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167話 レンとネク (ヒートテックの相談)

 


 ◇◇ネクside◇◇



 はぁ……はぁ……びっくりしました……。


 扉がノックされたのもビックリしましたが、まさか入ってきた人がレン様だったなんてさらに驚きです。レン様もお鶴さんと話に来たんでしょうか?


「えーっと、ネクさんはどうしてここに? あ、ごめん」


 は、話しかけてくるなんて……私がビクってしたからでしょうか? 謝られてしまいました。


「あ、いえいえ! 謝らないでください! え、えっとですね、私はお鶴さんと裁縫談義を……すみません」


「へ、へぇー、そうなんだ」


「は、はい……」


「「………」」


 う、うぅ……気まずいですね。私は元々おしゃべり上手な訳ではありませんし……。それに、レン様とは特に、こう拗れているような気がします。やっぱり、初対面の時に私が驚かせたからでしょうか……? 私の座ってるところから一番離れた場所に座っているのだって、きっと私のことを避けているからでしょうし。


 別に私はレン様のことを嫌いってわけじゃないんです。どちらかというと、仲良くしたいんですけど、やっぱり第一印象ですかね? 私が蜘蛛だったから……。


 ここはお暇をした方がいいでしょうか? きっとレン様もお鶴さんにご予定があって来たんだと思いますし、私が邪魔するのは……。


 そう思って、私が出直すことにしようと腰をあげようとした時、扉が開いてお鶴さんが戻ってきました。


「お待たせしましたでありんす。……おや? お二人共どうかしたでありんすか?」


「あ、お鶴さん! やっと来た、よかった〜。お客さんが来てるならいるなら言ってくださいよ、そしたら出直しましたよ?」


 レン様がお鶴さんにそう言います。


 そうですよね……私と同じ空間にいるのも嫌そうですもんね……。


「ても、レン様は作りたい洋服の相談に来たでありんしょ? なら、ネクさんがいても大丈夫でありんす。ネクさんもわたしと同じくらい裁縫得意でありんすから」


「そ、そんな! 確かに得意ではありますけど、お鶴さん程じゃないです……はい」


「そう、謙遜するもんじゃないでありんすよ。それで、レン様はどんな洋服をご所望でありんすか?」


 うぅ、本当にお鶴さんのほうがうまいんですが……。レン様がお鶴さんにどんな服が欲しいのかを伝えます。


「えーっとですね。寒くて寒くて仕方なくて重ね着してるんですけど、それがなんかすごく評判が悪いんで、一枚でも暖かい服が欲しいんですよ。優しい手触りで、断熱効果が高くて……えーっと、ヒートテックってどう説明すればいいんだろう……」


「それは、特殊な糸を使ってるでありんすか?」


「んー、どうなんだろう……すみません。ちょっとわかんないです。たぶん、華憐ならもっと上手い説明ができたと思うんですけど」


「そうでありんすか。それじゃあ、カレン様に聞いて、できそうだったら作ってみるでありんす」


「ありがとうございます! お手数をかけてすみません」


「いえいえ、これが私の仕事でありんすから」


「それじゃあ、よろしくお願いしますね。僕はこれで失礼します」


 レン様はそう言うと早足で部屋を出ていきました。やっぱり、私と一緒にいるのが嫌だったんでしょうか?


「ふぅ……」


 まぁ、でも張り詰めていた空気が弛緩して人心地着いた感じがします。


「それじゃあ、私達も時分の仕事をしにカレン様のところに行くでありんす」


 そう言ってお鶴さんは席を立ちました。それじゃあ、私もお暇することにしましょう。


 そう思って、帰るための準備をしてると、


「何してるでありんすか? ネクさんも行くでありんすよ」


「え……? でも、お鶴さんが頼まれたお仕事なんじゃないんですか?」


「まぁ、そうでありんすけど。カレン様に聞いてみないと分からないけど私はそんなに特殊な糸は出せないでありんす。けど、ネクさんの糸は魔力糸でありんしょ? たぶん、ネクさんのほうができるでありんすよ」


