165話 トンネルほりほり
◇◇レンside◇◇
僕は今、巨木な我が家から出て東方面に伸びている街道を歩いてる。
僕が目を覚ましてから数日がたった。
その間に何をやっていたのかというと、寒さに震えて、城の生活に慣れてきて、新しい住民たちとなかよくなって、寒さに震えて、アーゼさんと話し合いして、大衆浴場とか警察庁の建物とか特殊建造物を作って、寒さに震えてた。
うん、とにかく寒い。
僕は特に特に特に、寒さには弱いからこのままだと冬眠するかもしれないよ。
ほら、ザリュさんもよく眠たそうにしてるし。爬虫類だからかな?
あ、そうそう。ザリュさんよりも実はレオのほうが寒がりだったんだよね。僕と同じくらい。最近レアによく叱られてる姿を見る。
「なぁー、エリュ? 寒いのはとってもとってもよく分かるけど、その格好はどうなの?」
「……………寒い」
「あー、うん。その気持ちはよくわかる」
隣を歩くエリュは前に使ってた布団を頭から被って顔だけ出してる状態。
エリュは僕の神気を流して生まれた剣精霊だからか、すごく僕の影響を受けてて僕と同じくらい寒がりさん。
一応僕の格好も華憐には「そんな格好してて暑くないの?」って、言われるくらい厚着をしてるけど、さすがにお布団かぶって歩こうとは思わなかったや。
「うぉぉぉぉー! 二人がかりなんてずるいぞー!」
「やぁ! えいっ!」
「たぁ! それーっ!」
僕達の目の前をコロッケとジャックオーフロストの二人が雪玉を投げつけて駆けていく。
いやー、元気だなー。若いっていいなー。
しばらく歩いていくとサイクプロスたちやミノタウロス、妖精族、その他力自慢の人達が沢山仕事してるところが見えてきた。
こっち方面は隣国の人間の国のブリリアント王国方面で、そこに行けるように整地して石畳を敷いて街道整備をやってくれている人達。
正直、これも僕やクルアとかルカが魔法でパパっとやっても良かったんだけど、アーゼさんと相談して自分たちでやらせないと、僕達におんぶにだっこで作っても実感がわかなくてよくないみたいなことになって、みんなに作ってもらうことになった。
「これは、レン様! 順調に進んでるぜ!」
「おう! レン様! 今日も寒いな!」
「全くだぜ! レン様も風邪ひかねーようにな!」
と、僕達が近づくと気さくに声をかけてくれる。ここ数日間で結構話しかけたりしたからみんな仲良くしてくれて嬉しい限りだ。
「あはは〜、大丈夫だよ。みんなありがとう、頑張って〜」
「………うぅ、見てるだけで寒気がする……」
「まぁ……寒いとか風邪とかちょっと説得力ないよね」
なぜなら、ここにいる力自慢の人達みんな上半身タンクトップなんだもん。そして、額にきらりと光る汗。
夏場の工事現場の人達みたいな? 今冬ですよ〜、最近どんどん寒くなって行ってますよ〜。だから、さっきの言葉はまじで全く説得力が無い、エリュの言う通り見てるだけで鳥肌が立つわ。
まぁ、もともと寒さが強い魔物だった人だったりもいるから、本当に大丈夫なんだろう。
そうして、仕事をしてくれてる人達に声をかけつつ進んでいけば、まだ整備されてない所までやってきた。
ここから先は森だから、空を飛んで行くことにする。
「ふぅー……『原初の翼:夜明け』」
「…………ん、いつ見ても綺麗」
「ありがと」
エリュが僕の身体にピトッとくっついてくる。正直被ってる布団が邪魔で飛びにくいけど、一向に離してくれないから仕方ない。
翼を出したりしまったり、結構スムーズにできるようになったけど、まだしっかりと意識してやらないと出せないことがたまにある。
あ、そうそう。翼が生えて空中での移動ができるようになったから、華憐に頼んでキュウを出してもらって、あの日の超次元蹴鞠みたいのをリベンジしたんだけど、あいつにいつも蹴ったりされる分しっかりと顔面シュート決められたりしたから結構満足。
まぁ、それのせいであのキュウリとはさらに険悪な仲になった気がするけど、いいだろう。なんか今更だし、これくらいの距離感な気がする。
そんなこと考えてエリュを抱えて飛んでると、目的地にたどり着いた。
「さてと、こっち方面でいいんだよね?」
「…………ん、多分あってると思う」
エリュのお墨付きも貰ったし、真っ直ぐ飛んできたからあってるか。
僕の前には、巨木我が家の裏の滝の崖ほどじゃないけど、それなりに高い崖の壁の麓にきた。
まぁ、こんな寒い日に外に出て何をするかと言うと、華憐に言われたトンネル掘りだよね。
