■■




 シャルティエラとレオの戦闘は実に苛烈を極めるものになった。


 巨大な火球と氷のビームが入り交じり、時に尻尾でなぎ払い、自慢の爪を持って引き裂いたりして両者とも少なくない怪我を負っている。正直この辺一帯がもしかしたら自分たちのせいで悲惨なことになっているかもしれない。


 シャルティエラは自分がもうすぐ限界が近づいてることに気がついていた。


「やっぱり、うちより強か……」


 これがもし人型での戦闘ならばありとあらゆる氷魔法が使えた為にもう少しこちらに部があったかもしれない。


 しかし、こればかりは仕方ない。タフさでは竜の姿の方が圧倒的に上なのだ。それに、相手も竜であるならばそれに合わせる必要があるだろう。


 黒緋の竜は何度目かの高高度飛行をしている。あれは突進だ。それも炎を身にまとって回転しながらの超攻撃。


 相手はこれで勝負を決めるつもりだろう。なら、自分も次の一撃に全ての力を注ぎ込むべきだとシャルティエラはそう思った。


 変化は直ぐに起きた。シャルティエラを中心に集まるように吹雪が一際強くなっていく。それはシャルティエラの残り全ての力を使った燃えるように凍らせる凍てつくブレス。


 そして、炎と氷が大激突する。


 空に浮かんでた曇天は爆ぜ、陽の光が降り注ぐ。暴威を奮っていた吹雪もいつの間にか止んでいた。


 瞬間、シャルティエラは自分が敗北したことに気がつく。既に全力を尽くし、竜形態を維持することも出来なくなっていた。


 意識が朦朧として飛んでいるのか落ちているのかも分からない。


 けれど、自分がなにか優しい気配に包まれている感覚だけは感じていた。


 うっすらと目を開けると、黒髪の男性の顔が目の前にある。


「………っ!?」


 シャルティエラはその時、自分が探していた人はこの人だと理解する。そして、何故か心臓がドキドキと跳ねる。


 なんだろう、この気持ちは。このドキドキする気持ちは。相手に聞こえてないだろうか? そんな疑問がシャルティエラの頭を過ぎっていく。


「おーい、大丈夫か? うちのレオがすまないな」


「ばり……タイプばい……」


「え?」


 シャルティエラはそれだけ言うと力尽きたように意識が遠くなる。


「レン〜! 見たか! わたしも強くなったんだぞっ!」


「お姉ちゃん! そんなことよりこの惨状どうするの! 暴れすぎだよっ!」


「蓮くん、その女の子は?」


「…………ん、レンの腕の中でぐっすり?」


「むむっ?! 新たなダークホースの気配がします!」


「うむ、この子は我とシンパシーを感じるぞ! これは運命に導かれし出会いなのかもしれない!」


「そんなわけないでしょう。竜人ね、めずらしいわ」


「驚愕。なんでこんな所に?」


「あーもー! お前らワイワイするな寄るな! とにかく戻るぞ、寒いっ!」


 最後に賑やかばい〜って思いながらシャルティエラは眠りについた。




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