 確かに、私の使う糸はさっきレン様が言ったようなことも出来る特殊な糸ですけど……。


「でもでも、レン様は私のことが苦手なはず……私が作ったって分かったら、たぶん着てくれないですよ……」


「そんなことないと思うでありんすが……。それに、ネクさんはレン様と仲直りというか仲良くしたいのでありんしょ?」


「ま、まぁ……仲良くはしたいですけど……」


「なら、ネクさんがヒートテック? を作って、レン様にプレゼントして仲良くなるきっかけを作るでありんす」


「は、はぁ……」


「とりあえず、カレン様のところに行くでありんすよ」


 そう言うお鶴さんに連れられて私はカレン様に行くことにしました。あんまりカレン様にこの話をするのは気が進まないです……。


 確かに、レン様とこのまま気まずいままなのは嫌ですし、なかよくなりまいのですが……けど、逆に嫌われたりしないでしょうか……? うぅ、自信が無くなってきました……。




 ■■




 場所は変わってカレン様のお部屋。


 私とお鶴さんは城にやってきて、ソファーでカレン様と向かい合ってます。


 そこで、レン様が仰ってたヒートテックとやらの説明を受けています。


「ふむふむ、ヒートテックね。えっとね、確かヒートテック糸は表面積が大きくて中が空洞の体から発散される水蒸気を吸収してその運動エネルギーを熱エネルギーに変える『吸湿発熱』を活発に起こす特殊な糸が使われてるんだよ」


「『吸湿発熱』? それは、魔法でありんすか?」


「魔法っていうか科学だけど。まぁ、科学は魔法って言われるようなものだから魔法でも代用できるんじゃないかな?」


「ふむ……ネクさん、できそうでありんすか?」


 う、うーーん……カレン様の言う『吸湿発熱』が魔法ならば私の糸で出来るようになる……かな? それと、空洞の糸っていうのも私の糸は魔力糸で魔力が伝う細い穴みたいなものもあるし大丈夫……と、思う。


「え、えーっと……たぶん、大丈夫だと思います」


 私がそう自信なさげに答えるとカレン様が不思議な顔をしました。


「あれ? なんでネクさん? お鶴さんが作るんじゃないの?」


「えぇ、今回は私じゃなくてネクさんが作ることになるでありんす。今カレン様の話を聞いて、私の糸じゃ作れないでありんすから。私の糸は柔らかくしたり硬くしたり、手触りを良くすることは出来るでありんすが、カレン様が言ったような特殊な糸は作れないでありんす」


「へぇー、そうだったんだ。ネクさんなら作れるの?」


「は、はい……多分、出来ると思います」


「それだけじゃないでありんす。ネクさんはレン様と仲良くしたいのでありんす、だからそのきっかけにっと」


「あぁ、なるほどね。蓮くん、ネクさんのこと避けてる節あるもんね……。って、それ私のせいか?! ご、ごめんね、ネクさん」


 あぁ……やっぱり。私とレン様が気まずい関係なのをカレン様が責任を感じてるのは気がついてました。だから、相談するのを躊躇ったのですが……。まぁ、あの作戦を立てたのはカレン様なのでしょうがない気がしなくもないですが。


 けれど、別に責任を感じて欲しいわけじゃないし、私がレン様の嫌なことをしてしまったわけで……。


「か、カレン様! 気にしないでください! 私は大丈夫ですから!」


「本当にまさか蓮くんが気絶しちゃうほど蜘蛛が苦手だなんて思ってなかったんだよ……。よしっ! それ、私も手伝うよ! ネクさんと蓮くん仲良くなろう作戦!」


 おぉー! っと、一人盛り上がってるカレン様。ちょっと不安に感じてきました。意外とお鶴さんも乗り気なようですし……。


 ていうか、まず私がそのヒートテックとやらを作ることが出来るでしょうか? ちょっと不安ですが、レン様このまま気まずいのも嫌ですし、自信が無いなりに頑張ってみることにします。




今日もアクセスありがとうございます!


4月からは2日に1回くらいの頻度で更新して行こうと思います。


これからもよろしくお願いします。

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