「…………どうやって掘るの?」
「そうさなー……とりあえず、ぶん殴る?」
「…………レンの腕のオプションで? 崩れるからやめておいた方がいいと思うけど」
うーーん、そっかー。『破砕衝撃波』じゃ、過剰な威力だもんな。
「それじゃあやっぱり、スコップ?」
僕は『宝物庫』からちょっとだけ改造したスコップを取り出す。
すると、まぁ、予想通りなんとやら、エリュがそれを見てちょっと不満そうに頬を膨らました。
「…………弱そう」
「あー、でもスコップで戦わないよ?」
「…………レン、謝る。工事現場の人達はスコップこそが武器」
「ごめんなさい。でも僕は工事現場の人じゃないし、これで戦わないし道具だから使ってもいいよね?」
「…………ん、約束したから。でも、弱そう」
「はぁ……エリュ? いい? スコップとは世界の理を貫く魂なんだよ。だから、決して弱くはない」
「…………なにそれ?」
「えーっと、スコップで無双するラノベの鉱夫が言ってたこと。まぁ、見てて?」
エリュにそう言って、僕はちょっと改造したスコップを構える。
「スコップシークエンス充填!」
すると、スコップの先っちょがバチバチと放電をはじめる。
「出力百二十パーセント! ーーーー掘れっ!」
スコップの取っ手のボタンを押すと、ちゅどんっ!っと、アルカのレールガンに比べたら可愛いくらいのレールガンがスコップから発射された。
おぉ、スコッピングパワーとか充填された感じ全くしないけど、あのラノベと同じようなことはできた!
まぁ、もっと出力上げることも出来たんだけど、あんまり威力高すぎるとエリュに武器認定されちゃうから、あくまで工場のちょっと穴掘るのが楽になるくらいの威力にしたんだよね。
「穴はーーーーまぁ、いい感じに掘れたかな? まぁ、掘るって言うより崩すって感じだけど………って、あれ?」
すると、いつの間にか手元にあったはずの改造スコップが無くなってた。
「…………没収。これは完全に武器と判定した。もうレンは使っちゃだめ」
「いやいや、エリュ! それのどこが武器なのさ! 形も見た目も正真正銘のスコップだよ?」
「…………でも、さっきのレーザービームは人を殺せる。だから、武器。…………いただきます」
そう言ってエリュは改造スコップをガリガリと食べ始めた。
はぁ……まぁ、半ばこうなるような気がしてたからしょうがないか。
「…………モグモグ……ご馳走様。…………早くやろう、エリュはもう寒くて敵わない」
「んー、そうだね。それじゃあさっそく……『陥没』っと」
崖に手を置いて魔法を発動すると、想像した範囲が陥没していって徐々に凹んでいく。こうやってすすんでけばだんだんと穴になっていくはず。
まぁ、要は魔法でのゴリ押しをするつもり。
「…………レン、天井高すぎない?」
「そう? でもほら、天井が高い家にしてよかった〜って言うじゃん」
ちなみに、トンネルの大きさは幅は馬車が三台分くらい、高さは八メートルくらい。
「…………ここ、家じゃない……『硬質化』」
なんだかんだ言ってもちゃんとやってくれるらしい。エリュの役目は、崩れたりしないように固めていくこと。
こうやって役割分担して魔力が切れるまでゆっくりとトンネル工事することにした。
「……………あ、そういえばこれ渡すの忘れてた。………はい、これ被る」
「……………えーと、これは?」
「華憐が、こういうのはやっぱり形から入っていくべきだと思うのって」
「………なるほどー」
まぁ、こんなのを作るのは華憐いないから納得。エリュから受け取ったのはヘルメット。
ただのヘルメットじゃなくて真ん中に『血小板』って、書いてあるけど。
「あのねあのね! ここは今通行止めなの!………どう?」
「…………そんな声どうやってだすの?」
「んーー、声は作れるんだよ。ほら、よく言うじゃん可愛いは作れる! って、だから可愛い声も作れるんだよ」
「…………なるほど」
今度、華憐の前で血小板ちゃんのモノマネでもしてあげてもいいかもしれない。
そんな感じにのんびりとくだらないことを話しながら、初日のトンネル堀は二十メートルくらい進んで魔力切れで引き上げた。
これから、ゆっくりといい感じのトンネルを完成させよう!
まぁ、でも、とりあえず…………寒いから外出たくない。
心の底からの声がエリュにも聞こえたみたいで、隣ではコクコクと頷いた。
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